【第1回】2月16日(月) | マイナビブックス

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犬と私のどうしようもない日々

【第1回】2月16日(月)

2015.06.19 | 栄華

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 古池里子(25)。大阪府在住。職業:メーカー事務職。彼氏:交際歴半年。苦手:運動。動物。無趣味。おしゃれ:やる気の起伏が激しい。

 

 社会人になって何度迎えただろう、この嫌な週明けの出勤前の朝。入社して3年。最初は苦痛で仕方なかった早起き、あまり楽しいと思えない日々の業務、保身が第一で上にはへーこらするくせに部下にはやたら偉そうな上司の機嫌取り。そんな現実のオトナの世界にもようやく自分の中で折り合いがつき始めた3年目。未来に対して夢とか希望とか大層なものを抱いたとしても、この世の中、きっとへし折られるんだろう、だったら最初からそんなものは持ち合わせないほうがいい。私に未来への夢とか希望とかそんな類のものがあるとしたら、それは唯一結婚だ!! 裕太との結婚だ!! 裕太は同じ歳で、真面目で働き者で頭がよくて、いつも私の話を優しく聞いてくれる。将来の話だってしないわけじゃない。デートはいつも週末。ほとんど土曜日。今日は月曜。しかもまだ朝。月曜の半分も終わっていない。あと5日も現実に耐えなきゃいけない。あーーーーー。早く嫁に行って希望に満ちた日々を楽しく過ごしたい。できたら専業主婦で。

 19時。今日も面白くない仕事に精を出し、疲れてまっすぐ帰宅。すると、見た目からして頭の軽そうな大学4年生の弟がリビングにいて、私を見るなり言う。

「やっぱり、犬やったら、ミニチュアダックスが一番かわいいやんな?!」

 ……すっごいどーーでもいい。アンタも4月になって会社に入れば、今の質問がどんだけエネルギーを割く余地のない質問か、身に沁みてわかるわ。てゆーか、何で犬の話やねん。うちの家族は、父はともかく母と私は動物苦手で犬も嫌いなん知ってるやろ。

「そーね」

 適当にかわして自室に行く。気を取り直して裕太にメールしよう。