【第0回】まえがき | マイナビブックス

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漫画原作のゲンバ(上)

【第0回】まえがき

2015.08.03 | 猪原賽 | 横島一

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まえがき

 

 漫画というものは、作家一人によって創作されるものと、原作付きというものがあります。
 漫画家になるには? という問いに答えるものは、新書を始め、ムックなど多くのフォーマットで多くの方が書いてますし、「同人誌」というジャンルがあるためか、多くの方の〝想像のつく〟範囲にあるとも言えます。
 
 ですが、「漫画原作者」になるには?
 というかそもそも、「漫画原作」って何書いてるの?
 そんな謎の職業が「漫画原作者」です。
 実際、「漫画の原作書いてます」と自己紹介すると、原作ってどう書いてるの? と問われることが多いです。
 
 実際、これが漫画原作! という正しい、確実な「ひとつの手法」はありません。
 ネームで渡す人もいれば、シナリオで渡す人も、小説の形で渡す人もいますし、それこそ二、三行のあらすじしか書かない人もいると聞きます。
 
 最近はかつて漫画家として活躍していた方が、原作に転向する例が多いですね。
 そういう方はきちんと「漫画をわかっている」ので、ネームという形で渡しますが、例えば漫画を描いたことのない人が漫画の原作をする場合、実際漫画になった場合のページ数、ボリューム感をわかってない例が多いです。
 映像関係のシナリオライターが〝時間〟を軸に書いたシナリオを、漫画の形に落とし込もうとした時、つまり〝ページ〟を軸にネームを描こうとすると、余裕でページオーバー、あるいはページ足らずになり、漫画家が作画に苦労する例を実際私は見たことがあります。
 
 私はもともとコンビ漫画家でした。プロットを書き、ネームを描き、そして原稿の仕上げを担当していました。
 ですので、原作に転向してから、私はなんとか漫画家さんの苦労の少ないように、話は私に任せていただいて、絵を描くことに専念していただこうと、
 
・シナリオ(ストーリーのみ)
・シナリオ(ページ・コマ配分の目安入り)
・ネーム
 
 という手法を、作画の方のリクエストを聞いてチョイスしています。
 
 電子書籍という形で自費出版が容易になった今、
「漫画原作って何書いてるの?」
 という問いに答えるコンテンツを作れるのでは?
 そう考え、この『漫画原作のゲンバ』というシリーズを用意してみました。
 これを読めば、私「漫画原作ライター・猪原賽」がやっている、その三つの「原作の書き方」のうちの二つがわかるというわけです。
 
 内容は、正直言うとボツ原稿です。
 連載を勝ち取るに至らなかった、未完の第一話の寄せ集めです。
 ボツではありますが、単に「誌面に合わない・求めているものではない」という理由でお蔵入りになってしまった原稿です。
 なぜならここに集められたシナリオは、すべて担当編集者のゴーサインが出て、漫画執筆担当である横島一さんに渡され、すべて彼のネームが存在します。
 
 今回、そのボツ原作五本を上下巻二冊に分け、私のシナリオと、それを元に横島さんが描いたネームも同時に収録することにいたしました。
 私がどんな原作シナリオを書いているかという部分の答えと、それに対してマンガ家がどのようにページを作っているのかを比べる事ができるというわけです。
 ネームはいわばマンガの設計図。未完成の原稿とも言っていいでしょう。そんな状態での掲載のオファーに、快く応じてくださった横島一さんに感謝しつつ、また製作途中のマンガというものがどんなものか、読者の皆さんには興味深く見てもらえると思います。
 
 まずは上巻に二本、そして下巻には三本収録いたします。
 上下巻合わせて、ぜひ御覧ください。
 
※ネームは通常のマンガの電子出版と違い、リフロー形式で掲載いたしますので、閲覧環境によっては多少読みづらい場合があるがあることだけご了承ください。
 

 猪原賽

 



以下作品すべてにおいて
 シナリオ・猪原賽
 ネーム作例・横島一
 
【シナリオフォーマット】
1、「■○、○」の数字はページの目安である。
2、「(一行空き)」で囲まれたパラグラフが1コマの目安である。
3、ト書き冒頭「――」以下は擬音である。
4、「(オフ)」と書かれたセリフは話者がコマ内にいないことを表す。
5、「v」はハートマークの代用である。