まえがき
私は、国語が苦手である。四字熟語なんて、とんでも無い話と学生時代から長年に渡って思い込んでいた。
しかしながら、社会に出てみると会話の中で巧みに四字熟語を使いこなす人をみて、「凄いなぁ…、賢そうだなぁ…」と思いながら、勉強はおろか見る事でさえ避けてきた。
正直言うと、その頃の私は四字熟語を使いこなす人に対する憧れと、それが出来ないコンプレックスの塊だったかもしれない。自分のマイナス部分を補う努力もせず、「どうせ俺なんて大した学校も出てないし、賢い人達とは別世界の人間なんだ」と逃げていたのだと今更ながらそう思う。
果たして私だけが、そうなのか? そんな人は意外と多いのでは?開き直って考えてみると使いこなしている人は、ほんの一部の人だけと気付く。そして、如何にも知ってるかの様な顔をしている。実は、私もその一人。
だけど、子供を持って初めて気付く。子供にとってお父さんは何でも知ってる凄い人。そんな純粋な子供からの目が痛い。そこで、聞かれた事くらいは…と思いながらも、勉強は長続きしない。
私が国語に苦手意識を持ったのは、中学2年生の時だった。国語を担当する教師が大嫌いだったからだ。歳は覚えていないが、定年間近な老婆。何を言ってるのか判らない。判らないから勉強しない。勉強しないから点数が悪い。そんな事を繰り返し、高校受験前の模擬試験での偏差値は、英語72に対して、国語35。一体お前は何人だ!と言いたくなる程の酷い内容。他の科目で頑張ったので、平均偏差値は62と何とか、そこそこの成績ではあったものの、その時の担任が国語が足を引っ張る、もしも希望校に入学出来たとしても、入学してから苦労するとの理由から、希望校から2ランク下げた高校に入学する事になった。高校生活では、国語以外は、問題ないレベルだった為、勉強をせずに毎日遊び呆ける日々。それが仇となり、一応進学校ではあったものの、数少ない大学進学断念組に入り、筆記試験無しの専門学校に入学する事になった。
前置きが長くなったが、上記の様な理由から国語から目を背け、社会に入ってから後悔する事となる。
そんなある時だった。会社を辞め、新しい会社に面接に行った時に面接官から、「あなたの座右の銘は何ですか?」と聞かれ、そんな事、考えて見なかった事に気付いた。家に帰り、自分の座右の銘について、考えてみるものの何にも出てこない。出てくるはずもない。何故なら、座右の銘になる日本語を知らないのだから…。
そこで、本屋に行き一冊の四字熟語の本に目がいき、パラパラと捲ってみた。そこには、これは、日本語? 漢文? 中国語? と言うような文字が並び、目がクラクラするような大嫌いな感じがギッシリと並んでいた。
そんな中、今の自分に当てはまるもの、自分が今まで生きてきた中で目指していたものを四字熟語の意味を辿って探し始めた。結果、「和魂洋才」という言葉を発見出来た。
意味は、和(日本人)の魂で、洋(外国)の才(知識)を身に付けるという事だ。
これは、私が輸入酒業界に身をおきながら、外国人カブレはしない、和の心で洋を受け入れて生活の中で楽しみたいという考えにピッタリと嵌る言葉だった。
この「和魂洋才」という言葉を知った私は、何故か常にこの「和魂洋才」という言葉を自分の近くに置き、見ていたい気分になった。そして、久々に筆をとり、墨で書き始めた。
どうせ飾るならカッコよく書きたいと思い、気持ちを込めて魂心の一枚を描いて額に入れて飾った。そうしたところ、友人から自分にも描いて欲しいとの依頼があり、何人かの友達へ描いてプレゼントした。その際、四字熟語の本やネットから、その友達のイメージや友達が好きな言葉、目指している言葉などをヒヤリングして描いてあげた。
思いのほか評判が良く、それから大切な人や、お客様へ描いてプレゼントする様になった。そんな事が続いたある日、実は、こんな人が多いのでは?という事に気付く。
それと、四字熟語って音楽に似ている事に気付く。一文字一文字では表現出来ない事も四文字揃うと、違う意味や違う色、違う音を出す。そして、互いに奏でるハーモニーによって、意味深いものとする。そんな魅力を発見してしまった。
だけど、どう描いて良いのかも判らない。自分の言葉を見つけるのも大変だ。そんな事を考えていた時に、ふと気付く。四字熟語の本を見た事がある人なら気付くと思うが、漢字が先で意味が後。でも、漢字を知ってる人は、大抵の人は意味も判る。意味が先で、漢字が後なら、自分にあった四字熟語を上手く発見出来る…。私が作りたいのは、四字熟語の辞典ではなく、四字熟語によって楽しむ事。
だけど、自分に当てはまる四字熟語を発見出来ても、普通に並んだ文字を見るだけでは面白くない。そうだ! 四字熟語を一つの画にしよう! 一つ一つの個性を活かし、四文字のハーモニーを作ろう! と思い書きだしたのがこの本です。
私は、この本を作るに当たって、一文字一文字に魂を入れて、何度も見て欲しいという願い、好きになって欲しいという気持ちを入れて描いてます。
ただ単に並んでいる漢字を見て読むだけではなく、4つの違う意味を持つ文字が一つになった時のハーモニーを感じて欲しい、それが見てくれている人に伝われば最高! って思って描いてます。
この本を切っ掛けとして、見てくれた皆さんが自分が元気に、そして楽しくなれる言葉を発見し、もし良かったら自分でも筆をとって描いてみよう!と思って頂けたら、私はこの本を描いた意味があると思っております。
Kou