【第4回】ほおずき幼稚園

2016.09.14　|　

4 ほおずき幼稚園

〈雑司ケ谷ほおずき幼稚園〉は雑司ケ谷霊園の東側にある私立の幼稚園だった。住所でいうと雑司が谷一丁目。三丁目に住む正義にとっては、その場に行ってピンクに塗られた鉄柵を見て、ようやく「ああ、ここか」と思い出すような場所だった。
一ノ瀬恵梨が設定した待ち合わせ時刻は夜八時。彼女の仕事の都合で、一日おいた水曜日の晩になった。
正義がナイロン製のバッグを肩にかけて現地まで歩いていくと、仕事帰りの恵梨がすでに正門の前で待っていた。「未来の実を守る雑司ケ谷ほおずき幼稚園」という看板を背にして立っている。
「不動さーん！」
正義の姿を見つけると、恵梨が携帯電話を持った手をふってきた。白っぽいビジネススーツが街灯に照らされて映えてみえる。

続きをご覧いただくには、会員登録の上、ログインが必要です。
すでにマイナビブックスにて会員登録がお済みの方は下記の「ログイン」ボタンからログインページへお進みください。