【第9回】御会式の夜
2017.01.12 |
9 御会式の夜
霊園の周りにいくつかある花店の一つで、若い男が水道を借りてズボンの泥を落としている。正義は店先のイスで休ませてもらうことにした。
彼は青井錬二(れんじ)という名前だった。正義が東西南北を順に指し示して在学している大学を訊ねると、目白駅の方向を見てうなずいた。
青井は大学生のくせに名刺を持っていた。流星のマークに「児特隊」という文字を組み合わせたロゴが入っている。正義もしわくちゃな名刺を渡したが、青井は疑わしい目つきをしたままだった。
「弁護士さんだったんですか?」
「弁護士じゃねえよ、弁護士事務所の〝調査員〟だよ」
「……はあ」