【第11回】上総湊へ
2017.02.02 |
11 上総湊へ
正義が運転するハマーH1が東京湾アクアラインのトンネルに入ったころ、後部座席の浜崎喜一がうとうとしはじめた。助手席に座っていた恵梨は何度か声をかけて本当に眠っていることを確認すると、ようやくホッとしたように体の力を抜いた。
正義もそれにつられて、息を吐いた。
彼は完全に浜崎のペースに乗せられて、気がついたらこうして房総半島に向かって車を走らせていた。決して雄弁ではない浜崎が電話の向こうで訥々(とつとつ)と「どうしてもマダイを釣ってやりたい」といい出したのが週の初め──しかも、舞衣と霧島の結婚式を週末に控えたタイミングだったのだ。