セロニアス・モンクが
スタインウェイの鍵盤から
拳でたたきだす分散和音が
ぼくらの街のBeatだった
新宿柏木公園で乞食のタケさんと
野良猫のアジが路上の
無限の猿になって
タイプライターの前に座り
〝スターダスト〟をセッションする
ぼくはその歌詞が
コカインの文学だってことも
知らなかった
夜の煙で充満した鉄の弦を
893が〝小鳩〟と呼ぶ国も顔もない
渡りの少女たちが幽霊の指紋で
でたらめに押さえて 死と生の
音階が溶けあうダブに モンクらの
南無阿弥陀仏 銅鑼読経
タワレコもダウンロードもない頃。海外直輸入レコード屋が軒を連ねる一角が新宿や池袋にあった。そこは全国のロック、ジャズ、ファンクetc・キッズの聖地でした。記憶を欠きそこなった路地。高層ビルの谷には、年季の入ったアイマイ宿と日蓮宗寺院。新宿からとり残された、もうひとつの新宿を偲んで。管啓次郎さんに送信。
2014.4.9