はだしの星(石田瑞穂)


 

落ち着かない春の予感のようなものが

地中できらきら光っていて、

足の裏がむずがゆくて仕方ない。

少年たちはスケボーのローラー音を飛び散らせて、

二月のコンクリートの護岸に

ドリップ・ペインティングする。

ぼくの股間で鯉が跳ねまわる。

たぶん海を想ってのことだろう。

鴨川か希連川の女神が彼女自身のインクで描いた

空に、世界は広大な からっぽの鏡だって記してある。

それから、あたたかい酒をもとめてさまよい

河原町の権太呂でけつね饂飩を食べ、

中世ヨーロッパの石造りの家風

フランソワ珈琲店に入ったけれど、コクトー

直筆の手紙はもう壁に飾ってなくて

あら、どうしましょう。無名の

四季を織るように、ぼくは生きたい。

金星形の涙が雪のうえに積もって

青白く漂いだす、はだしの感傷の指先で、

 

 

2014年2月21日。雪の京都を思い出しつつ、管啓次郎さんへ送信。

 

2012.2.26

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリ: シーズン1, 遠いアトラス/石田瑞穂+管啓次郎+暁方ミセイ
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