夕刻のチャイムが
三十分遅くなり
はるはいつでもかゆさをともなう
弟はいまだ不在で
地中ふかくあたたまって
父と母、姉たちが
スーツケースに遺伝子つめこむ
明日、発つ。
呼気吸気あわせる日々の部屋じゅうにひびきわたるよ黒いオーボエ
細胞がいつでもかゆい朝焼けのあなたがいれば家はいらない
地図に散る、
あらゆる迷子、
舞い上がれ、
音の鳴るほう 指でたどり
あたたかく知らせてくれる
感覚、現在地から目的地まで
探しにゆくから、あなた
そこで待ってて
イヤフォンで死んだ音楽家の声を聞いてGPSがひかるよ
探されて逃げたいきみの爪ありて爪切りのなかから舞い上がる
皮膚感覚、
現在地から目的地、
(どうしても行くって)
やるじゃあないか
2014.4.3