木曜日に鳴らした、4


 

砂糖より あまく

海水より にがく

おもいでより

なつかしいもの。

それらを求めつづけている誰か

 

その誰かが言った――

「ここではないしあわせの国」

弟が安息日と手帳にしるす

 

 

手帳にはさくりと星のしるしあり安息日あおい珈琲を飲む

マリヤの抱く砂糖きびのごとくぬくとくて桔梗平に風は吹きたり

 

 

愛宕町、

川べりにて風を拝受しました。

身投げする寸前に。

 

島にかえりたいの。

まっさおな皮膚が透明に

なるまで さらして

ならなくては ならなくて

聖母の文字が宙に舞い

 

 

髪絡めとられてここに生き延びる賜り物のこころはかるい

なつかしいあなたへ渡る橋ありて夢のまぎわに浮かびておりぬ

 

 

ふたたび結う

凛とする手つきが滑らか肢体ゆきわたり

ふみだす足――

はだしのまま傷えがく

わたしという名の残照

 

かなでだす旅の鳥

ふりむいてはならない

その声に呼ばれて、月日

 

 

ふきのとううすきみどりを揚げておりさいげつさいげつ口あけて食う

昔のなまえでたまに呼ばれて井戸の底のぞきこんでもまっくらなまま

 

 

2014.3.27

カテゴリ: シーズン1, 気管支たち/野口あや子+三角みづ紀
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