素肌に風が、ぞわっとぶつかって、
それを春だなあと思うのです
虫の不安がのりうつって、花の夥しい幽霊を吸い込んで、
怒りでめちゃくちゃになった景色のなかをしずかな牛がいる
おおきな白いすあし、ここへもやってきて、
みんな踏み潰されているよ
地に均されよ、水に溶けよと
そそのかされているよ
藁だけで虹鱒を釣ってください
必ず釣り上げると約束して、
薊で編んだ盃をください
そうしたら彼はわたしの本当の恋人
紫の花、青の花、群れて泡のように吹き出し
筋肉はないので純粋な感情を放出する
千人のご先祖様、川を流れて恋の歌を口ずさむ
水になっても見つけられたら、彼はわたしの本当の恋人
4月2日、一週間前に訪ねた兵庫の氷上郡青垣町佐治を思い起こして、春の日、石田瑞穂さんへ送信。
2014.4.2