ひとつ確かなのは、ヒトがいたことだ、早春の
薮には見えないものがいっぱい
右から左へ走っては、どうっと鳴らす
ほらほら、主語せよ、木の芽吹く花鬼宿る
蕾の割れた梅の林から、糸のように漂いやってくる、
五百年前の我が兄子、千年前の我が妹子、
影絵のように映し出されて薄青色のお天気の下、
杭や小川や台車や納屋は、ますます黄色く、野暮たくぬくめ
死んだからといって、レコーディングされるのだ
取り消せない時間と出来事の、苛烈と絶対
新しく生まれる者をかなしむことはないよ
何千年も先まで連なるものを、いつかはみんな、わたしと呼ぶだろう
ひとつ確かなのは、ヒトがいたことだ、早春の
海にもおかにも、ここからずっと遠くまで、きらめくもの
形成し続けるもの
ほらほら、主語せよ、木の芽吹く花鬼宿る
3月11日、生まれ育った町の丘、稲荷前古墳群より、石田瑞穂さんへ。
2014.3.12