【新刊】『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング~ドキュメントコミュニケーションの教科書~』(3)監訳者あとがき

5月末刊行の『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング~ドキュメントコミュニケーションの教科書~』

今回は監訳者である佐藤伸哉氏のあとがきを掲載します。

—————————————-

ペルソナ、コンセプトモデル、サイトマップ、フローチャート、ワイヤーフレーム……呼び名は様々だと思いますが、本書で解説されているダイアグラムはどれも制作現場ではお馴染みのドキュメントだと思います。
本書では「deliverables」を「成果物」と訳しています。コンサルティング業界では一般的に使われているデリバラブルズ(作業に対する対価を請求するための検収物)はWeb 業界ではまだまだ一般的ではありません。これは一過性のキャンペーンサイトなどを代理店から丸投げされる状態でクリエイター肌のWeb デザイナーが全ての作業をほぼ一括で引き受けてしまう悪しき習慣かもしれません(20 ページ程度と聞いて作業を始めたら100 ページ……覚えありませんか?)。一度でも組織事情をはらんだ複雑な企業サイトのリニューアル案件などに携わった事があれば、本書で解説しているダイアグラムを通してクライアントと共有される情報の1 つひとつの確認行為がいかに重要かを痛感していると思います。本書でも説明されますが、重要なのは納品物としてのダイアグラムそのものではなく、そこから共有される「成果」なのです。
本書では各ダイアグラムの目的や構成内容、作り方からミーティングの設定方法、成果物の披露の仕方など、事細かに解説しています。気になった箇所に目を通して、日々のデザイン作業のクオリティをアップしていただければと思います。
日本語版を出版するにあたり、原書と同じく軽快で素敵な日本訳にしてくださった奥泉直子さん、そして本書の企画から足掛け7年! 辛抱強くお付き合い頂いた編集担当の角竹輝紀さんに心から感謝致します。特に奥泉さんには座礁してしまった初版の翻訳業務を途中から快く引き受けてくださっただけでなく、翻訳が終わりかけた直後にまさかの第2版出版(大幅に内容がアップ!)。結果的に2冊分の翻訳作業を地道に続けて下さり頭が上がりません、ありがとうございます。また市村佐登美さん、高橋信夫さん、元同僚であり良きIA 仲間でもあるLiz Danzio、いつも元気よく笑顔で周囲を和ませてくれるコモリゾーと、残念ながら本書を手にすることが出来なかった亡き妻の佐藤惠美、そして#prayforsato フォロアーの皆さんにもこの場を借りて心から感謝します。
皆さんのお陰で日本のWebデザイナーの日常生活が改善されると信じます。

カテゴリ: 新刊案内
タグ: ,

【新刊】『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング~ドキュメントコミュニケーションの教科書~』(2)著者まえがき

5月末刊行の『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング~ドキュメントコミュニケーションの教科書~』

今回は著者であるDan M. Brown氏のまえがきを掲載します。

——————————————————————–

本書は一言で言うと、ドキュメント作成についての本です。面白くなさそう……ですよね?
プロジェクトを遂行する中で作られるドキュメントの類は、いろいろな形でWeb デザインの弱点となります。紙に印刷されたドキュメントはたいてい、誰にも読んでもらえないまま棚の上かどこかに放置されるのが関の山。なんと素敵なことでしょう!
しかし、Web サイトのデザインに関わったことのある人なら、ドキュメントがプロジェクトの成否を分けることを、そしてコンセプトをまとめてプロセスを前へ進め、チームメンバー同士のコミュニケーションを支えるものであることを誰もが知っているはずです。Web デザインの過程で作られるドキュメント、別名“ 成果物” は、先の見えないプロセスが確実に前進していることを示すマイルストーンの役割も果たします。ドキュメントがあれば経緯も見えるようになりますから、プロジェクトの前半に下された決断を、途中からプロジェクトに参加することになったメンバーへ伝える役割も担ってくれます。
ドキュメントは、簡単に言うならアイデアを“ 見える化” したものです。Web デザイン業界にとってこれは少し実存主義が過ぎるかもしれませんが、アイデアを効率よく共有する方法がなければ、Web サイトを作るなんてことはそもそも不可能ではありませんか?
本書は、ドキュメント作成の改善にきっと役立ちます。
ドキュメント作りの計画の仕方、完成したドキュメントの効果的な活用方法などをお教えしましょう。そして同時に、どうすれば質の高いドキュメントを作れるのかを紐解き、悪しきドキュメントと悪しきアイデアの違いを見分ける術を伝授したいと考えています。

 

本書はあなたのお役に立つでしょうか?

Web デザインの過程でドキュメントを作る立場の人、それを使う立場の人、あるいはそれを承認する立場の人などを読者として想定しています。

ドキュメントを作る人:新たにWeb デザインの世界へ足を踏み入れた人も、長年これを仕事にしてきたという人も、成果物を作る立場にいる人が本書を活用すれば、自らの努力が間違いのないものであることを確認できるようになります。成果物作りを計画したり、出来あがったものを披露したりするときのテクニックの数々をご紹介します。ワイヤーフレーム作りから少し離れていたという人は、コツを思い出すのに使ってください。

ドキュメントを使う人:サイトマップを作るのはあなたの仕事ではないかもしれませんが、今後の数日、あるいは数週間、はたまた数ヶ月をかけて、現行サイトから新しい構造へのコンテンツの引越を成し遂げるべくサイトマップと睨めっこをする立場にあるかもしれません。あるいは、ワイヤーフレームどおりにWeb サイトが動くようコードを書かなければならないデベロッパーかもしれません。サイトの再構築を社内で売り込むのがあなたの担当なら、ペルソナを活用するにあたり、それが非の打ち所のない完璧な仕上がりになっていることを確かめておきたいと思うことでしょう。本書を読めば、あなたがどんな成果物を受け取ることになるのかが見えてきます。ユーザーエクスペリエンスデザイナーと話をするための心構えにも役立つでしょう。
ドキュメントを承認する人:予算を考える立場にいるとしたら、抜かりなくプロジェクトが進んでいることを確認したいはずです。お金を握っているクライアントや主要なステークホルダーは、ドキュメントの出来がとても気になります。プロジェクトを先へ進めるために、金額に見合う成果があがっているかどうかを判断するために、デザインチームの面々に正直でい続けてもらうために、ドキュメントは必要不可欠なものです。本書があれば、チームから上がってくる成果物に何を期待すべきなのかが分かるようになるでしょう。

 

「でも、成果物は使わないなぁ……」

本当ですか? メールを書くこともなければ、ホワイトボードにちょっとスケッチをすることもない? スケッチを誰かに見てもらってフィードバックをもらうことは? 想定されるすべてのステップを完璧に網羅できているかどうかを確かめるために、描画アプリを使ってフローチャートを描いてみたことが一度もないですか?
最終製品に直結しないものを作ることを敢えて避ける手法というのが存在するのは確かです。その手法を好んで使う人たちは、少なくともそうすべきだと考えています。
しかしどんなデザイン手法も、線を引いたり、絵を描いたり、説明をしたり、モデル化たりといった作業を伴います。どんなデザインプロセスも、解決すべき課題に取り組むための手段として、最終製品がどんなものになるかを絵や図を駆使して表現することの価値を認識しています。良きデザイナーなら誰しも、課題を心に描き、どんな要件や制約のもとで、どこまでやれそうかを把握するための時間をとるはずです。
かしこまった、数ページにもおよぶ成果物を作ることはないとしても、込み入ったアイデアを図示し、取り組むべき課題を明確にし、それにどのようなアプローチで取りかかろうとしているのかを語る必要はあるはずです。本書で紹介するダイアグラムや成果物は、まさにそれを助けてくれるものです。ほんの15分、ホワイトボードの前に立って済ませることも、もっと時間をかけてじっくり取り組むことも可能です。本書では、どんなときに、どのくらいの時間と労力を割くべきについても検討していこうと思います。

 

本書の中身

すべての成果物を網羅するわけではありません。本書では、Web デザインの過程でよく作られるダイアグラム5個と、この業界で仕事をする以上、多少なりとも時間を費やして作らざるを得ない成果物をいくつか取り上げます。すべてユーザーエクスペリエンスに関係する成果物です。UML などについてのアドバイスをご希望の方は、別の書籍をお求めください。ユーザーエクスペリエンスに関係するドキュメントは他にもたくさんありますが、あまり使われていなかったり、商標登録されていたり、他で十二分に語られたりしているものは省きました。どの手法を使うかには関係しません。新しい手法が現れては消えていきますが、ドキュメントは比較的一貫性を保っています。どんな手法でWeb デザインをする場合にも参考になる内容を目指しました。ただし、ドキュメントを作るタイミングやドキュメント相互の関係をまったく考えずにドキュメントを作ることは難しいため、手法についてはいくつかの前提を想定しています。その前提をもとに本書を構成していきますが、別の手法をとるからといって本書の内容が使い物にならないというようなことはありません。
ハウツー本ではありますが、ソフトウェアの本ではありません。本書を読めば、質の高い成果物を作れるようになります。クライアントやチームメンバーに成果物を披露するときのコツもお伝えします。成果物を作ったり、共有したりするときに注意すべき点にも言及します。しかし、成果物の作成に使うアプリケーションの使い方には触れません。どのツールを使うかは好みの分かれるところですが、どのツールを選んでも、ドキュメントに盛り込むメッセージやドキュメントの目的は変わらないはずです。
これは料理本です。ドキュメントという名のお料理のレシピをご案内します。どうすればそのお料理が美味しくなって、何がそれを不味くするのかを確認してください。余白にはどうぞ自由にメモを取ってください。こちらのドキュメントで紹介されたテクニックが、あちらのドキュメントにも使えそうだと思われることもあるでしょう。各章が自己完結するようにしてありますが、関連づけられそうなところは是非、関連づけて参考にしてください。

 

絵と文字、文字と絵
ドキュメントコミュニケーションは、文字と絵を駆使して会話を作り上げていくことに他なりません。そうして、ビジョンを練り、ユーザーエクスペリエンスを伝え、プロジェクトという文脈の中での意義を維持していきます。Webデザイナーは、日々新たな課題に直面しています(あるいは、驚くくらいに違う文脈で似たような課題に取り組むこともあります)。そして、文字と絵を駆使して課題と対峙し、捻り出した解決策を伝えます。新たなインタラクションスタイルを描写したり、ホームページに配置されるコンテンツの種類を説明したり、ユーザー調査の結果を要約して伝えたり、込み入ったナビゲーション構造を吟味したり、為すべきことは様々ですが、いずれにしてもペンを取り、絵を描き、文字を書くしかありません。本書を読めば、どうやってそれを為すべきかが必ずや見えてくることでしょう。

カテゴリ: 新刊案内
タグ: ,

【新刊】『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング~ドキュメントコミュニケーションの教科書~』(1)5月末発売!

コンピュータ書籍編集部では5月末に『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング ~ドキュメントコミュニケーションの教科書~』を刊行します。

 

「Webサイト設計のためのデザイン&プランニング」書影
『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング~ドキュメントコミュニケーションの教科書~』

  • 著者:Dan M. Brown
  • 翻訳:奥泉直子
  • 監訳:佐藤伸哉
  • 価格:3,129円(税込)
  • B5変型判 328ページ

 

刊行まで、著者まえがきなどを順次事前情報としてこのブログで公開していきますので、ご期待ください。

カテゴリ: 新刊案内
タグ: ,

【セミナー】5月23日、「WordPressはここから始める、 はじめの一歩を助けるスタートアップガイダンス」開催!

3月に刊行したWordPressの入門書、『WordPress 3.x スタートアップガイド』。

本書の関連イベントが、5月23日、19時からアップルストア銀座で開催されます!

 

「WordPress 3.x スタートアップガイド」書影

 

本書の著者である株式会社ロクナナの一戸健宏氏が登壇し、CMSを利用したことが無い方、他のCMSを利用したことはあるけど、WordPressはまだ利用したこと が無い方の中で、Webディレクター/Webデザイナー/ブロガーな方々に特にオススメする、WordPressの全体像をざっくり知ることができるガイダンスになっています。

WordPressをとりあえず触ってみるところから、スマートフォン対応、ソーシャルメディアとの関連付け、実際の運用に至るイメージまで、仕事で携わる方でも聞いて損の無い内容になっておりますので、ぜひご参加ください。

 

【セミナー概要】

「WordPressはここから始める、 はじめの一歩を助けるスタートアップガイダンス」

  • 日時:2012年5月23日(水) 19:00~20:00
  • 会場:アップルストア銀座 3Fシアター
  • 出演者:一戸健宏
  • 定員:180名(椅子席 84席)
  • 料金:無料(事前登録無しでご参加いただけます)
  • 主催・運営:株式会社ロクナナ ロクナナワークショップ

 

詳細は株式会社ロクナナの告知ページをご覧ください。

カテゴリ: セミナー/イベント
タグ: , ,

クリエイティブ体験が出来るカフェ「FabCafe」をものづくり系女子「CAD48」が紹介

クリエイティブに関連した情報を掲載した無料電子雑誌「Creative Now」の最新号となる「Vol.05」(創刊準備号)の配信が開始されています。

 

Creative Nowは、『クリエイティブの今』をキーワードに、クリエイティブに関わる様々な事柄を紹介しています。最新号となるVol.05では、ものづくり系女子集団「CAD48」のリーダーとして活動する神田沙織さんが、渋谷に今春オープンしたカフェ「FabCafe」を紹介しています。

 

渋谷にオープンした「FabCafe」。

 

「FabCafe」の外観は、おしゃれな普通のカフェといった感じですが、その店内はとてもユニークです。このカフェでは、お茶や食事を楽しみながら、誰でも手軽にクリエイティブ体験ができるというのです。

 

「FabCafe」で出されているオリジナルドリンク。

 

このカフェの店内には、なんとレーザーカッターが常設されていて、お客さんが自分で書いたイラストやデザインした文字などを、様々な素材にレーザー加工することができるのです。また、カフェの店内では、大型モニターや肉眼で、そのレーザー加工の様子を、リアルタイムで見ることまでできます。

 

「FabCafe」の店内のオブジェ。なんとこれも、「FabCafe」のレーザーカッターで制作されています。

 

「FabCafe」がどのような場所なのか、さらに詳しく知りたいという方は、無料電子雑誌「Creative Now」を読んでみてください。

 

無料電子雑誌「Creative Now」では、このレポートのほかに、「Adobe Creative Suite 6」や、新たにスタートするアドビのクラウドサービス「Adobe Creative Cloud」を解説しています。ワコムのペンタブレット「Intuos」シリーズ開発秘話や、クリエイターのためのプリンタコラムなど、様々なオリジナル記事も楽しめます。

 

無料電子雑誌「Creative Now Vol.05」(創刊準備号)はこちらで入手可能です。

カテゴリ: 編集部から
タグ: , , , , ,