京都の闇社会に生きる人々を描いた映画『木屋町DARUMA』が2015年10月3日より劇場公開される。Creative Nowでは、この作品の監督 榊英雄氏と、主要キャストのひとりとして出演し、キャスティングプロデューサーも担当した木下ほうか氏のお二方に、お話を伺いました。
──このような過激なテーマの作品が劇場公開されるということに驚きました。
榊英雄監督(以下、榊)「過激な題材だったので、劇場公開がなかなか決まりませんでした。そこで劇場が決まっていない段階で予告編をYoutube上で公開したんです。それを観て手を挙げてくれた劇場があり、続々と上映館が決まったんです」
──榊監督はこの作品のどのような部分に惹かれて監督しようとしたのでしょうか。
榊「まずは原作のヤクザ社会を描きながら、障がい者のお話になっているという構造に興味を持ちました。それ以上に、ヤクザがどうとかは関係なく、哀しき男たちの話という部分に惹かれ映画化したいと思いました。勝浦の誰も恨まず、文句も言わず、淡々と生きているという生き様も魅力的でしたね」
──木下さんはいかがですか。
木下ほうか(以下、木下)「こういったタブーのような物語や役は自分で作らない限り存在しないので、どのような役であろうがこの企画には参加したいと思いました。テレビドラマなどで演じる役は正直、自分のイメージ通りというか無難な役が多いですからね」
──木下さんは出演だけでなく、キャスティングプロデューサーとして参加されていますね。
木下「僕は関西出身で、本作に関しては関西の出身者で京都のリアルな話をやりたいという希望がありました。そこでキャスティングプロデューサーも担当することになったんです。この映画に関しては大人の事情を配慮したような不自然なキャスティングを避けたかったんです」
──確かに本作にはリアルな関西弁を話す役者さんが多数出演されています。ほかにはキャスティングのどのような部分に配慮されたのでしょうか。
木下「適役という意味で、意外性も配慮しました。遠藤憲一さんや寺島進さんの普段とは違う非常に弱い姿や、格闘アクションをしない武田梨奈さんなど、皆さんのイメージと違う姿も見せられたと思います。私にしても当初は違う役でオファーが来ていたのですが、経済ヤクザの金内役を演じることになりました」
──木下さんは暴走族総長と桓武天皇を同じ年に演じるなど、ご自身も非常に幅広い役者さんです。
木下「めったにやれない役をやりたがるのが役者ですから(笑)」
榊「僕から見た木下さんは色々な役をやりたいというタイプの役者さんだと思います。主役などで同じような役柄を演じる方もいますが、僕自身は振り幅がないと役者じゃないという気持ちが強いんです。監督としては、木下さんは個性的な役が多いので、市井の人というか普通のおっさん役をいつか演じさせたいという気持ちがあります」
──木下さんは最近はバラエティ番組でもブレイクされています。
木下「バラエティで注目され仕事が増えるのと映画に関わるのはまったく別物です。人気が出たといっても自分はいたって冷静ですし、今だけのブームというのもわかっています。バラエティで忙しいと身体もしんどいですし(笑)、理想を言えばもう少しじっくりと1本の作品に取り組みたいという気持ちもあります」
──今後も、役者以外にプロデューサーなどの活動を続けていくのでしょうか。
木下「よほど興味ある題材で、それなりの権限が認められないとやらないと思います。2000年に初めてプロデュースをしましたが、まだ3作だけですし、今回のキャスティングプロデューサーも仕事とは捉えていません」
──木下さんは榊監督の作品への出演は本作で3作目です。榊監督はどのような監督でしょうか。
木下「俳優の心情を分かってくれる監督ですね。演じていて自由度も高いですし、こちらが丁度良いテンションのときに本番を撮ってくれるので、演じていて非常に心地良いです。俳優でもあるので、そういった見極めが的確なのだと思います。あまり会話しなくても通じ合える監督ですね」
──榊監督の今後の抱負を聞かせてください。
榊「前作の『捨てがたき人々』で自分が映画監督と名乗って良いという自信が持てたんです。『捨てがたき人々』と『木屋町DARUMA』で、人の生き様と、どうやって死のうかという終わり方を描けたと思っています。前作以降、初めてピンク映画を撮ったり、Vシネマに挑戦したのですが、これらは職業監督として自分をどう広げていくのかの挑戦だと思っています。木下さんと進めている新たな企画もあるので、まだまだ挑戦していきたいですね」
映画『木屋町DATRUMA』は2015年10月3日より全国劇場公開です。