クリエイターインタビュー 大森研一 (映画監督)


ポプラ荘という集合住宅を舞台に、ひとりの少女とそこに暮らす人々の交流を描いた映画『ポプラの秋』が2015年9月19日より公開されます。Creative Nowでは、この作品を監督した大森研一氏にお話を伺いました。

 

大森研一 (映画監督)
1975年 愛媛県生まれ。大阪芸術大学卒。大学卒業後、自主映画制作を開始し、様々な国内の映画祭に入賞する。監督・脚本を担当した『ライトノベルの楽しい書き方』(2010年)で長編デビュー。他の作品に『恐怖新聞』(2011年)、テレビドラマ『水木しげるのゲゲゲの怪談』(2013年)、エンジェルロード脚本賞にてグランプリを受賞して制作された『瀬戸内海賊物語』(2014年)などがある。最新作『ポプラの秋』が2015年9月19日より公開。次回作は武田梨奈主演の『海すずめ』(2016年公開予定)。

 

──本作は湯本香樹実さんの同名原作の映画化です。どのような経緯で監督されることになったのでしょうか。

 

「実は17年前、発売当時に原作を読んでいたのです。個人的に好きな作品で、自分でいつか監督したいと思っていた題材でしたので、今回たまたま監督の依頼が来て非常に驚きました」

 

──原作のどのような魅力を映画にしたいと考えたのでしょうか。

 

「物語の舞台となるポプラ荘は、特異な空間というか非常に不思議な場所です。誰もが田舎を思い出すようなノスタルジックな場所ですし、一生の財産となるような人と空間がいる場所です。この雰囲気を映像で描きたいという気持ちがありました」

 

映画『ポプラの秋』
大好きだった父を亡くした8歳の千秋(本田望結)は生きる気力を失った母親(大塚寧々)と共にポプラ荘というアパートに引っ越してきた。「亡くなった人に手紙を届けることができる」というポプラ荘の大家さん(中村玉緒)と親しくなった千秋は、父親に向け手紙を書くのだった。
(C)2015『ポプラの秋』製作委員会

──本作は子供が主人公ですが、身近な人の死がテーマとなっている非常にシビアな作品です。

 

「子供の頃ってわからないことが多いですよね。起きていることは大ごとでも、よくわからないがゆえに過ごせる。子供時代を振り返ると『あの時期は少しおかしかった』みたいな時期も、よくわからなかったからこそなんとか過ごせたということってあると思います。そういった部分を、大きな波を作らず淡々と描きたいという意図はありました」

 

──主演の本田望結さんは子役ですが、セリフでなく表情で不安や心の闇を表現していました。

 

「脚本を書く上で、心情や状況を台詞で説明するのは本当に楽なんですよ。ですから、いかに画だけでそれを見せるかというのが僕の中では大切なことになっています。主演の本田さんはしっかりした役者さんで、悲しい瞳の演技が非常に上手なので、その部分をしっかり打ち合わせて演技指導しました。子供として、脚本の行間などわかりにくい部分もあったはずなのですが、勘がとてつもなく良い役者さんなので大丈夫でしたね」

 

──主演の本田さんだけでなく、『瀬戸内海賊物語』にも出演された中村玉緒さんや内藤剛志さんを筆頭に、本作には非常に豪華なキャストが集っています。

 

「原作と脚本をみなさん気に入ってくださって撮影に入れたので、非常にスムーズに進みましたし、好きな作品を一丸で作っているという実感もありました」

 

──本作は現実のシビアな部分や人の死をしっかりと子供に見せつつ、それでいてファンタジーを感じさせる作品でもあります。大森監督は以前「ジュブナイル映画が好き」と発言されていましたが、ファンタジーをどのように定義されていますか。

 

「ファンタジーって、ただ単に絵空事を描くのではなくて、『そういうことが本当にあればいいな』って思えることだと思うんです。前作の『瀬戸内海賊物語』もそうですが、その部分は意識して映画を撮っています」

 

──これから大森監督はどのような作品を作っていきたいのでしょうか。

 

「また冒険映画を撮りたいですし、ネタとして世に出ていない歴史上の事件を題材にしたエンターテイメント映画も撮りたいです。次回作は、瀬戸内海を舞台にした青春映画です」

 

映画『ポプラの秋』は2015年9月19日より全国ロードショーです。

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