先手は飛車をさばきつつ銀を取り、後手は桂を取って手番を握った。先に攻めている後手が有望そうな局面だが、歩切れなので攻め方が難しいのも事実。阿部健五段は「後手持ち」と話しつつも、「後手も攻めが細いので」と不安要素を挙げる。鈴木女流二段はどのように手をつなげていくのだろうか。実戦は▲4五同銀△4六桂▲6二飛成(下図)と進んだ。
金取りなので反射的に△3三金寄と受けてしまいそうだが、阿部健五段はすぐに「手抜かれるのではないか」と声を上げた。「▲3二竜と金を取った局面で穴熊に詰めろがかかるかどうか。多分うまくはかからないと思うんですよ。なので△3八桂成▲同金△4六銀▲3二竜△4七銀成▲同金△4六金と一直線に進めると......」。これは先に先手玉に詰めろがかかる流れだ。穴熊の遠さがいかに恐ろしいかよくわかる。さらに後手は一直線に攻めるのではなく、途中で△4二金打とし竜を捕獲する選択もある。手抜いての強攻も十分有力なようだ。
(モニタを見る阿部健五段)
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後手が△4七銀打(図)と食いついた局面。穴熊が気分よく攻めているようだが、中継室では背筋がぞっとする話が出た。
「▲4一金と打つと?」
ぽとんと置かれただけのようだが、恐ろしい狙いを秘めている。それが▲4七金△同銀成に▲2二竜! 銀が入れば竜切りからの即詰みがあるのだ。では、後手がこれを受ける手段を考えてみよう。持ち駒がないので竜の利きは止まらない。△1四歩と脱出口を開いても、角がじゃまで逃げ道がない。△8一竜と引く手はある(▲4七金に△4一竜の意図だ)が、「▲5三桂とつないでおけば現状維持できます」と阿部健五段。つまり受けが難しいのでは、というのが結論だ。
実戦、甲斐女流四段は▲2九金打の受けを選択。先手はチャンスを逃してしまったのだろうか?
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