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第9期マイナビ女子オープン挑戦者インタビュー 室谷由紀女流二段「夢の舞台へ」

2016.04.08

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本記事は、将棋世界5月号に掲載された室谷由紀女流二段のインタビュー記事に、内容を追加し再構成したものです。是非ご覧ください。
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 3月2日、第9期マイナビ女子オープンの挑戦者決定戦が行われ、室谷由紀女流二段が西山朋佳奨励会三段を破り、初のタイトル挑戦を決めた。
 2009年に女流3級でデビューし、7年がたった。2014年には、武者修業のため東京への移籍を決断。思うように勝てない時期も経験しながら、ようやく大舞台への切符を掴んだ室谷に話を聞いた。
―― マイナビ女子オープン五番勝負挑戦おめでとうございます。
室谷 ありがとうございます。
―― 決定戦から1週間たちましたが、いまのお気持ちをお願いします。
室谷 終わってすぐは全然実感が湧かなかったのですが、いままで以上に注目していただいていたのか、多くの方に頑張ってね、と声を掛けていただいて、挑戦者になったんだなと思いました。
―― ご家族からの言葉というのはありましたか?
室谷 両親にはいつも対局後にメールしているのですが、挑決のときもいつもと変わらず「お疲れさま、おめでとう」という感じでした。ただ今回は珍しく、姉からも「おめでとう」って連絡が来たんですよ。うれしかったです。
 トーナメントを振り返る

―― 今期のトーナメントを振り返っていただけますか。
室谷 今期は、清水さん(市代女流六段)との準決勝以外は予選も含めて全局、相振り飛車だったんです。
―― 相振り飛車はやはり得意ですか?
室谷 関西にいたときは対戦相手に振り飛車党が多く、相振り飛車ばかりだったこともあり、自分の中ではけっこう好きなほうですね。
―― 1回戦は飯野愛女流1級、2回戦は中村真梨花女流三段でした。
室谷 飯野さんとは普段から仲がいいので多少やりづらさはありましたが、盤の前に座ればそれは関係ないので、対局に集中しました。中村さんには研究会でお世話になっていて、お互い手の内を知っている間柄です。この将棋は悪手らしい悪手もなく、うまく指せたと思います。1回戦の飯野さんとの将棋のほうが、自分の中の悪い部分が出てしまった気がしました。
―― 準決勝は難敵の清水戦でした。
室谷 それまでの対戦成績があまりよくなくて、苦手意識も若干ありましたが、意外と吹っ切れて指すことができました。いままでは、これに勝ったら次は誰、とトーナメントの先の対戦相手を気にすることもあったのですが、最近は上を見ないようにして、目の前の一局のことを考えるようにして戦っていたので、それがよかったのかもしれません。
―― この将棋は自戦記を執筆していただきました。書いてみていかがでしたか?
室谷 私、文章を書くのが本当に苦手で……(笑)。思っていることを文章ではなかなか伝えられないのですが、頑張って書きました。
―― 清水女流六段に快勝し、挑戦者決定戦に進みました。相手の西山朋佳奨励会三段とは同郷で昔から仲がいいそうですが、対局が決まってどんな気持ちでしたか。
室谷 これまでなかなか当たる機会がなかったので、西山さんと指すのはすごく楽しみでした。周りも注目してくれて、ありがたかったです。これは何としてもいい将棋にして盛り上げなきゃ、という思いでした。
―― 西山さんが奨励会三段ということは多少意識しましたか?
室谷 あまり考えなかったですね。私は心が弱いので(笑)、考えるとよくないと思って。相手の肩書きは考えず、一局の将棋として最善を指すしかないと思っていました。でも、冷静に考えるととんでもなくすごい相手ですよね。後輩ですが、ストイックで本当に尊敬しています。
―― 将棋は室谷さんが先手となり、両対局者の戦前の予想通り、相三間飛車になりました。どのあたりで指しやすさを感じましたか?
室谷 ▲2三角(図)と打ったところではよくできそうかなと感じましたが、具体的にどうすればいいかは難しいと思っていました。その後お互い飛車角を交換し合った段階では、駒の損得がなく先手玉が堅い状態だったので、冷静に見れば自分のほうが指しやすいかなと。ただ、大体いつもそういうところからガタガタッと崩れていくので、これぐらいでいい勝負、まだ大変だと言い聞かせて、自分がいいとは思わないようにしていました。
―― そんな中、西山さんはさすがの勝負術を見せ、手順を尽くし、簡単には勝たせてくれませんでした。指していてどんな心境でしたか。
室谷 でも、ああいうふうになるだろうとは思っていました。本当は読みきりたかったのですが、時間もないうえに、ふと見ると自分の玉がすごい危ないことに気がついて。いつもなら絶対攻め急いでしまうところですが、終盤は妙に冷静だったんですよ。自分でも驚きました。ただ、当初は優勢になったらていねいに相手の攻めを切らして勝とうと思っていたのですが、でもやっぱり攻めなきゃ勝てないのかなあという気持ちも若干出てきて、ちょっとちぐはぐでしたね。方針を一貫すればよかったとあとから思いました。
―― 投了の瞬間のお気持ちは?
室谷 まだ指されると思っていたので、窓の外を見ながらずっと考えていたんですよ。そしたら急に「負けました」と言われて。びっくりしました(笑)。
―― これで初のタイトル戦、五番勝負進出を決めました。相手の加藤桃子女王の将棋の印象は?
室谷 最近は対局の可能性があったので控えていたのですが、加藤さんとは以前からVS(練習対局)をお願いして教えていただいているんです。すごく勉強熱心で、こちらが申し訳なくなるくらい序盤が詳しいし、中盤は手厚く、終盤は切れ味が鋭い。西山さん同様、加藤さんも年下ですけど尊敬しています。
―― そんな超のつく強敵と、盤を挟むことになるわけですが。
室谷 どうしましょう(笑)。「加藤の手厚い指し回しに対し、室谷がどうやって軽く捌くか」というのが周囲の予想になるでしょうか(笑)。まだ時間があるので、これから対策なども含めて詰めていくことになると思います。あとは気持ちで負けないことですね。これまでの対局とタイトル戦の対局は、きっと何かが違うと思うのですが、戦ったことがないから分からなくて。だからどういう戦い方をすればいいのかというのもまだ手探りの状態です。
 東京への移籍

―― それにしても、最近は好調ですね。
室谷 よく言われるのですが、本当に理由が分からなくて。いまはちょうど調子の波が上向いているときなのかなと思います。
―― 東京に来て、多忙な毎日を過ごされていると思いますが、勉強する時間はなくなってしまっていませんか?
室谷 いえ、そこは自分でスケジュールを管理して、空いている時間でメリハリをつけて集中してやれているので大丈夫です。逆に時間がありすぎてもだらだらしてしまいますから。ただ、体調管理がちょっとうまくいかないことがあって、そこはいまの課題ですね。
―― 東京への移籍は3年間の期限付きという話を聞きましたが、どういった経緯があったのでしょうか?
室谷 いまは2年目なのですが、2年前に大阪から出るときに師匠と相談しまして、まずはとりあえず3年間、東京へ行って結果が出るように頑張ってみて、3年たったらまた話し合いましょうということでお許しをいただいて、こっちに来ることにしたんです。いまは将来のことは考えず、あと1年、目先のことを頑張ってみようと思っています。
―― 室谷さんの将棋の長所・短所はどういったところでしょうか?
室谷 長所、何だろう。思い浮かばないので短所からでいいですか(笑)。短所は、自玉に気が回らないところです。攻めがうまくいっても、最後に玉に手をつけられて崩れてしまうことが多くて。何人かに「自分の玉を見れば変わるよ」とアドバイスをいただいて、確かにそうだなと思いました。長所は……うーん、長所がないのが長所かな(笑)。まあでも常にていねいに指そうとは心掛けていますが、自分ではまだ分からないです。
―― 同じ女流棋士で、意識する相手というのはいますか?
室谷 年が近い人の成績とかはやっぱり気になったりもしますが、それよりもまず自分の将棋をどうにかしないといけないと思っていて、最近ではそこまで強く意識することはないですね。
―― 憧れの棋士はいますか?
室谷 戸辺先生(誠六段)です(即答)。自分の理想とする将棋を指されていて、人柄も素敵ですし、普及も熱心にされていますし。
―― 昨年の将棋年鑑のアンケートで、今年の目標の欄に「詰将棋2000題」と答えていましたが、達成できましたか?
室谷 ふふふ(笑)。達成してるのかなあ。1問に長くかけたりもするので、題数でいうとちょっと分からないですね。詰将棋の本は好きなので常に持ち歩いてはいますし、割いている時間は結構多いと思います。
―― 自分の将棋で、伸ばしたいと思っているところはどこですか?
室谷 私の将棋って、競り合うことがあまりないんです。よくなって押しきるか、悪くなってそのまま潰されるかで。1手差の勝負が少ないので、1手差を怖がらずきちんと読みきれるようにしたいです。
―― ゲンかつぎはするほうですか?
室谷 あんまりしないですね。あ、でも、最近は対局の前日に焼肉を食べています。
―― お店に行くんですか?
室谷 はい。1人で焼肉屋さんに行きます。私は1人でどこでも行けちゃうので。対局前は気合を入れて、何軒かよく行く焼肉屋さんを日によってローテーションしています(笑)。
―― 挑戦者決定戦は、先日優勝した湯原あったまるオープン戦のときと同じ服装だったそうですね。
室谷 そうなんです。縁起がいいかなあと思って。それもゲンかつぎですかね。

 プライベート編

―― 好きな駒は?
室谷 飛車です(即答)。飛車がないと振り飛車ができませんからね。振り飛車党は皆さん飛車と答えると思うのですが、違うのかなあ(笑)。
―― 好きな食べ物は何でしょう?
室谷 お肉。ふふ(笑)。
―― 特に好きな肉は?
室谷 タン塩です! もう大好きです。
―― では嫌いな食べ物は?
室谷 うーん、ししとうくらいですかね。昔はうなぎとかもダメだったのですが、いまは食べられます。
―― 最近食べた美味しいものは何かありますか?
室谷 何だろうなあ。美味しいものをいただきすぎて分からないですね。食べるもの全てが美味しいです。こういうとなんか食いしん坊みたい(笑)。でも食べることは好きですよ。
―― 対局時の食事はどうされていますか?
室谷 外で買って食べることが多いですね。でも日によります。局面によっては全然口に入らないこともあるし。
―― 普段の食事で特に気を使っていることはありますか?
室谷 ないですね。野菜を多めに摂るようにしているくらいで。
―― 得意料理は?
室谷 いやー。こういう質問って「肉じゃが」とか答えると、友人に「狙って言ってるじゃん」とか言われて、違う料理を答えると「そんなのさあ」とか言われて、何答えてもぶーぶー言われるんですよね。なので、得意料理は「ない」(笑)! でも、ひととおり何でも作れます。
―― 好きな季節は?
室谷 春です。ポカポカしていて心地いいので。
―― 夏と冬だったらどっちが好きですか?
室谷 冬だったんですよ、最近までは。汗っかきなので。でもこの前すごく暖かい日があって、外に出たら、暖かいほうがいいのかなあ、夏のほうが好きなのかなと思い始めています。
―― 客観的に見て「室谷由紀」という人間はどんな性格ですか?
室谷 すっごいサバサバしていると思います。モヤモヤしていることはその場ですっきりさせたいタイプで、1週間とか持ち越されるのも嫌です。だから嫌なことがあればすぐ言ってほしいし、それでその場で終わるなら終わってほしい。なんか男みたいですよね(笑)。
―― 大阪出身の室谷さんですが、ずばりボケですか、ツッコミですか?
室谷 どっちでもいけます。その場のノリで。
―― 強いて言うと?
室谷 えー、ツッコミじゃないですかね。でもツッコミって言うと、「いや由紀ちゃんボケだよ」って言われて、自分ってどっちなんだろうって(笑)。
―― 趣味や息抜きにしていることは?
室谷 大好きなコブクロの曲を聴くことと、あとはフットサルです。関西にいたときは、連盟のバドミントン部、テニス部、フットサル部と全部出ていて、そこで体を動かしていたんです。東京に来たら、こっちにはフットサル部がなくて、ブツブツ言っていたら創部されました(笑)。
―― でも男性に混じってやるのは大変でしょう。ボールを蹴るのも簡単ではないでしょうし、怖くないですか?
室谷 怖いです。最近ではみんな私にも遠慮なくぶつかってくるんですよ。でも、それがちょっとうれしかったりします(笑)。
―― 大きなお金が入ったら買いたいもの、やりたいことはありますか?
室谷 特に何が欲しいとかはないですね。海外旅行に行きたいです。
―― 海外はよく行くんですか?
室谷 けっこう行っていますよ。イギリス、オーストラリア、ロサンゼルス2回、北京、フィンランド2回とか。海外好きなんです。海外にいる友だちのところに、対局の合間を見つけて1週間くらい、という感じで。
―― 最近うれしかったことは?
室谷 誕生日のお祝いをしてもらったこと。この前、囲碁将棋チャンネルの収録のときにケーキが出てきたんですよ。びっくりしました。うれしかったです。
―― 最近失敗したことは?
室谷 失敗だらけでパッと浮かんでこないなあ。気づかないうちにアザができてたりとかはよくあります。
―― 夢に将棋が出てくることはありますか?
室谷 しょっちゅう出ますよ! 対局して勝敗まではっきり出たり。正夢もけっこうあります。この局面、夢で見た、とか。あとこれは1回だけなんですけど、解けなかった詰将棋が夢で解けたこともあります。起きて朝並べてみたら本当に解けていました。
 タイトル戦に向けて

―― 今後の目標を教えてください。
室谷 今回、タイトル戦に出て注目していただいていますが、まだ自分では強くなった実感がないので、安定して結果が残せるように、地力をつけたいですね。地力をつけてムラのない将棋が指せれば、ほかの棋戦でもタイトル争いに絡めるのではないかなと思っています。
―― それでは最後に、五番勝負への意気込みをお願いします。
室谷 いままで記録係や聞き手の仕事でタイトル戦に行くことはありましたが、対局者としては何もかもが初めてなので、緊張しないでいつもどおりできればいいかなと思います。対局者としてタイトル戦に行けるのって幸せなことですよね。タイトル戦に出るのはずっと夢だったので、楽しみしかないです。将棋に関して言えば、不安はありますが、結果のことは気にせず、まずはいい内容の将棋が指したい。まだ加藤さんと公式戦で指したことがないので、加藤さんのいい部分を吸収しながら、五番勝負が盛り上げられるように頑張ります。
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