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新刊案内「加藤一二三名局集」 ~知られざる東西対抗勝継戦の死闘~

2015.11.17 | 島田修二

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皆さんこんにちは。
ラングランズ・プログラムが気になる編集部の島田です。

今日は将棋の日ということで加藤先生の新刊「加藤一二三名局集」の内容紹介いきます。



タイトル:加藤一二三名局集
著者:加藤一二三
価格:2,800円+税
発売日:2015年11月25日

本書については特典のほうが先行してしまって内容をお伝えしていませんでした。
「島田、早く内容伝えろやっ」と思っていた方も多い、はず。

実は私、昨日加藤先生にお会いしました。






できあがったばかりの書籍を持っていって、サインをしていただいたのです。
加藤先生、ありがとうございました!そして長い時間お疲れ様でした。

サイン本を予約された方はお楽しみに。

サインのあと、1時間くらい編集部と雑談していただいたのですが、その中で、今回の名局集で特に印象深いもの、として2局を挙げていただきました

皆さん、名人戦や十段戦の番勝負の一局だと思いますよね?
ところがそうではなかったんです。

一つは第20局、第11回東西対抗勝継戦の対山中和正六段戦。

もう一つが第98局、第9期銀河戦の対深浦康市六段戦。

深浦先生の方はご存じの方もいるかもしれません。213手という超長手数の大熱戦で加藤先生が勝ったやつです。

でも山中六段戦を知っている人は、・・・おそらくいらっしゃらないでしょう。

っていうか、恥ずかしながら私、山中六段ってどなたでしたっけ?っていうレベルでしたから。

この対局がなぜ加藤先生の印象に残っているかというと、このとき加藤先生は勝ちまくっていて、山中六段との対局も楽勝だと思っていたそうです。
で、今回の名局集執筆にあたって並べるまで、「楽勝した」という印象が残っていたそうなんですが、並べてみてびっくり!楽勝どころか、ぎりぎりの勝負で大熱戦だったというのです。

ほぉー。そんなことがあるんですかー。

と、いうわけで今日は将棋史に残るタイトル戦ではなく(本書にはそういう名局も、もちろん収録されてます!)、この山中六段戦を紹介してみたいと思います

まず、この図を見て下さい。



ぱっと見、今風の先手中飛車VS居飛車の出だしに見えますが、驚くなかれ、これが▲山中―△加藤戦のスタートです。

そこから下図のように進み、局面は全面戦争の感を呈します。



いやー、細かいことはわかりませんが、力が入ってますよねー。加藤先生も言ってましたが、ぜひ盤に並べていただきたいです。
先手は好形で手厚い。でも玉は後手のほうが堅い。

ここでの4四歩のように、加藤先生の将棋は自分の角道を止めるのを苦にされていないように思います。あと、形が美しいです。将棋はこうでなくちゃいけませんね。

ここでの加藤先生の解説はこうです。

△3三角=山中六段は十分の形である。ただ、玉が強固ではないので勝ちを狙うとなると大変であった。私は打って出れないので待機の姿勢である。千日手は先後が入れ替わるので、山中六段が打開するとみていた。

ふむふむ。なるほど。

ここからなんだかんだあって、下図のようになりました。




後手の加藤先生のほうは飛車先を破ったんですが、まだ玉からは遠いです。
あと、大駒があんまり働いていません。
先手は3筋と4筋に位を張って、図の▲5四歩が角筋を通してめちゃくちゃ味良し!
角成が受けにくいです。

どうするんすか!?加藤先生!!

と、思いましたよね?

ただ、ここで用意の好手があったんです。それが△3六歩!!!




あちょー!!手裏剣ぴゅー!!

まさかこんな手があろうとは!

ここでの加藤先生の解説を見てみましょう。


△3六歩=好手。もし▲同金なら△7六飛▲1一角成△5六飛で有利。


なるほど!そういうことでしたか!さりげなく自画自賛を忘れない辺り、さすが加藤先生です。

以下、やむなしの▲1一角成に△3七歩成▲同玉△2五桂▲3六玉(下図)。



そこで、次の一手がまた最高に味良しの△9三角!!



気持ちいいー!超気持ちいい!(北島)

こんな大駒の活用、一度でいいからしてみたいもんです。

ここでの加藤先生の解説を見てみましょう!!

 

△9三角=金取りである。


・・・シンプルにしてディープ。
深いです先生!


将棋はこのあと△2三桂という超かっこいい決め手が飛び出して加藤先生の勝ちとなりました。

その辺は書籍でご堪能ください。


次にこの本を紹介するときはもう少し有名な対局にします(保証なし)。

発売は11月25日です。もうすぐです!

お楽しみに。