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新刊案内「山崎隆之の一手損角換わり」 ~一手損の基本と最先端を理解する~

2015.07.24 | 島田修二

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みなさんこんにちは。
8月1日(土)のマイナビ女子オープン一斉予選の準備に余念がない編集部の島田です。

先ほど懸賞金スポンサーの係からスポンサーのWEB申し込みが始まったことを
アナウンスしてほしいと言われたので、アナウンスしておきます。

→スポンサーのWEB申し込みはこちら

このスポンサー制度というのが結構人気なんです。
「どうせ一日かけて遊ぶんなら1万円払ってでもいい席で見て、女流棋士と写真撮れるほうがいいわ」、という方が多いんでしょうか。分かる気もします。


さてさて、今日のブログの本題はイベント紹介ではございません。新刊紹介です!

関西のイケメン王子、現在はNHKでも活躍中の山崎隆之八段の新刊、その名も「山崎隆之の一手損角換わり」です。

どーん!!



タイトル:山崎隆之の一手損角換わり
価格:本体1,540円+税
発売日:2015年8月18日


どーですか、このイケメン具合。かっこ良すぎます。

一手損角換わりが生まれて約10年がたつそうです。

本書はその10年の戦法の変遷を解説し、さらに山崎八段の経験と研究を惜しみなく披露した一冊となっております。


まずはまえがき(一部)をご覧ください。

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まえがき
 本書は後手番一手損角換わりにおける、私の「失敗の歴史」を集めたものである。初期からこの戦法を指してきたのだが、ポイントをまとめることを怠っており、同じような失敗を繰り返すことが多かった。
 今回は自戒の意味を込め、皆さまが一手損角換わりを指される際に、できるだけ道に迷わないよう、事故に遭わないようにするためのガイド本を心掛けた。

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山崎先生らしい、正直な言い方で好きです。

 

続きまして目次をご覧ください。




△3二金型と△8八角成型と糸谷流△7三銀戦法があると。

「糸谷流△7三銀戦法」、私は知らなかったんですが、みなさんはご存じでしたか?
これも4手目△8八角成のスタートです。ふむふむ。


一手損角換わりって、簡単に言うと後手から角を交換して手損するけど、それが逆にいい感じに作用するよ、って話ですよね。本書もその辺の説明から始まってます。

まず大前提として一手損角換わりで相腰掛け銀になると、一手損側が有利になる
ということから解説されてます。

後手だけ飛車先の歩の位置が低いので桂が跳べる。
ここまでは私も何となく知ってます。

そこで先手は「腰掛け銀」をやめて「早繰り銀」で対抗するようになりました。

本文にもこう書いてあります。

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 腰掛け銀には△8四歩型が生きて後手が互角以上に戦える。強敵として登場したのがこれから解説する早繰り銀戦法である。今日の一手損角換わりを悩ませる天敵でもある。

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この早繰り銀が一手損にとってかなりの強敵で、特にある新手が出てからは一手損側は劣勢に立たされてしまったそうです。本文をみてみましょう。

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▲3六歩以前はさまざまな棋士が後手番で一手損角換わりを指していた。それが先ほどの▲3六歩が指され始めてからは、特定のスペシャリストのみが指す戦型となった。====================

先ほどの▲3六歩」とは何かというと、これです。



「▲3六歩と控えて打ったのが、渡辺明棋王が差し始めた革新的な一手」と書いてあります。従来は▲3五歩△4三銀▲3七銀として、そのあと▲3六銀、▲3七桂、▲4六歩▲4五歩としていたそうです。これだと手数がかかる上に後手陣に響いていないという。確かに。

この▲3六歩が優秀で一手損側が困ったわけなんですが、これに対抗する一つの方法が丸山先生による4手目△8八角成からの△3二玉型ということだそうです。

4手目△8八角成って、こういうやつです。



いきなりアチョー!!

ん?ちょっと待てよ?
これだと先手も▲2五桂と跳ねられるから「後手だけ桂を跳ねられる」というメリットがなくなってしまうんじゃないの??と、思いますよね。私はそう思ってました。

でも本文109ページによると


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 もともと一手損角換わりの主張点は、相腰掛け銀になった際、8四で歩が止まっている後手だけに桂馬の活用の余地があることだった。詳しい変化は第1章を読み返してほしい。
 それが今は▲2六歩型でも後手が角交換に出るようになった。もしこのまま腰掛け銀になったとしても、後手は十分対抗できるという見解となっている。参考図が一例の進行だが、先手は攻めるなら▲2五歩が必要なので、それほど気にする必要はない。

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あ、そうなんですね。「腰掛け銀は気にしない、敵はあくまで早繰り銀」ということで。

で、あの優秀な▲3六歩に対して、△3二金じゃなくて△3二玉とするのが丸山九段の工夫。


のちに△4二金上とすることで、△3二金型に比べて中央の厚みで勝ります。

ただ、本書で解説されている通り、この形も後手難局というのが山崎先生の結論。

そこで、そこから先は強敵▲3六歩に対して、山崎先生が有力だと考えているいくつかの作戦が解説されていきます。

ここから先が本書の、というか山崎先生の真骨頂。△4二飛と回ったり右玉にしてみたり、居玉で金銀が分断されたまま盛り上がってみたり、まさに変幻自在。読んでて楽しいです。こんなに自由な将棋が指せて勝てたらさぞ楽しいだろうなと思います。

第4章は「糸谷流△7三銀戦法」。これがまた自在流の作戦で、これまた面白いです。飛車先を突かないで△7四歩~△7三銀~△6四銀とにょきにょき出て行って飛車を4二に回って・・・。まぁうまく説明できないのであとは本書を読んでいただければ。よくは分かりませんがきっとこの糸谷流△7三銀戦法を指しこなすにはかなりの棋力が必要です。(泣)


この本を一冊読んでやっと一手損角換わりが分かったような気がします。
一手損は自分でやるのも人にやられるのも苦手だったんですが、最近は将棋クエストで積極的に試しています。結構勝てます。

この戦法のいいところは4手目に角交換するだけで自分の土俵に持ち込めることですね。やろうと思えば大体この形になりますし。だから一手損角換わりを得意にすることは結構メリットが大きいと思います。

みなさんもぜひ本書で一手損角換わりの世界にはまっていただければ幸いです。

山崎先生のかっこいい表紙が目印です。宜しくお願いいたします。