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藤村祐爾「Fusion 360がもたらす3Dものづくりの民主化

文●栗原亮写真●黒田彰

3Dものづくりの最前線で活躍するクリエイターたちを紹介してきた本連載の最後を締めくくるのは、オートデスクでFusion 360エヴァンジェリストとして活動する藤村祐爾さんだ。各種のイベントや講演などを通じて本当に伝えたかったことは何かを聞いた。

 

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藤村祐爾 Yuji Fujimura

Fusion 360はものづくりの壁を取り除くためにあります

オートデスク株式会社、Fusion 360エヴァンジェリスト。18歳で渡米し、現地の大学で工業デザイン学科を卒業。その後、ニューヨークのオフィス家具メーカーで工業デザイナーとして活動。2010年に帰国してからは、オートデスクにて工業デザイナー向け製品の技術営業として活動、現在は世界で8人しかいないFusion 360のエヴァンジェリストに任命され、講演やセミナーなどでFusion 360の魅力や可能性を伝えるべく活動している。

 

 

ストーリーを広める

オートデスクの藤村祐爾さんは、世界で5人しかいない「フュージョン360エヴァンジェリスト」として、フュージョン360の魅力を広めるべく講演やセミナーの登壇などを日々精力的に展開している。藤村さんは、このエヴァンジェリストとしての活動の中心にあるのは「お客さん自身のストーリーを広めていくこと」だと語る。

「テクニカルマーケティングの一環として、イベントでもテレビでもラジオでもメディアを問わず、多くの人にフュージョンの魅力を広く知ってもらうための活動をしています。その際に製品そのもののスペックを述べたり、機能を説明するだけなら簡単なのですが、僕としてはフュージョン360を使って、こんな人がこんなにすごいことをやっているという“ストーリー”を重視して伝えるようにしています。それというのも、そうすることでものづくりに関わるさまざまな相談を受けるようになったり、自分を含めて人と人との新しいつながりが生まれるようになったからです」

このフュージョン360の普及活動をとおして、多くの企業やプロフェッショナルたちとの関わりが増えていった藤村さん。それまではあまりよく見えていなかった、会社の中で実際に手を動かす現場の課題意識などにも接するようになったという。

「イベントなどの集いで年間1000人以上の方々とお会いすることで、世の中には実にさまざまな会社や仕事があって、それぞれの現場でプロがいろいろな想いを持って課題に一生懸命向き合っているという現実を知ることができました。それと同時に、自分が力になれる部分もたくさんあるのだということを実感するようなったのです」

藤村さんがいま一番伝えたいことはテクノロジーの進化がものづくりの世界にもたらす可能性、それはバズワードで語られる一過性のブームなどではなく、各企業のビジネスそのものを変革しうるパワーを持っているという事実だ。

「僕がデジタルの仕事をしているからといって、今までのものづくりの方法論を否定するつもりはありませんし、捨てる必要もありません。なぜなら、その技術でしかできない事柄もたくさんあるからです。しかし、最先端のテクノロジーがもたらすであろう変化を、たくさんの事例や作品をつうじていち早く感じ取っていただければ、これまで費やしてきた作業の時間を減らしたり、手順ごとなくすことだって可能な場合があります。僕としては受け入れるべきものは受け入れて、そうして節約できた時間をクリエイティブそのものの改善に充てたり、新しいビジネスを生み出すことに使っていただきたいと思っているのです」

 

変革のはじまり

その時代を大きく変えるであろうテクノロジー要素のひとつが、フュージョン360でも利用できる「ジェネレーティブデザイン(Generative Design)」の設計機能だという。これは広義のコンピュテーショナル・デザイン(コンピュータが生成するデザイン)として捉えられると藤村さん。

「コンピュータがデザインを提案するといっても、AIが自分の仕事を奪うとかいう俗流の話ではなく、自分のスキルや技能の一部として使える、エンジニアリングの品質を高めるためのツールです。新しい動きのため、まだ広まっていませんが、デザインや設計の選択肢として持っておいたほうがいいと考えています。少なくとも近い将来に設計手法の考え方が大きく変わったときに、乗り遅れてはいけないという危機意識は持っていただきたいと願っています」

ジェネレーティブデザインといったコンピュテーショナル・デザインを活用した3Dのものづくりが普及することで、これからのクリエイティブはどのような方向に進んでいき、普通の人々はどのように向き合えばいいのだろうか。

「もちろん技術が進んだからといって、いきなり明日から全員がデザイナーになって3Dプリンタを使って製品を作り出すわけではありません。企業側が最終的な顧客のニーズに気づいて、簡便な形でデザインの選択肢を提供していく必要があるでしょう。それでも、ボタン1つでさまざまな色や形にカスタマイズされた製品が手に入るようになるのは間違いありません。すでに靴や洋服などのファッションアイテムでは、その動きが現実のものになりつつあります」

そして、この新しい動きは大企業や一部のプロだけでなく、デザイン経験の浅い学生や、すでに引退したエンジニアなど誰でも参加できるところが大きなポイントと藤村さんは強調する。

「フュージョン360は無料で誰でも利用できますし、新しいものづくりの土台を提供しています。若い子が思いついた突飛なアイデアや、プロがこれまでの方法では実現できず諦めていたアイデアが、今であれば現実に作れるかもしれません。コンピュテーショナル・デザインもその助けになってくれるのだということを、ぜひ皆さんに知っていただきたいですね」

 

Autodeskの新しい技術が用いられた代表的な作品

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MAKING NOTE

(1)「Project Stingray」。法政大学のアーバンエアモビリティー研究所のためにデザインされた電動小型航空機の概念イメージ図。離島などを結ぶために、従来のドローンよりも航続距離を伸ばせるよう翼を取り付けた形状が特徴的だ。これまでにない設計提案で、航空インフラの世界を再定義しようとしている(作成:藤村祐爾さん)。【URL】http://huam.ws.hosei.ac.jp/wp/

(2)「アンダーアーマーアーキテック」。世界初の3Dプリンタ出力パーツが用いられたシューズ。従来の金型技術では成形できない3Dプリンタならではの形状を実現した。デザイン・機能・製法の可能性が大きく広がったことでものづくりの今後にインパクトを与えた作品(作成:アンダーアーマー)。

(3)「GMブラケット」。大手自動車メーカーGM(ジェネラルモーターズ)が検証のために作成したシートベルト固定金具。従来8つのパーツで構成されていた留め具を1パーツ化することで管理費用や組み立てコストなどを削減できることを証明した。「ジェネレーティブデザイン」という、ソフトウェアが自動的に設計要件から構造体を提案してくれる機能が用いられている(作成:GM)。

(4)「本棚の留め具」。ジェネレーティブデザインを用いて本棚の軽量化にチャレンジした作品。留め具というありふれたパーツの設計を突き詰め、どこまで改善できるかという取り組みの実例となる(作成:藤村祐爾さん)。

(5)「ロボカップの競技用ロボットのためのフレーム」。ジェネレーティブデザインを用いて、フレーム剛性を保ったままロボットのフレームを極限まで軽量化することに成功。これはソフトを使い始めてから数時間で完成した初期設計のもの(作成:楠田亘さん)。

(6)「既存設計プロセスとアルゴリズムデザインの融合実験としての椅子」。3D CADでデザインされた椅子の表面に、従来のCADでは作成しにくかった曲面に沿った幾何学模様を使用した椅子。椅子のデータから飾りの部分まで含めて1時間程度で3Dデータ化されている(作成:松本ちなつさん)。

 

 

Fusion 360をもっと詳しく知ろう!

Fusion 360は、3D CAD/CAM、レンダリング、2D図面作成などの機能を含んだ高機能な3D制作ソフト。アイデアの検討から本格的な設計まで「ものづくり」をするすべての人におすすめでき、3Dビギナーにとっても最適な選択肢だ。すべての工程はクラウドで管理され、Mac、Windowsのいずれも利用できる。基本は月額課金だが、学生・教職員など、非営利目的であれば無償で利用できるのも利点。同ソフトを用いた最先端のデジタルファブリケーションの事例も公式サイト内で確認できるので、まずはアクセスしてFusion 360の世界を知り、体験版をダウンロードしよう。

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