教育・医療・Biz iOS導入事例

Apple Payにも対応した人気うどん屋の多店舗化戦術

文●牧野武文

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

都心からやや離れた東京西部の住宅地に一軒の人気のうどん屋がある。そこでは、POSレジアプリのAirレジや、Apple Payにも対応したAirペイなどを積極的に活用する。うどん屋でなぜそこまで? 導入の理由はシンプルだが、導入の目的は実に壮大だ。

 

 

うどんもアップルペイもお客のため

東京都中野区・新中野にある「讃岐のおうどん 花は咲く」(以下、花は咲く)は、素材や健康志向にこだわったうどん屋だ。一般的に低価格なうどんのイメージを払拭すべく、上質で体に良い食材を使い、4種類の国産小麦をブレンドした自家製麺を提供している。その味に惹かれて、営業時間中は店舗前に行列が途絶えることがない。

そんな「花は咲く」では、リクルートライフスタイルが提供する「Airレジ」を昨年8月から活用している。Airレジは、iPadやiPhoneを使って会計や売上分析、顧客管理、在庫管理などが簡単に行え、初期費用・月額費用とも無料で利用できるPOSレジアプリ。キャッシュドロアやレシートプリンタなどの周辺機器と組み合わせることも可能なほか、「Airペイ」と連携することで注文入力からクレジットカード、交通系電子マネー、アップルペイ(ApplePay)の決済が行える。

 

 

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讃岐のおうどん 花は咲く
住所●〒164-0011 東京都中野区中央4丁目6-12
URL●http://www.hanahasaku.com/

東京都中野区・新中野にある「讃岐のおうどん 花は咲く」。人通りが多くはない立地でありながら、営業時間中は行列ができる人気店だ。家族連れで訪れる人も多いという。写真は、有限会社さがた・代表取締役の相方芳彦氏(右)とスタッフの梶原圭介氏(左)。

 

 

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讃岐系のうどん店としては、定番のぶっかけ、かけが基本。しかし、一番の人気は「極上の肉うどん」(1600円)。讃岐系うどんとしては高く感じるが、素材を厳選した究極のうどん。これを食べに通いつめる常連客も多い。

 

なぜ、うどん屋でこうした新しい決済ソリューションを導入したのだろうか。有限会社さがた代表取締役の相方芳彦(さがた・よしひこ)氏に話を聞くと、初期費用・月額費用が無料であること、iPadやキャッシュドロア、レシートプリンタの購入にあたってAirレジが消費税軽減税率対策補助金の補助金対象サービスであったことが大きいと答える。

「当店ではお客様に喜んでもらうために、必要以上の原価をかけて食材にこだわったうどんを提供しています。そのため、うどん以外のお店の経営に関する部分で費用を削減できるのであればそれに越したことはありません」

「花は咲く」では、Airレジ導入以前から実は主要クレジットカードを利用することができた。5%程度の来店客がカード決済をしていて、じわじわと比率は上がっていたという。ただし、クレジットカードや電子マネー対応店舗を謳うことで、集客効果を狙っているわけではない。

「今、おかげさまで行列が絶えないほどのお客様に来ていただいています。うどん屋ではクレジットカードや電子マネーが使えないというのは従来当たり前だったのかもしれませんが、私としてはお客様のサービスになるのであれば積極的に導入すべきだと考えています。『うどんで日本を元気にしたい』。それが私がこのお店を始めたきっかけです。うどん作りもお店のサービスもすべてお客様のためを第一義にしています」

うどんエンジニアリング

相方氏には、いわゆる丁稚奉公的な長期間にわたる修行経験はない。飲食とは異なるビジネスをしていた相方氏は、2012年10月に本場の讃岐うどんを食べて、深い感銘を受けた。「おいしい」などという浅いものではなく、「今のビジネスを捨てて、うどんビジネスがやりたい」と決断してしまうほど深い感動だったという。

そして仕事を辞め、本場の讃岐うどん店でうどん作りの基礎を学び、それからほぼ独学でうどん作りに精進。店の経営も自ら学び、2013年6月に現在のお店を開業した。

「うどんは、小麦粉の成分や水の温度、塩の量、こねる時間、その日の気温、湿度によって味が変わります。ありとあらゆるデータを取り、美味しいうどんを作ろうとしました。その結果95点のうどんは短期間で作れるようになったのですが、なかなか100点のうどんにはたどり着けません。うどん作りにはデータでは語れない部分があるんです。それが魅力ですし、難しいところです。お客様には申し訳ないのですが、80点以上を出せない日は店を開きません」

相方氏がやっているのは、うどん作りのエンジニアリングだ。データに基づき、基本的な品質を維持する。さらにそこから人間でなければ持ち得ない感覚で、さらなる高い品質を追求している。

IT活用の勘所

そんな職人気質を持つ相方氏は、同時に優れた経営者でもある。

飲食店の経営は、日々難しくなっている。昔であれば、うどん職人はおいしいうどんを作ることだけを考えていればよかった。それで、お客は自然に集まってきたし、うどん屋は繁盛をした。しかし、家賃や人件費、食材というコストが高騰している現在では、うどん作りが上手なだけでは、星の数ほどある同業店に埋もれてしまう。かといって、うどん店経営者は経営だけに専念はできない。時代がどうなろうとも、消費者はやはり「おいしいうどん」を求めていて、うどん作りを人任せ、機械任せにするわけにはいかないのだ。本来なら、まったく別の職種である経営者と職人の両方をこなさなければならないのが、飲食店のオーナーだ。

「特に小規模な店舗のオーナーには時間がないんです。そうした環境の中、どうしても経営が二の次になってしまい、失敗する人もいます。Airレジを導入したメリットは会計面だけでなく、経営面にもあります。たとえば、簡単にメニュー登録ができ、あとは営業時間中に普通のレジ操作をするだけで、リアルタイムで経営分析に必要な売上データのグラフを作ってくれる機能は便利です」

「花は咲く」では、Airレジ導入以前は、ごく普通のレジスターを使っていたが、時間ごとの売上グラフを作るために、レシートを一つ一つパソコンに手入力し、表計算ソフトでグラフを作っていた。レジを新しくしたら、売上データをパソコンに転送できるようになったが、それでもグラフは手作りしなければならない。それがAirレジでは、どこにいても、スマートフォンやiPadから、リアルタイムで売上グラフが見られるのだ。そしてそれを商品メニューに反映したり、在庫調達に利用したりすることができる。

Airレジをはじめ、今後もIT技術は積極的に導入していきたいと語る相方氏。それは、 「お店を維持すること」だけでなく、「お店を発展させること」につながるからだ。IT技術は、主役ではなく、陰の補佐役である。「私はパソコンも苦手、スマホもちょっと苦手(笑)」という相方氏だが、IT活用の勘所は確実につかんでいる。

そしてお店のオペレーションの効率化によって生まれた時間を、相方氏は新たなことに費やそうとしている。それは、相方氏の「うどんの作り方」「うどん店の経営」のノウハウを伝授するうどん学校の開設だ。10月に開講し、ごく短期間で集中してプロを養成する。そして、うどん店経営者を輩出させ、来年の8月には系列店を200店舗出店させる。それはすべて、「うどんで日本を元気にしたい」という願いを叶えるためで、決して実現できない夢ではないという。

 

 

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売上分析機能を利用することで、さまざまな期間の売上データを参照し、多角的に分析できる。以前は、自分で表計算ソフトを使って作っていたが、それと比べて毎日数時間の時間の節約になっているそうだ。

 

 

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お店の一角にあるiPadとAirレジ。トップ画面には、「注文入力」や「点検・清算」「分析」「顧客」「商品」といったメニューが並び、商品メニューの登録などが、非常にわかりやすいインターフェイスから簡単に行える。

 

 

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讃岐系うどんのレジ操作は意外に複雑。かけ、ぶっかけの基本メニューに、天ぷらなどのトッピングを別に注文する人が多いからだ。以前は、伝票を元に値段を入力して、合計金額を計算していたが、Airレジでは品名を選ぶだけになった。

 

 

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「花は咲く」ではAirレジに加えて、Airペイも導入。クレジットカードや電子マネー、Apple Payが1端末で決済できる。相方氏は、お客様へのサービスとして、今後もあらゆる電子決済に対応していきたいと言う。

 

花は咲くのココがすごい!

□AirレジやApple Pay対応などITを積極的に活用。
□「お客様に喜んでもらうこと」が店舗経営の第一義
□ITの活用はあくまで手段、生まれた時間で多店舗化計画、うどんで人を幸せに



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