教育・医療・Biz iOS導入事例

iPadのある授業が“生徒発”の学びを育む

文●崎谷実穂

Apple的目線で読み解く。教育の現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

学習支援ツール「Classi(クラッシー)」を活用して、iPadを授業・学校運営のプラットフォームと位置づける明星中学校・高等学校。さまざまな工夫を凝らし、“一斉授業”から“生徒たちの能動的な学び”への転換を図っている。

 

 

iPadで自由に調べ学習

自席から離れ、各々集まってプリントの問題について教え合う生徒たち。その中心には、iPadがある。東京・府中市にある明星中学校・高等学校(以下、明星中高)では、iPadを中学3年以上の生徒全員に配付している。

見学したのは、中学3年の理科の授業。最初に問題が記されたプリントが配られ、電子黒板にはテーマが表示されている。生徒たちは、iPadや教科書を使って用語の意味を調べ、わかったことをノートにまとめる。それをもとに、プリントの問題を解くのだ。理科担当の本田康男教諭は、「教科書やウィキペディアの丸写しだと、あとで読み返したときに自分が困るぞ」と、席を回りながら声をかける。あくまで、理解したことを自分の文章で簡潔にまとめさせるのが目的だ。中には、植物の構造をイラストにしている生徒もいる。良いノートがあると、本田教諭がiPadで写真を撮る。

 

 

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約90年の歴史を持つ明星中高は、近年、英語教育と理数教育に力を入れている。昨年からは新たにMGS (Meisei Global Science)コースを新設し、国際社会で活躍する次世代リーダーの育成を目指している。

 

 

 

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iPadでインターネット検索をして用語を調べる生徒。丸写しするのではなく、自分の言葉でノートにまとめることで学びが深まる。

 

 

授業も後半になってくると、生徒たちが席を立ちわいわいと話し始めた。この授業では「態度目標」が設定されていて、それによると授業中に喋ることや動くことはむしろ推奨されている。プリントが終わっていない生徒は、解き終えた生徒の机まで行き、質問をする。そこかしこにグループができ、もはや自席にいる生徒のほうが少ない。面食らっていると本田教諭は「厳しいルールはあまり設けず、生徒が自由に学べるようにしています。生徒同士で教え合うことで生まれる学び合いを、ここでは大事にしているんです」と、授業の意図を教えてくれた。

模試の結果や宿題はクラウドで

全員がプリントを解き終えたところで、残り時間はあと10分。タイミングを見計らい、本田教諭が学習支援のクラウドサービス「クラッシー」の授業グループに向けて解答を配信する。答え合わせが終わると、本田教諭は先ほど撮影したノートを電子黒板に表示。自分のノートが見本として取り上げられた生徒はうれしそうだ。最後は、クラッシーを使ってアンケートをとり、終了。本田教諭が黒板に板書をし、講義するという場面は一度も見られなかった。

本田教諭は、昨年はパワーポイント(PowerPoint)で動画を作成し、それをiPadで見せて要点をまとめさせるという授業を実施していた。その結果、1学期は赤点の生徒が何人もいたのが、学年末考査では平均点が約80点、最低得点が50点まで上がったという。

「生徒からは当初、『板書をしてほしい』という声がたくさんありました。それは、一斉授業のほうが生徒にとって楽だからなんです。授業内容をイチから自分でノートにまとめるのは意外と大変ですが、確実に学力はつきます。今年はそれに加え、学び合いという形を取り入れて、より理解が深まるようにしています」

明星中高では2014年からiPadを導入している。数あるタブレットからiPadを選んだのは、ベネッセの模試のデータ管理ができるクラッシーを使えることが理由だった(現在はiOSデバイス以外でも利用可能)。クラッシーのIDを生徒と保護者に付与することで、iPadが学習および学校生活のプラットフォームとして機能するようになった。当初の目的であった模試の結果はもちろん、今では学校からの連絡や宿題も、すべてクラッシーで共有している。そして本田教諭の授業で見たように、授業でもiPadの活用が進んでいる。

 

 

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まとめかたの上手なノートをiPadで撮影し、スクリーンに表示して生徒たちに見せる本田康男教諭。スクリーン表示はAirPlayで行えるので、教室のどこにいても操作できる。

 

 

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授業を見学して印象的だったのは、生徒たちの学び合いだ。知識習得は自学で、問題解決学習はクラスで、といった「反転学習」を、いわば授業内で行っている。

 

 

iPadの強力な相棒

ICT教育推進部主任の荻野光康教諭は、明星中高でのiPad活用が進んだのは、教員にiPadを配付したのと同時に各教室にアップルTVを導入できたことが鍵だったと語る。

「他校では、タブレットPCを電子黒板やプロジェクタにつなぐのにケーブルを使っているケースをよく見ます。それでは、教員はその場から動くことができません。本校では、アップルTVのエアプレイ(AirPlay)ミラーリングで表示しているので、教員がiPad片手に自由に動き回ることができるのです」

荻野教諭の担当は数学。授業の準備は、PCとiPadで行う。PCで作図し、それをiPadに保存。授業中は自身のiPadの画面を電子黒板に表示させ、相似形の図形をその場で描いたり、方眼紙を黒板に投射して生徒にグラフを描かせたりしているという。iPadにダウンロードできるアプリは、情報システム課と荻野教諭で集中管理をしているが、「こういうアプリを入れたい」という生徒からの相談には柔軟に応じている。

また学校全体で英語教育に力を入れており、そこにもiPadが活用されている。中学3年は4週間のセブ島での語学研修に参加。その予習と復習としてiPadを使ったオンライン英会話を行うという。コミュニケーション能力を鍛えるために、iPadを活用する。

荻野教諭は、iPadはあくまでツールであり、それを使いこなすのが目的ではないと語る。

「今後は、授業も教師から生徒への一方通行ではなくなり、生徒が発表・発信するという機会が増えていくでしょう。生徒がテストを作成して配る、なんてこともあるかもしれません。2020年の教育改革に向けて、与えられた課題を解くだけでなく、自ら課題を発見し、それを人に伝えていく能力が必要になってくる。その力を育成するのに、iPadの活用が不可欠であると考えています」

 

 

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本田教諭が授業で使用しているスライド。タップすると隠されていた単語が表示されるアニメーションスライドを作成し、「暗記シート」として配付することも。

 

 

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Classiでは各クラスの生徒や教科の教員、学年全体などそれぞれのグループを作り、必要事項を連絡することができる。Classi上でWEBテストを作成・配信し、生徒の理解度を確認することも可能だ。
※上記は使用例を示したサンプル画像です。明星中高での実際の使用写真とは異なります。

 

 

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明星中高のICT教育推進部主任兼教務部副主任 荻野光康教諭。

 

明星中学校・高等学校のココがすごい!

□板書をしないのは当たり前!? “先生が何も教えない”授業がある。
□クラスのホームルームをクラウド上で実現。いつでもどこでも学校・先生・部活仲間とつながれる。
□各教室にApple TVを配備。電子黒板と連携して、授業づくりにフル活用。



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