2016.02.17
イノベーションは「技術革新」と訳されることが多い。しかし、インターネットが出現する前と後の時代では、あらゆることに対する考え方を改めなければならなくなっている。果たしてイノベーションとは本当に技術革新のことなのだろうか。これが今回の疑問だ。
100年以上も前に生まれた言葉
AI(After Internet)時代になってよく耳にする言葉が「イノベーション」だ。日本語では「技術革新」と訳されるが、この訳語は誤解を招きやすいというのはよく指摘されるところだ。そこで最近では「新機軸」と訳されることも多くなっている。
実は、この「イノベーション」という言葉が生まれたのは古く、100年以上も前の経済学者シュンペーターが定義した。日本では1958年の経済白書でこの言葉が使われ、このときに「技術革新」と訳された。シュンペーターの定義では、技術だけでなくまったく新しい製品、生産方法、販路、原材料調達、組織のすべてあるいは組み合わせがイノベーションであって、このイノベーションが連続して起こるときに経済は発展するという主旨だった。つまり、技術だけに限らず、企業活動すべての革新を求めていたのだ。経済成長前の1958年の日本にとっては技術力の向上こそが最大の優先課題であったため、当時の官僚は「技術革新」と訳したのだろう。だから、イノベーション=技術革新が通用したのは、あくまでもBI(Before Internet)時代のことだ。