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エプソン究極の1台! カラリオ新画質を実現した「EP-10VA」はお家プリントの常識を変える

文●栗原亮

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

セイコーエプソン株式会社
【URL】http://www.epson.jp/

 

 

「写真画質には妥協しない」。セイコーエプソンのプリンター事業部で新製品開発のプロダクトリーダーを務める松田完さんには企画段階から強いこだわりがあった。

もともとエプソンのインクジェットプリンタの画質は、プロやハイアマのフォトグラファーから高い評価を得ている。中でも”写真画質の極み”を掲げるハイエンドクラスの「プロセレクション(Pro Selection)」シリーズは、多くの写真愛好家の作品づくりを支える名機だ。その写真高画質印刷を、家庭向けの「カラリオ(Colorio)」シリーズでも実現したい。そうしたコンセプトを実現するために新開発されたのが、A3機「EP-10VA」だ。

「プロセレクションとカラリオの間を埋める製品に一定のニーズがあることはお客さまの反応などから把握していました。プロセレクションはサイズ&価格面から購入に躊躇してしまう。でも、家庭で手軽に写真作品づくりをしたい。そうした人に向けて最高の製品をお届けしたかったのです」

しかし、EP-10VAの開発は容易ではなかった。というのも、カラリオでは写真印刷はもちろん、書類のコピーやスキャン、DVDレーベル印刷など日常的なさまざまな用途に対応する必要がある。また、A3用紙サイズの連続給紙に対応しながらも設置面積はA4サイズのプリンタと大きく変わるものであってはいけない。それでいて可能な限り画質を追求し、手に入れやすい価格帯で販売する。こうした要件を満たすために、EP−10VAではインクや紙送り機構に至るまで徹底的にいちから見直されている。

もっとも大きなチャレンジは搭載する6色インクでどのようにプロセレクションの8色インクの品質に近づけるかだった。カラー印刷に最低限必要なインクはCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)4色であり、写真の色再現性や階調の豊かさを実現するために、通常はライトシアンやライトマゼンタなど中間色のインクやモノクロ写真印刷のためのグレーインクを増やしていく。

松田さんや同プリンター企画設計部の中村祐也さんらのメンバーはCMYKに追加する2色の組み合わせの可能性を探り、最終的に赤(レッド)とグレーの2色を選んだ。だが、中間色のインクを減らしたことで粒状感が増してしまう。1つの色ではインクドットの粗密の差が遠目で見たときにわかりやすくなってしまうからだ。

 

PRODUCER PROFILE

プリンター事業部
プリンター企画設計部 主任
松田完氏

 

プリンター事業部
プリンター企画設計部
中村祐也氏

 

 

そのため、新インクの研究と同時進行で高精度に細かく均一にインクを紙に吹き付ける「紙送りローラー」の開発が進められた。紙送りローラーにわずかでも歪みが生じれば送紙タイミングがズレて色ムラに直結する。もちろん、これまでの製品のパーツ精度が低かったわけではない。だが、新インクで従来以上の画質を再現するには避けては通れない課題だった。

「製造を担当するチームからは当初無理と言われましたが、試作を繰り返し、延べ1000本以上のサンプルを作成しました。求められる精度は、髪の毛1本の厚さにも満たないミクロン単位でした」

その一方で、画質設計チームは実際にプリントの色を測定して調整を繰り返す。

「インクの調整は材料選びに始まり、各色のインク配分(LUT)の決定、膨大な数のプリントサンプルによる品評、信頼性や色褪せチェックなど多岐にわたる大変な作業です。しかも、インクの組成が少しでも変わればすべての検査項目はやり直し。試行錯誤したLUTは実に100パターンを超え、その中で階調性・色再現域・粒状性が最適になるものを搭載しています」

こうしてプロジェクトの開始から1年以上かけ、EP-10VAはカラー写真で10%の色再現範囲の向上、またグレースケールの階調性の大幅な向上により、光沢感のある作品画質のモノクロプリントを実現した。

EP-10VAのこだわりは画質だけにとどまらない。写真選びに便利な撮影情報付き印刷や、自分の好きな写真の色味を確認できる色補正一覧印刷、余黒・余白のフチ設定機能等、写真作品づくりをプリンタ本体だけで行える工夫が盛り込まれている。無料でダウンロード可能な「エプソン・プリント・レイアウト(Epson Print Layout)」を使えば、さらに多彩な表現を追求することも可能だ。インクジェットプリンタ最高峰のプロセレクションへの架け橋となるEP-10VAは、染料プリンタのさらなる高画質モデルを実現し、カラリオの枠を飛び出した、みんなが手に届く真の写真プリンタといえる。

 

 

「EP-10VA」の写真画質へのこだわり

新6色インク

EP-978A3(左)と比較すると、EP-10VA(右)は赤色の色再現性が向上していることがわかる。EP-10VAは明るいところだけでなく、影の部分までしっかりと発色している。また、グレーインクを追加することでニュートラルで階調性豊かなモノクロプリントを実現している。

紙送りローラー

色ムラと粒状感を減らすために紙送りローラーの構造を見直した。求められる精度は髪の毛1本よりも細いミクロン単位で、従来の歪みを測定する器具では計測できないレベルであったため測定治具から作り直すことになった。1000本以上のサンプルを作成し、最終的にローラーの中支えを複数にすることで、高精度な紙送りとインクの着弾精度の向上を実現した。

デザイン

本体デザインはさまざまな方向性から検討され、社内デザイナーによってイラストスケッチやCGが作成された。EP-10VAは日常的な利用にも違和感なく溶け込むようなシンプルで、かつ高級感のあるデザインとなった。

 

 

PRODUCT FOCUS

コンパクトでも高画質

新開発の6色染料インクを搭載した「EP-10VA」。L判からA3サイズまでの印刷に対応しながら、本体サイズは479(W)×395(D)×168(H)mmと、とてもコンパクト。A3写真用紙の印刷速度は約2分23秒と速い。価格はオープンプライスで、実売価格は4万5000円前後だ。

 

好みの色味にこだわれる

EP-10VAの大きな魅力の1つが本体のみでこだわりの作品づくりが行えること。SDカードを直接挿入し、タッチディスプレイの簡単操作で、明るさ・コントラスト、色調の違いを一覧で確認できる色補正一覧印刷が可能。好みの色味を実際に見て確認できる。

 

背面トレイで連続給紙対応

A3サイズまでの用紙に対応する背面トレイは写真専用紙5枚、普通紙10枚まで連続で給紙できる。トレイは3段階で伸びるが、一般的なオフィス机の奥行き60センチでも設置できるように微妙にトレイの角度を変えている。こうしたユーザ視点の細やかな配慮はエプソン製品ならではだ。

 

 

【LCCS】
インク配分を論理的に算出するために、エプソンはマンセル色彩研究所と共同開発した独自の色変換システム「LCCS(Logical Color Conversion System)」を用いている。

 

【伝統色】
松田さんは開発の初期段階で、店頭で配布されることになる製品カタログをイメージした仮想カタログを作成し、製品のコアとなる価値観をプロジェクトメンバー間で共有した。初期の仮想カタログには「日本の伝統色」というコンセプトも盛り込まれ、色再現性について強く意識していたことが窺える。