メディア・インテグレーションで働く畑澤さんを訪ねる|MacFan

アラカルト アップルのミカタ

広く多様な音楽制作の世界をハードとソフトの両面でサポート

メディア・インテグレーションで働く畑澤さんを訪ねる

文●栗原亮

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

畑澤崇 (はたざわ・たかし)

大学卒業後、楽器メーカーのインストラクターや楽器店勤務を経て2003年に株式会社メディア・インテグレーションに入社。出荷業務やカスタマーサポートを経て、現在はMI事業部で営業のマネージャとして勤務する。幼少時よりピアノに親しみ、現在はベースの演奏も行うなど持ち前の音楽の知識を活かし、スタジオや楽器店などでの新製品デモンストレーションや映像コンテンツの制作などを行っている。

 

アップルとデジタル・ミュージックの関係には深い歴史がある。その初期から現在に至るまで最前線で携わってきたのが、東京・渋谷で音楽制作機材を取り扱うメディア・インテグレーションだ。8ビット時代からのコンピュータ好きであったレコーディングエンジニアの前田達哉氏が同社を設立したのが1989(平成元)年のこと。プロクオリティの音楽制作やノンリニア映像編集機材の専門店「Rock oN Company」の運営会社といったほうがわかる人が多いかもしれない。プロのサウンドエンジニアからの評判も高く、各種機材をハンズオンで扱える渋谷店と大阪・梅田店は常に音楽好きの客で賑わっている。

このメディア・インテグレーションでディストリビューター事業の営業マネージャーとして務めているのが、畑澤崇さんだ。

「もともと音楽が好きで、大学生の頃にPower Macintosh G3を購入し、当時はまだアップルから発売されていなかった『ロジック(Logic)』を使って音楽を自主制作していました。ギターやピアノを自分で弾いて録音して、1人でもさまざまな音を重ねられるのが面白かったですね」

大学卒業後は音楽の知識・経験を活かして楽器メーカーのインストラクターや楽器店の販売業務に携わっていたが、当時の取引先の1つであったメディア・インテグレーションの営業担当者のキャラクターに惹かれ、同社への転職を果たした。

「楽器店時代にさまざまなメーカーさんとのお付き合いがあったのですが、この会社の営業マンは“音楽好き”という雰囲気が特に強く伝わってきたんです。たとえば、洋服屋さんでもそうだと思うのですが、ファッションのセンスが合わない店員さんからは洋服は買いたくないですよね。楽器も同じなんだと思います、機材そのものの特性に詳しくて音楽に関する感性を共有できなければ買いたいとは感じないと思うのです」

音楽制作用ソフトウェア販売に始まり、現在では関連するハードウェア機材を取り扱うことも多くなったが、プロ向けの音楽制作プラットフォームとしてのMacという位置づけは変わらないと畑澤さんは語る。

「ウィンドウズに対応するソフトやハードもありますが、やはり現在でも音楽を作る環境はMacが中心です。それというのもOS Xが安定していてトラブルが圧倒的に少ないこと、そして現場でのトラブルの回避方法が確立しているところにあります。プロの現場は安定して動くということが何より大事ですし、実際私自身も楽器店などのデモンストレーションの際に安心して利用できます」

レコーディングスタジオなどの現場に訪れることの多い畑澤さんによると、ミュージシャンやサウンドエンジニアの多くがMacBookプロまたはMacBookエアを持ち込んでいて、ウィンドウズとの2台持ちという組み合わせも少なくないという。

その一方で、iOSデバイスを音楽制作に活用する新しい動きも増えてきているそうだ。

「スタジオで定番の『アポジー(Apogee)』も本格的にiOS対応するUSBオーディオインターフェイスやマイクなどを出しています。つい先日に出た『メタレコーダ(Apogee MetaRecorder)』というアプリを使えば、アポジーのインターフェイス経由でiPhoneに録音した音声ファイルをファイナルカットプロのXMLファイルとして書き出せるので、映像と音声のシンクが簡単にできるようになりました。映像のハイレゾ化ばかりが注目されていますが、音にもこだわることでもうワンランク上の動画になるというのは皆さんにも知っていただきたいですね」

実際に畑澤さんは自ら取材・撮影した映像をMacBookエアのファイナルカットプロで編集し、製品説明や社内制作の広報誌(Proceed Magazine)などのクリエイティブに活用しているとのことだ。

 

 

 

さらに、畑澤さんがイチオシのアイテムがスゥエーデンのティーンエイジ・エンジニアリング(Teenage Engineering)が製作した「ポケット・オペレータ(Pocket Operator)シリーズ」だ。この基板剥き出しデザインのガジェットはそれぞれが異なる機能を持つシンセサイザで、ボタン操作を組み合わせることで電子音のパターンをさまざまに演奏できる。

「とてもシンプルなサウンドアイテムで、昔のゲームウォッチ風の液晶パネルやお菓子箱のような紙製パッケージなど、どれもガジェット好き、音楽好きの心をくすぐるものですね。こういうシンプルで誰にでも音楽そのものを楽しめるようにするというコンセプトはアップル製品に通じるものがあると思います。実際にiPhoneのシンセアプリと同期した演奏も可能ですし、発売後には私も店頭などでデモンストレーションしたいと考えています」

音楽の分野は楽器経験者もいれば、MacやiOSデバイスと連携する音響機材だけで作曲することもできるなど間口も広く、それを楽しむ年齢層も実に幅広い。アップルが音を楽しむ世界を広げていったように、メディア・インテグレーションとしても音楽制作の環境を幅広くサポートしていきたいという。

 

高品質なUSBオーディオ

メディア・インテグレーションは、デジタル・オーディオ機器で有名なアポジー(Apogee Electronics)の国内輸入代理店でもある。音楽制作スタジオなどで評価の高いアポジー製品だが、USBオーディオインターフェイスの「One for iPad & Mac」などリスナー寄りの製品もある。マイクも内蔵し、インタビューやボーカル録音などにも活用できる。

 

スウェーデン生まれのサウンドガジェット

6月発売予定のポケットサイズシンセサイザ「ポケット・オペレータ」シリーズ。ティーンエイジ・エンジニアリングとアパレルブランド「Cheap Monday」のコラボ製品で、ドラム(PO-12)ベース(PO-14)、メロディー(PO-16)をラインアップ。スピーカ搭載で単体でもサウンド再生できるほか、iPhoneのシンセアプリなどからの音声と合わせて誰でも手軽に音楽を楽しめる。

 

リモート操作対応のレコーダアプリ

アポジーはiOSアプリの「メタ・レコーダ」をアップストアで公開している(アップル・ウォッチにも対応)。アポジーの「MiC 96k」などと組み合わせれば、サンプルレート最高24ビット/96kHzでの録音に対応する。野外録音などさまざまなシーンで利用できるだろう。

 

オーディオプラグインの定番

DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)ベースの音楽制作において、音源のミックス・マスタリング作業は楽曲のクオリティを左右する重要なファクターだ。同社が取り扱う「Waves」は、このミックス・マスタリングの定番プラグイン。音楽、放送、映画など多くの音声処理の現場で愛用されている。画像は最も人気のバンドル・モデルGoldのパッケージだ。

 

畑澤さんの鞄の中!

 

?会社支給のMacBookエアとiPhone 6プラス。和柄のMacBookエア用ケースは、裁縫師の畑澤さんの母親が自作したオリジナル。「Macにはワード、エクセルといった仕事用ソフト以外に、ファイナルカットプロやロジック、プロ・ツールスなどが入っています。どこに出かけてもたいていのことに対応できますね」。

 

?普段持ち歩くデジタルカメラはソニーの「α7」で、動画の撮影によく使っているそうだ。「仏像を見に行くのが趣味なので、土門拳さんの本を読んで次にどこに行こうかと考えています」。使っている手帳は、京都のアパレル・ブランド「衣」のノベルティ。「和装デザインが好きなんです」。

 

?ティーンエイジ・エンジニアリングの大ヒット作となったポケットシンセサイザ「OP-1」とアポジーのマイクを持ち歩くことが多い。「マイクはアーティストインタビューのときに使ったり、街でいい音に出会ったら録ったりしています。OP-1は手軽に音作りが楽しめ、デザインも洗練されていて、遊び心を大切にしているのがいいですね」。

 

【取材後記】
かつての音楽制作は初心者用、プロ用で明確に分かれていたが、現在はプロが初心者向けの機材を面白がって使ったり、初心者がいきなり本格的な音楽を作れる環境が整いつつあるという。そのきっかけになったのはiPadの音楽アプリなどだという。

 

【取材後記】
アポジーの本社は米国カリフォルニアにあり、コア・オーディオの開発にも関わるなどアップルとも縁の深い企業とのこと。ちなみにアポジー製品をMacに接続すると、デスクトップに独自のマイクやギターのアイコンが出てくるそうだ。