ウエスタンデジタルで働く安田さんを訪ねる|MacFan

アラカルト アップルのミカタ

「常識にとらわれない発想」がアップルから学んだこと

ウエスタンデジタルで働く安田さんを訪ねる

文●栗原亮

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

 

 

安田伸幸 (やすだ・のぶゆき)

ウエスタンデジタルジャパン株式会社チャンネルマーケティングマネージャー。サーバ製品に関する知識を活かし、アップルジャパンなどの勤務を経て3年ほど前より現職。ウエスタンデジタルではコンシューマー向けの外付けHDD製品と内蔵HDD製品の両ラインアップのマーケティングを統括する。

 

データの保存や持ち歩き、バックアップには大容量の外付けハードディスクドライブ(HDD)が欠かせない。各社からさまざまな製品が発売されているが、Macと親和性の高いデザインで人気を集めているのが、ウエスタンデジタル(以下、WD)の製品だ。

「私自身がそうなのですが、Macユーザは自分のMacと近いデザインの製品を好む傾向がありますよね。ですから、WDのMac向け製品はラウンド形状やアルミ素材を用いるなど、Macを強く意識してデザインしています」と語るのは、WD日本法人でマーケティングを担当する安田伸幸さん。その経歴を詳しく聞くと、なぜデザインについて真っ先に語り出したのかが理解できる。

安田さんはもともとUNIX系のプログラマーを経てウィンドウズのソフトを扱う会社に勤務していたが、その後、サーバの知識やエンジニアとしての能力を見出されアップルジャパンに入社した経歴を持つ。入社当初はMacの基本操作すらあまり詳しくなかったものの、使い込んでいくうちにMacの“本当の”魅力に気がついたという。

「製品のデザインもそうですが、特にGUI(グラフィカルユーザインターフェイス)の素晴らしさに感激しました。ウィンドウズ95の時代の話ですが、当時のウィンドウズはデバイスの制御やファイルシステムの中身はMS−DOSそのままだったのに対し、MacはCDなどを入れた時点ですぐ認識したり、編集中のファイル名を変更できたりとユーザに不自由を感じさせず、GUIでやりたいことに集中できるという環境が徹底していました」

 

 

アップル退社後、安田さんは独立してクイックタイム・ストリーミングサーバの事業を営んだり、ソフト会社やコンシューマー向けPCメーカーのマーケティングなどを経験し、現在はWDのマーケティング部で内蔵HDD製品と外付けHDD製品の両方を総合的に見る立場にある。

マーケティングの仕事においても、アップル時代に培われた経験が活きていると安田さんは語る。

「アップルから学んだことは『過去の常識にとらわれない』ということ。ですから、WDにおいてもそれを実践しようと心がけています。たとえば、東京・秋葉原などの自作パーツショップでは内蔵HDDが『バルク』とも呼ばれ、“茶箱”に入れられカウンターの奥で扱われていました。これではお店に来るお客様にとって不親切ですし、イメージも良くなく、WDのブランディングも訴求できません。ですから、コストを抑えながらパッケージを開発することで、今では外付けHDDと同じように店頭に並べてもらっています」

そうした努力の甲斐もあり、円安や増税などの逆風がある昨今の状況でも市場シェアは毎年上がり続け、2015年現在、国内で販売される約5割の内蔵HDDがWD製となっている。

また、外付けHDDに関しても積極的に製品を投入している。特に「Mac向け」のモデルのラインアップは充実しており、USB3.0接続の「マイブック・ステュディオ(My Book Studio)」や「マイパスポート(My Passport for Mac)」のようなエントリーモデルから、サンダーボルト接続の「マイブック・サンダーボルトデュオ(My Book Thunderbolt Duo)」や「マイパスポート・プロ(My Passport Pro)」などパフォーマンスを重視したモデルまでリリース。用途に合わせて最適な製品が選べるのが、WDの外付けHDD最大の魅力だ。

「サンダーボルト製品はほとんどがMacの独壇場で、写真や映像、音楽などクリエイティブプロからも支持を得ています。CP+(2015年2月に行われたカメラ・写真の展示会)ではハイパフォーマンス編集のデモンストレーションやデータの二重化など写真好きクリエイター向けのソリューションを複数展示しました。そこでもクリエイティブ分野のニーズが高いことを実感しました」

さらにMac向け製品については、機能面だけではなくUIについてもMacらしさを損なわないように配慮しているという。

「たとえば、従来のNAS製品はMacを使い慣れた人から見ればユーザフレンドリーとは呼べない製品が多かったように思われます。今はMacやiPhone、iPadなどマルチデバイスの時代ですから、WDではユーザのスキルや用途に関わらず誰にでも使い勝手がよく家庭に溶け込むようなUIを目指しています。そのため、我々は従来のNASではなく、現在米国で発売している製品を“パーソナルクラウド”と呼んでいます」

SSDが普及するなどストレージをめぐる状況も大きく変化しているが、そのこと自体は必ずしも脅威とは捉えていないそうだ。

「内蔵ストレージにSSDが増えているのは事実ですが、同時に世界全体で取り扱うデジタルデータの量も増えています。データセンターやパーソナルクラウド、監視システムのソリューションなど、大容量なHDDを必要とするシーンはますます増えてきています」

ユーザフレンドリーなMac向けの外付けHDDからデジタル時代のインフラを支えるバックボーンまでストレージソリューションのリーディングカンパニーであるWDの動向に今後も目が離せない。

 

簡単に持ち運べるMac用HDD

 

Mac愛好家の安田さんがおすすめするポータブルHDDが「マイパスポート(My Passport for Mac)」だ。「学生さんなど初めてMacを買われた方におすすめしたいのがこのモデルです。500GBから2TBまで揃っているのでMac内蔵SSDの容量を補完できますし、写真や書類などの保存に最適です。Mac用にフォーマットしてあるので買ったらすぐ使えるので手間もかかりません」。

 

パーソナルクラウドが間もなく登場

WDでは、すでに米国でNAS(ネットワーク接続ストレージ)を超えるソリューションとしてパーソナルクラウド製品を展開している。Macをはじめ、iPhoneやiPadなどから自由にデータを利用できる注目のジャンルだ。「国内でもMac向けの製品を遠くないうちにお届けしたいと考えています。実際に使ってみて便利ですし、一家に1台パーソナルクラウドを持つ時代を実現したいです」。

 

クリエイティブプロの御用達

サンダーボルト接続の外付けHDDの分野では圧倒的なシェアを持つWD。中でも映像や音楽などクリエイティブプロに支持されるのが「マイパスポート・プロ(My Passport Pro)」。2TBと4TBのモデルがあり、2台のHDDをRAID接続することで速度と容量、信頼性を兼ね備えている。AC電源不要。

 

写真好き注目のワイヤレスモデル

カメラと写真の総合展示会「CP+ 2015」で参考出品されたのが、SDカードスロットを搭載したワイヤレスポータブルHDD「My Passport Wireless」だ。外出先でもその場で写真をバックアップできるなど、カメラ好きには気になる存在で発売が待ち遠しい。

 

安田さんの鞄の中!

 

?安田さんの持ち物はとてもシンプル。メインで使っているのは2011年モデルのMacBookプロだが、搭載しているのはSSDとHDDのハイブリッドである「WD Black2 Dual Drive」を自分でフュージョンドライブ化したものだ。「残念ながらこの製品は終息してしまいましたが、容量とスピードを両立できたので数年前のMacでも快適に使えています」。

 

?仕事で普段使っているiPhone 5sとiPadミニは、いずれもシルバーモデルで統一されている。「Macに合わせて周辺デバイスもシルバーのものを揃えたくなってしまうんです。Macユーザであれば、この気持ちはわかっていただけるのではないでしょうか(笑)」。

 

?写真などの個人的なデータは「My Passport for Mac」で持ち運んでいる。メモ帳はロディア、ボールペンはフリクションタイプのもので、書き味にこだわって0.5ミリのものを0.3ミリに入れ替えて使っている。「外付けハードディスクもやはりMac用のほうが安心して使えます」。

 

【取材後記】
WDの事業は、パーソナル向けHDD製品、NAS製品、「パープル」シリーズなど監視カメラ向け製品に大別できる。その中でも大幅に伸びているのが監視カメラ用製品で、上海万博や北京オリンピック以降は中国で需要が高まっているという。

 

【取材後記】
WDのキャンペーンではおなじみの「カウガール」。内蔵HDD製品のイメージカラーに合わせた西部劇風の衣装選定にも安田さんが関わっている。「秋葉原で展開するからといって安易に萌え系の衣装にしないなど、こだわりを持っています」。