グリーンハウスで働く菅さんを訪ねる|MacFan

アラカルト アップルのミカタ

バラエティに富んだ製品でデジタルライフを豊かにする

グリーンハウスで働く菅さんを訪ねる

文●栗原亮

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

菅章郎 (かん・あきお)

グリーンハウス商品戦略本部マーケティング部デザイン課係長。専門学校卒業後、デザイン事務所でプロダクトデザインとグラフィックデザインを担当し8年前に同社に中途入社。以来商品の企画立案からデザイン・設計、パッケージや広告販促物の制作など商品開発のプロセスに幅広く関わる。最近は写真が趣味で、一眼カメラで近所を撮影している。「ちょっと気になるデザインのものがあると、仕事柄つい撮ってしまいますね(笑)」。

 

コンピュータ製造メーカーから始まったアップルは常に時代の先を読み、音楽プレーヤのiPod、携帯電話を再発明したiPhone、リビングのテレビを拡張するアップルTVなどをリリースし、私たちのデジタルライフを豊かなものにしてきた。そこには、人々のライフスタイルをデジタル製品によって充実した意義あるものにしたいという強い想いがある。コンピュータ周辺機器、デジタルAV機器などの開発・製造・販売を手掛けるグリーンハウスもまた、そうした“強い想い”をモットーに事業を展開してきた会社だ。

同社の歴史は、1991年に遡る。メモリがとても高価だった当時、これをより安く多くの人たちに提供したいという創業メンバーの想いから、Mac専用メモリの製造・販売会社として設立された。その後、メモリ事業はワークステーション用、ウィンドウズ用と広がっていく。古くからのMacユーザからすると、同社に対してこの時代の印象を強く持っているかもしれない。

 

 

 

だが、グリーンハウスの事業はメモリやコンピュータ周辺機器だけにとどまり続けることはなく、現在では従来の製品開発のノウハウを活かして、デジタル家電やAV機器、無線機器の開発やノベルティなどのセールスプロモーションなど多岐にわたっている。特に2年ほど前から開始したキッチン用品を販売する事業では、ソーダマシンやノンオイルフライヤー、ハンディビアサーバなど異彩を放つヒット製品を送り出し、注目を集めている。

菅章郎さんは、こうしたグリーンハウスの事業が中核のコンピュータ機器からデジタルライフへ大きく展開していく時期に、同社に入社した。現在同社ではプロダクトデザインやパッケージデザイン、雑誌広告、交通広告などを担当し、企画の立案から設計、パッケージや販促アイテムのデザインまで行っている。

 

 

 

「私が入社したときには、まだデザインを専門とする部署は社内になく、マーケティング課としての配属でした。数年後にマーケティング課が部に拡張してWEBデザインと販売企画、デザインの課が登場したのです。もちろんそれ以前からデザインに関することはオールマイティにやってきたのですが、取引先から見るとマーケティングの肩書きでデザイナーが来ることに違和感を覚えるのだそうです」

現在3名のデザイン課だが、内製のデザイン部門を独立したことで同社オリジナルの企画や設計によるユニークな製品が増加し、同社の認知度もこれまでより徐々に高まりつつあるという。

「商品開発にはさまざまなパターンがあって、委託している中国メーカーの既存の金型を使って短期間低価格で仕上げることもあれば、キャラクター製品など、すでにある製品にプラスアルファでデザインを追加することもあります。また、ゼロベースで企画設計している製品はこれから弊社製品の中心となっていくので、今一番力を入れています。製品の性格づけやターゲット選定のレベルから実際の製品のデザインや色、パッケージから販促アイテムまで作ったりと、やりがいのある仕事で楽しいです」

 

 

 

プロダクトデザイナーとして、アップル製品について何か思うことはあるのだろうか。

「デザイン事務所にいた頃はもちろん、学生時代からMacを使っていて、あまりにも身近な存在すぎて客観的に捉えたことはあまりないかもしれません。それでもプロダクトデザインの観点から感じるのは、ネジ1本にいたるまでデザイナーがまったく妥協していないのだな、というのは伝わります。

自分の仕事を振り返ると、確かにアップルと違って予算の制約や技術的な都合、販売上の方針などで当初の設計から変更を余儀なくされることもあります。ですが、表面的なデザインが変わっても製品の核となるコンセプトさえ揺るがなければ、妥協したとまではいえないのではないでしょうか。また、その変更によってより多くの人に製品が行き渡り、手頃な価格で目的を達成できるのであれば、それも1つの成功したプロダクトデザインだと思います。どんな製品であろうとも、“使いたい人”と“使うもの”の間をつないでいくデザインという作業の本質には変わりありません」

たとえ制約があったとしても、その中でベストを尽くし常に自分自身が使いたいものを作り上げるという菅さんのデザインポリシーは揺るがぬユーザ視点に立っている点において、とてもアップル的だ。

グリーンハウスという会社もまたデジタル機器の総合メーカーとして、創業以来ユーザのライフスタイルを豊かなものとするためにバラエティに富んだ製品を生み出し続けてきた。ここにもまた、アップルとの共通性があるように思えてならない。

 

デジタルライフを支える豊富な製品群

グリーンハウスといえばパソコン周辺機器のイメージが強いだろう。ケーブルやメモリ、ネットワーク機器や液晶ディスプレイや携帯オーディオプレーヤなど取り扱い製品は多岐に渡る。家庭やオフィスのどこかでグリーンハウス製品を見かけたことがあるという人も多いだろう。

 

アップルユーザをサポートするグッズ

USBメモリやカードリーダ/ライタ、USBハブなどMac周りで使えるお馴染みのアイテムも揃う。ライトニングケーブルやAC充電器などiOSデバイス関連グッズも人気がある。iPhone 6プラスに対応する防水ケースなど、新しい利用シーンを提案するユニークなアイテムもある。

 

菅さんがデザインに関わったキッチン製品

デジタルグッズの製造・販売ノウハウを活用し、ソーダマシンなどのキッチン用品にも事業を拡大し市場の好評を博している。写真はこれからの季節に向けて準備中の缶ビール用ハンディビアサーバ(中)とスタンド型ビアサーバ(右)。写真左のマドラー型のビアフォーマーは菅さんが企画/デザインを担当した。「グラスに注いだビールに入れてボタンを押すだけでクリーミーな泡が生まれます。不必要なものを削ぎ落としていったらこの形になりました」。

 

デジタルAV機器も扱う

コンピュータサプライだけでなく、家電やマルチメディア機器の製造・販売まで行っているラインアップの幅広さがグリーンハウス最大の特徴ともいえる。いずれも自分たちの暮らしに役立つもの、ピンポイントでも不可欠なものを作っていくうちに、このような事業形態になっていったという。

 

菅さんの鞄の中!

 

❶個人用のiPhone 5sシルバーとiPadエア。「実はiPadは最近買ったばかりで、まだそれほど使い込んでいません。アイデアのスケッチをするのに便利な手描きアプリがないか探しているところです。自分の手に馴染むタッチペンもあったらいいなと思っていますが、もしなかったら自分で企画して設計するかもしれません(笑)」。

 

❷打ち合わせに使うメモとして使っているノートと名刺入れ。実用性重視でブランドものなどではないとのことだが、質感や使い勝手の良いものを選ぶようにしているとのこと。ペンも書き心地を重視しており、製品のスケッチを書くときには0.9ミリ芯のステッドラーのシャープペンシルも利用する。

 

❸持ち歩いているUSBメモリ、携帯オーディオプレーヤとイヤフォン。いずれも自社製品のもので、USBメモリは自分でデザインしたものを使っている。「基本的に自分が使いたいものを作ってますので、使い勝手も含めて自分で確認しています。イヤフォンはバランスド・アーマチュア型で、オーディオメーカーではないけど音質が比較的良いと評価をいただいたこともあります」。

 

【取材後記】
菅さんが思い入れのあるデザインの1つに、「バーバパパ」キャラクターの加湿器がある。「ロゴデザインも含め、かなり自由にデザインさせていただきました。何度も描いているおかげで、自分でもバーバパパのキャラクターがフリーハンドで描けるようになりました(笑)」。

 

【取材後記】
ここでは紹介しきれないが、店舗やオフィス、病院などに展開可能な無線モジュールやデジタルサイネージ、企業のノベルティグッズなど業務用のソリューションも展開している。同社の総合カタログを読むと意外な発見がある。