ランチはiPhoneで注文、並ばずに受け取る|MacFan

教育・医療・Biz iOS導入事例

 

ランチはiPhoneで注文、並ばずに受け取る

文●牧野武文

行列は、お客にとってもお店側とってもできれば避けたいこと。iPhoneから注文し、並ばずに商品を受け取れる「オーダー(O:der)」は、お客の時間を節約し、お店のオペレーション効率も高める注目の飲食店向けサービスだ。

 

ランチの時間が来たらiPhoneを取り出してさっと注文と決済、あとは来店して商品を受け取るだけで済むのが、ショーケース・ギグの「オーダー」だ。

 

 

O:der

【作者】Showcase Gig Inc.
【価格】無料
【カテゴリ】App Store>ライフスタイル

 

忙しいランチタイムに使える

現代人は、忙しい。ランチは近くのカフェでコーヒーとサンドを買い、さくっと済ませたいときがある。ところが昼食時の飲食店はどこも長い行列で、10分以上待たされることも少なくない。もし行列を尻目に、並ぶことなくランチを手にできれば…。それが実は可能なのだ。最近、都心部のカフェなどで「O:der」と書かれたサインを見かけることがある。そのお店では利用者がすっと入ってきて、店頭カウンターで商品を受け取って帰っていく。時間にして15秒程度だ。

これには、ショーケース・ギグ(Show case Gig)社の「オーダー(O:der)」というサービスが利用されている。利用者はiPhoneなどのスマートフォンから無料アプリ「O:der」を使って食べ物を注文。登録済みのクレジットカードでオンライン決済を済ませると注文がお店側に伝わり、受取時間に合わせて調理が開始される。そして利用者が店に着いたら店頭カウンターですぐに商品を受け取れる。そのまま店内で食べてもいいし、事前にテイクアウトを指定してオフィスに戻って、あるいは公園などで食べてもいい。

ただし、これだけの話だと、IT系サービスに詳しいオフィスワーカーの方は「またか」という感想を持つかもしれない。事前予約・事前決済のシステムは、似たようなものが登場しては消えていくということを繰り返しているからだ。

その理由は明らかだ。システムを導入すると、店舗側の負担が大きく増えてしまう。例えば、事前予約を受けるとそれを通常のラインとは別の厨房に連絡し、厨房は通常のラインとは別に調理をしなければならないことがある。また、このシステムのためだけに専用のパソコンや通信機器を用意し、使い方を覚えなければならないという手間もある。ただでさえ、てんてこ舞いのランチ時にそうした負担は厳しい。大きな集客効果が見込めるかも不透明な場合、結局店舗側はこのようなサービスを停止してしまう。

「私たちは店舗の負担を減らすことを目標にオーダーを開発しました。一部の店舗ですと、従来の予約システムと比べてオペレーション効率は2倍になりました」(ショーケース・ギグ代表取締役・新田剛史氏)。つまり、半分の時間、半分の人手で商品が用意できるということだ。

その秘密は、店舗オペレーションを研究し尽くしたアプリの仕組みにある。店舗側には専用アプリを入れたiPadが用意されている。店舗の規模やオペレーション方式にもよるが、一般的なカフェ程度では接客スタッフの横に1台、厨房に1台置くというのが基本だ。利用者のスマートフォンから注文が入ると、その情報がそれぞれのiPadに表示される。接客スタッフは、店内かテイクアウトかに応じて必要なトレーやバッグを用意する。厨房では注文に応じてすぐに調理を開始する。

従来の一般的なシステムでは、事前注文を受けたら、それを別枠として処理しなければならなかった。誰かが流れをコントロールしなければ、ランチ時のようなピーク時にはオペレーションが破綻してしまう。しかし、オーダーでは、接客スタッフ、厨房スタッフそれぞれが常に見えるところに設置されたiPadを利用して、通常のオペレーションと並行して作業を行うことができるのだ。

 

【店】
the 3rd Burger アークヒルズサウスタワー店(http://www.the3rdburger.com)は、「体が喜ぶハンバーガー」を意識しており、ブロック肉は一切解凍せず、店舗でミンチにして整形している。ショーケース・ギグのオーダーに対応するショップは東京都内中心に100店舗ほどある。

 

アイビーコンを上手に活用

さらに、ショーケース・ギグは6月に新機能「スマートオーダー」をリリースした。従来のオーダーの基本システムに、iOS 7から搭載された「アイビーコン(iBeacon)」を採り入れたもので、東京・六本木にある「the 3rd Burger アークヒルズサウスタワー店」に初導入されている。店頭にアプリックス社のビーコン端末を設置することで、スマートフォンから注文した利用者が来店すると店舗側のiPadに「来店中」と表示する。スマートオーダー専用受け取りカウンターの場所がわからなかったり、店内の席に座って商品の受け取りを待っている人もいるだろう。こうした人に、店舗側から商品が準備できていることを伝えられる。

また、アイビーコンはポイントカードの発行にも利用される。利用者が店頭のビーコン端末にiPhoneをかざすだけで、アプリ内にポイントが付与される仕組みだ。アイビーコンは10センチ程度の近接処理には向かないとされてきたが、それを可能にしたのは同社が初だ。

「ビーコン端末の電波は10~20メートル飛ぶように設計されているため、そのままでは店頭に近づいた利用者の持つすべてのiPhoneにポイントが付与されてしまいます。技術的な詳細はお話できませんが、考え方としては電波の出力を抑えて、近くにしか電波が飛ばないようにしたのです」

一般的にお客にプッシュ情報を送るというのはデリケートな問題がつきまとう。なぜなら「やりすぎると迷惑がられる」からだ。その点、スマートオーダーは慎重で、クーポンを無分別に垂れ流すのではなく、店舗側と顧客側の視点に立った使い方を提案している。欲しい人へ、利便性の高い形でクーポンを手間なく付与できるからだ。また、店舗側のiPadアプリにはCRM(顧客管理)機能も搭載しており、利用者の購入履歴や来店回数、プロフィールに応じてピンポイントで情報を個別配信することができる。

待たされる現場で導入拡大

ショーケース・ギグは、カフェや飲食店などを中心にスマートオーダーを拡充していく予定だ。

「こうしたユーザ体験が適しているのは、事前に利用者が注文を決められる、予約をするという業種です。ランチを中心としたカフェや飲食店のみならず、例えばエステやヘアサロンなども対象です。また、予約していても待たされることがある病院でも導入してほしいですね」

スマートオーダーが従来の事前予約・事前決済システムと異なるのは、実際の店舗でのオペレーション、顧客の要望というものをよく研究して作り込まれている点だ。そのため、顧客にとっては時間の節約と快適さ、店舗側にはオペレーション効率と集客のアップという双方にメリットが生まれている。

従来のこの手のシステムは、顧客と店舗がリアルに要求していることは二の次になり、スマートフォンや新しい技術を使ったという話題性だけで、集客力を上げようというものが多かった。しかし、それは長続きはしない。今どき、「iPhoneやiPadを使った」だけでは珍しくない。スマートオーダーは、そのような低い次元から抜け出し、ランチシーンを快適にするためにはどうしたらいいかを追求している。昼時に飲食店で行列をする。そんな光景はあと数年すると、昔話の1つになってしまうかもしれない。

 

 

アプリを起動するとお店の一覧が表示される。好みのお店を選んだら、あとは食べ物を注文するだけ。決済は、登録してあるクレジットカードが基本だが、店頭で現金払いも可能だ。

 

 

注文が入ると、店舗側のiPadアプリにリアルタイムで注文が表示される。接客スタッフ、調理スタッフはそれぞれのiPadでの表示を見て、通常作業と並行して作業を開始。商品ができたら利用者にプッシュ通知を行う。

 

 

プッシュ通知が届いたら、あとはお店に向かって商品を受け取るだけ。アプリでは時間を指定して受け取ることも可能だ。

 

 

ビーコン端末にiPhoneをかざすと、クーポンやポイントが入手できる。

 

 

店舗側はスマートオーダー利用者の性別や年齢層、利用場所などの属性を選んで、クーポンやセール情報などのさまざまなプッシュ通知を行える。

 

【センサ】
O:derのアプリを使えば、何を食べようかとレジの前であれこれとメニューを見ながら悩むこともなくなる。後ろに行列ができていると、気を遣ってメニューをじっくり眺められない場合もあるので、食べたいものをじっくりと選ぶことができる。