野呂エイシロウの「ケチの美学」第69回|MacFan

アラカルト ケチの美学

野呂エイシロウの「ケチの美学」第69回

文●野呂エイシロウ

人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。

コンプレックスを捨てる

自分が抱えるコンプレックスを数えてみた。すると、200個以上もあることがわかった。太っている、低学歴、リッチでない、自宅は賃貸(これには理由があるが)などなど、山のようにある。

そう考えているうちに、「だから何なんだ?」という考えに辿り着いた。そう、コンプレックスをいくら数えても、考えているだけでは解消できない。

太っている自分が嫌なら、痩せるしかない。容姿が気になるなら、整形するしかない。学歴がコンプレックスなら、これから予備校に行って、東大に入学するしかない。よくよく考えてみると、ほとんどのコンプレックスは、自分次第で解決できるのだ。

努力でなんとかなることもあるが、ボクからすると、コンプレックスについて考えても仕方がない。だから、バッサリ捨てる。最近、身の回りのモノを大量に捨てた。ボクは今、自分の持っているモノを3分の1にしようと考えている。

日本代表の躍進で盛り上がりを見せたサッカーW杯を、ボクは見なかった。仕事のときに、日本代表の勝敗で心を乱している人を結構見た。「日本が勝った」=「自分が努力して勝った」と勘違いしている人も多かった。

でも、もちろん、そんなことはない。テレビ画面で見ていただけである。それでも自分ごとになっていた。勝って気分が高揚して物事がよい方向に行っているならいいが、負けたとき一緒に落ち込んでいるのにはびっくりした。

これは、好きな芸能人が結婚して、翌日落ち込んでいる人と一緒だろう。今から30年ほど前、ボクもそんな1人だった。

当時好きだった芸能人が結婚したとき、落ち込んで当日の仕事をすべてサボってしまった。多分20万円ぐらい損しただろうと思う。まぁ、その芸能人と仕事がしたいがために懸命に放送作家になったという面もあったので、落ち込んで当然である。

だが、今考えてみると「自分の人生と関係ないじゃん」と思える。そんなことに心を乱すのは、実にもったいないのだ。

抱えているコンプレックスも、日本が試合に負けたことも、好きな芸能人が結婚したことも、じっくり考えたところで、1ミリも解決しない。だから、バッサリ捨てるのだ。昨日の話も捨てる。時間は未来にしか進んでいない。過去の話を引きずると、未来に影響してしまう。

コンプレックスがあるせいで、ブレーキを踏んでしまっている気がする。アクセルを全開で未来へ進むために、コンプレックスはすべて捨てるのだ。

 

新幹線や飛行機で移動するときは、AirPods Maxを使用。ノイズが消え、雑念を捨てられる。

 

 

EishiroNoro

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。