野呂エイシロウの「ケチの美学」第40回|MacFan

アラカルト ケチの美学

野呂エイシロウの「ケチの美学」第40回

文●野呂エイシロウ

人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。

無理しない呼吸

新型コロナで、生活が変わった。価値観も変わった。毎晩、外食をして飲み歩いていたボクの生活はガラリと様変わりして、接待交際費は10分の1以下になった。以前は、朝食もホテル、ランチも会食だったので、食生活も大きく変化した。タクシーで、分単位で移動する生活もなくなった。タクシー代も10分の1以下に減っていると思う。

そして気がつけば、心に余裕がある。体にも、指先にも。今も自宅のデスクで新宿の高層ビルの景色を眺めながらキーボードを打っている。以前ならタクシーの中で、慌てて書いていた原稿である。

心臓のドキドキ感が減った気がする。それは、トキメキが減ったという意味ではない。「次のミーティングに間に合うか?」「ボク大丈夫か?」というドキドキ感である。常にタクシーの中でそんな心持ちになっていた。「あと何分で着きますか?」という電話が鳴り響く毎日だった。

常に心臓がドキドキだった。でも、今は違う。朝にティーパックではあるが、ハーブティを飲む時間が生まれた。プレゼントでいただいたものだが、香りを楽しむ時間が生まれた。

会議の数は減らないが、移動時間がなくなった。Zoom会議である。睡眠時間も増えている。そのうち、会議のことを「Zoomする?」と言う時代が到来するかもしれない。

以前は、呼吸を落ち着かせる暇もなかったのだが、今は1日に何度も深呼吸をする。アップルウォッチのマインドフルネスが大活躍だ。それに、何気に寝転がる回数が増えた。3分程度寝転がることが毎日4、5回はある。気持ちがとても安らぐ。

土日には、湖へ行くようになった。のんびり本を読んでいる。iPadプロで、ビジネス書以外を読んでいる。以前は急いでビジネス書を高速でインプットしていたが、今は歴史ものの本を、風の音と波の音を聞きながらゆっくり読み進める。

静かだ。

動いている東京は音がする。幹線道路のノイズが以前よりも気になる。週に何度かは、無音にしたいと思うようになった。これもコロナの影響だろう。エアポッズ・プロのノイズキャンセルで無音状態になるが、自然の静けさとはまた違う。なぜ、自然を求めるようになったのか? よくわからないが、自然に、自然の中に身を多く機会が増えた。

盆栽を選んでもらって、突然買った。懸命に水をやったりして世話をしているが、今ひとつ苔に元気がない。以前のボクなら、この時点で世話を放棄して捨てているだろう。

コロナで僕自身は大きく変わった。それが自然の成り行きというものなのだろうか。ひとつだけ言えるのは、僕自身が変わったことで、今日という瞬間がさらに楽しくなった。

 

 

最近、湖のほとりでのんびり読書することが増えた。

 

 

EishiroNoro

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。