常に進化するAppleの法人・文教プログラム|MacFan

教育・医療・Biz iOS導入事例

常に進化するAppleの法人・文教プログラム

文●編集部

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

Appleは自社製品を企業や教育機関で利用しやすいように、さまざまな専用プログラムを用意している。アプリ一括購入を可能とするVPP、キッティング作業を簡便化するDEPなどがそうだが、新たな企業/教育機関向けポータルの登場で、VPPやDEPに変化が起きている。

 

充実したプログラムの恩恵

iPhoneやiPad、Mac、そしてアップルTV(Apple TV)といったアップル製品が、コンシューマーの枠を飛び越えて今では多くの企業や教育機関で使われており、その数も年々増加している。その背景にあるのは、アップル製品がビジネスや教育にも使いやすいようデザインされていることに加え、アップルが企業や教育機関で導入しやすいように、さまざまなプログラムを用意し、改善してきたことが挙げられる。

個人がプライベートで1台を購入して利用するのとは異なり、企業や教育機関では大量なデバイスの導入が前提となるうえ、それらを従業員や教職員、児童・生徒にいかに配付して、管理・運用を行うかが、組織においてデバイス活用を成功に導くうえでもっとも重要となる。デバイスの利用者だけではなく、デバイスを導入・配付・管理・運用する人にとっても、アップルプラットフォームは使いやすいものでなければならない。現在までアップル製品が広がり続けてきている背景には、他のプラットフォームと比較しても、それが実現できているからと言えそうだ。

今回は、アップルが法人・教育機関向けに用意しているプログラムに関して、昨今いくつか大きな変更が施されたので、それについて説明したいと思う。

 

 

Apple製品を組織で上手に活用するためには、企業はApple Business Manager、教育機関はApple School Managerに登録しよう。 [URL]https://school.apple.com(写真上) [URL]https://business.apple.com/(写真下)

 

 

VPPはASM、ABMに集約

まず、「VPP(Volume Purchase Program)」だ。これは、企業や教育機関において利用するアプリを一括購入して、それぞれのデバイスに割り振ることができる仕組み。導入が小規模であれば利用者個人のアップルID(Apple ID)を用いてアプリを利用者に購入してもらうことも可能だが、その場合はアプリが利用者のアップルIDに紐付いてしまい、組織を離れた際に問題となってしまう。また、購入費用をどのように決済するかも難しい問題だ。

そのため、特にデバイスを大量導入する場合は、管理・運用の面を考えて管理者が一括で行うほうが好ましい。それを叶えるのがVPPである。これまでVPPは企業向けと教育機関向けに2種類のポータルサイトが用意されており、登録・審査を経て利用することができた。

しかし、このVPPは、2020年5月1日をもって終了することがアップルのWEBサイトで明らかになっている。だが、これはマイナスな話ではない。VPPが従来担っていた役割は終わりを告げ、同様の仕組みがアップルビジネスマネージャー(ABM=Apple Business Manager)、およびアップルスクールマネージャー(ASM=Apple School Manager)に用意されている。

ABMやASMはアップルが比較的最近導入した組織のIT管理者のためのポータルサイトだ。従来、組織でアップルデバイスを導入するにはアップルデプロイメントプログラム(ADP=Apple Deployment Program)へ加入して組織登録をする必要があったが、現在その役割は、企業はABM、教育機関はASMから行うようにシフトしている。また、ASMやABMはWEBサイトから手軽にアクセスでき、組織の登録作業だけでなく、モバイルデバイス管理 (MDM)ソリューションへの自動デバイス登録の設定、コンテンツの購入、組織内で利用するアップルIDの発行、ユーザアカウントや役割の設定なども可能。管理者にとって実に使いやすいポータルサイトとなっている。これまでのVPPによるコンテンツ購入と同じことは、ABM/ASMの[Appとブック]で可能となっており、ABMやASMへ登録さえすればすぐに利用可能だ。

なお、ADPもVPP同様に2020年5月1日でサービスが終了する。現在も同プログラムおよびVPPを利用している場合は、ABMやASMへアップグレードするようアップルは促している。

 

 

従来利用されていたVPPは、ABM/ASMの[Appとブック]から利用可能だ。また、Device Enrollment対応端末もABM/ASMの[設定]→[デバイス管理の設定]から可能となっている。

 

 

旧来のVPPのWEBサイトはまだ残っており利用できるが、2020年5月1日に終了することがアナウンスされている。これまで利用していた人は、ABMやASMへアップグレードする必要がある。 [URL]https://support.apple.com/ja-jp/HT209617

 

 

DEPとはもう呼ばない

次に、「DEP」(Device Enrollment Program)」だ。これは、アップル製品を導入する際のキッティング作業(初期設定作業)を簡便化するための仕組みで、日本国内では2014年11月から利用が開始された。

DEPを利用することで何が便利になるのか。具体的には、管理者が利用者へデバイスを渡す前に箱を空け、キッティングする手間と時間を大幅に削減できる。DEPに対応した販売店からアップルデバイスを購入し、ASMやABMでDEP端末を登録、そしてMDMとDEP端末を紐付けておけばデバイスを開封することなく利用者へ手渡すだけでいい。利用者がデバイスの電源を入れてネットワークへ接続した瞬間に、MDMで初期設定した各種設定がワイヤレスで適用されるので、物理端末に一切触れることなく、MDMの管理下に置くことが可能だ。

従来はこのDEPもADPへ登録して設定する必要があったが、現在はABM/ASMから登録が可能だ。また、それに併せるように「DEP」という言葉自体をアップルは利用しない方向へと向かっている。代わりに使われるのは、デバイスエンロールメント(Device Enrollment)だ。直訳すると「自動登録」が適切だろうか。DEPが提供してきた仕組み自体は現在も継続して利用できるが、ADPの廃止に伴って、プログラム名としては終了。ABMやASMから利用できる「デバイスエンロールメント」という機能になったという見方が正しいだろう。

まとめると、VPP、そしてDEPという言葉自体は使われなくなる傾向に向かっているが、それは従来のADPが、より利便性の高いABMやASMへ取って変わっているからであり、しかもそれぞれの機能は継続して利用できるため、利用者側が快くアジャストしていくべきだろう。

 

アップルケアがお安く

そのほかにも細かな変更点がある。まずアップルのサポートプログラムである「アップルケア(AppleCare)」に関してだ。同プログラムにはヘルプデスク向けの「アップルケアヘルプデスクサポート」、IT部門向けの「アップルケアOSサポート」、エンタープライズ向けの「アップルケアエンタープライズサポート」が存在するが、このうちアップルヘルプデスクサポートの価格が従来より値下げされた。従来は22万8000円(税別)だったが、それが現在は5万9800円(税別)となっている。アップルヘルプデスクサポートは、登録した2人の担当者に対し、ハードウェアとソフトウェアの診断とトラブルシューティング、アップル製品を使用したソリューションに発生した問題の切り分けなどのサポートを問い合わせ件数の制限なしで提供するもの。iPadやiPhone、Macといったハードウェアのみならず、OSやソフトウェアなどもその対象となる。企業のIT管理者など、リソースをより効率的に管理し、サポート応答時間を短縮し、トレーニングコストを削減したいならばお求めやすくなっているのでこの機会に利用してみてはどうだろうか。

さらに教育機関向けには、アップル製品を活用している教育者を支援する無料のラーニングプログラム「アップルティーチャー(Apple Teacher)」、アップル製品を利活用する教育機関や教育者の認定プログラム「アップルディスティングイシュトスクール/エデュケーター(Apple Distinguished School/Educator)等に加え、最近では「アップルプロフェッショナルラーニング基礎インストラクター」のサービスも充実させている。これはアップルの認定を受けた組織が、アップル製品を授業等で最大限活用するために、教育者のスキル向上を手助けするもの。現在、ソフトバンクC&S、NTTラーニングシステムズ、カサレアル、教育産業という4社がサービスパートナーとしてアップルのWEBサイトに公開されている。

 

 

Appleプロフェッショナルラーニング基礎インストラクターとして、現在、4社のサービスパートナーが掲載されている。 [URL]https://www.apple.com/jp/education/apple-professional-   learning/

 

 

 

AppleCare Help Desk Supportは、22万8000円(税別)から5万9800円(税別)と大幅に値下げされた。 [URL]https://www.apple.com/jp/support/professional/help-desks/