『アルフォス』『ミネルバトンサーガ』『サムライスピリッツ零』の森田和郎さん


時代を彩った名機たち

すでに「BOOKNAVI+ブログ」内「週刊将棋&将棋世界」のエントリー「森田和郎さんを悼む」をお読みになられた方もいらっしゃるかとは思いますが、ゲーム業界に大きな功績を残された森田和郎さんが昨年7月にお亡くなりになられました。

こちらのエントリーではAmazon Kindleストア専売の電子書籍『時代を彩った名機たち』の中に登場したような、1980年代パソコンのファン視点から、森田さんの偉業を振り返ってみたいと思います。

 

週刊将棋6月5日号と将棋世界7月号に掲載された際、森田さんの紹介は「コンピュータ将棋のパイオニア」でした。でも、1980年代パソコンのファンから見た森田さんは、エニックス(現スクウェア・エニックス)主催の「第1回ゲーム・ホビープログラムコンテスト」優勝者であり、1980年代パソコンゲームの先駆者でした。

このコンテスト、どのくらい凄かったかと言いますと、森田さん以外の受賞者は中村光一さん(『ドラゴンクエスト』シリーズのプログラマーで、現スパイク・チュンソフト代表取締役会長)と、堀井雄二さん(『ドラゴンクエスト』シリーズの企画者)だったと聞けば、レベルの高さは伝わるはず。

※森田さんの受賞作『森田のバトルフィールド』は後の『大戦略』や『ファイアーエムブレム』『スーパーロボット大戦』などの原型とも言えるゲーム内容でしたが、初代『大戦略』が1985年発売なのに対し、『森田のバトルフィールド』が1982年発売だったことを考えると、どれだけ時代を先取っていたかがわかるはず。

 

こうして名を馳せた森田さん。続編もシミュレーションゲームになると思いきや、新作はゲームセンター用ゲーム『ゼビウス』を模した縦スクロールのシューティングゲーム『アルフォス』。当時PC-8801と言えば「家庭用パソコン」としては最高峰でも、ゲームセンター用の専用機と較べると圧倒的に非力で、まさか自宅で『ゼビウス』(に近いもの)が遊べるなどとは、誰も予想できませんでした。この技術は後にパソコンゲームメーカー各社が取り入れ、結果的にPC-8801用ゲームの水準を大きく引き上げる結果となりました。

※『アルフォス』がエポックメイキングだったことは、もう一つ。ゲームセンター用ゲームなどの模倣は当たり前だったパソコンゲーム業界において、原作ゲームの発売メーカーにライセンスの許諾を得て、コピーライト表記入りで発売されたこと。

 

その後、森田さんは『森田和郎の将棋』でコンピュータ将棋界に名を轟かせる一方で、ファミコン用RPG『ミネルバトンサーガ ラゴンの復活』や、ファミコン用シミュレーションゲーム『ジャストブリード』など、ファミコンゲームの開発にも携わりました。

 

森田さんの驚くべきところは、『アルフォス』開発時にはソフトハウス(株)ランダムハウスを起業し、代表取締役に就任しながら、「ドリームライブラリ」(セガDreamcast向けのメガドライブ&PCエンジン用ソフトのネット配信システム)や、NEO・GEO用の対戦格闘ゲーム『サムライスピリッツ零』などでは自らプログラムを担当されるなど、生涯プログラマであったところ。PC-8801などが「時代を彩った名機」なら、森田さんは「ゲーム業界を彩った偉人」と呼んでも過言ではないでしょう。

 

いちゲーム愛好家として謹んでお悔やみ申し上げると共に、たくさんの感謝の気持ちを贈りたいと思います。

閲覧環境:
Kindle for iPhone(iPhone/iPad/iPod touch用)、
Kindle for Android(Android携帯/タブレット用)、
Kindle Fire/HD/HD 8.9Kindle Paperwhite

カテゴリ: 既刊
タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , ,