羽生善治竜王 『AI時代をゆく』1/全2回 ~将棋世界Special愛蔵版『永世七冠 羽生善治のすべて』より|将棋情報局

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羽生善治竜王 『AI時代をゆく』1/全2回 ~将棋世界Special愛蔵版『永世七冠 羽生善治のすべて』より

2/27発売! 将棋世界Special愛蔵版『永世七冠 羽生善治のすべて』より、元将棋世界編集長で作家の大崎善生氏による羽生永世七冠へのインタビューの一部を2回に分けてご紹介します。

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聞き手:大崎善生(おおさき よしお)=写真左。1957年、北海道札幌市の生まれ。作家。『将棋世界』編集長を経て2000年『聖の青春』(角川文庫・講談社文庫)で第13回新潮学芸賞。01年『将棋の子』(講談社文庫)で第23回講談社ノンフィクション賞。09年『パイロットフィッシュ』(角川書店)で第23回吉川英治文学新人賞。最新刊に『いつかの夏―名古屋闇サイト殺人事件―』(角川書店)がある。『将棋世界』に藤井聡太五段のドキュメント「神を追いつめた少年」を連載

―― 永世七冠達成おめでとうございます。羽生さんが七冠を取った時(1996年)は、私は『将棋世界』の編集長で、都内のホテルでインタビューをしました。こうしてまた別冊に関わることができて光栄に思っています。当時と比べて今回の達成はいかがですか。

羽生「もう20年以上経っているので、前のことは忘れていることもあるんですけど、今回のほうが何となく実感というかリアリティみたいなものはあります。ただ、今はまだ目まぐるしい日々が続いているので(笑)。」

―― 今回は竜王戦だけ戦えばよかったから、ゴールポストが動かないというのはありますよね。前の七冠は、タイトルを獲られてしまったら取り返さなければいけないから。

羽生「まあ、最近はなかなか挑戦する機会もなかったので、今回は久々のチャンスを生かせてよかったなと思っています。」

―― しかし、(二冠を獲られたばかりの)あの状態で挑戦者になったということ自体がすごいことだと思います。

羽生「他の棋戦も勝ち進んでいる中でなら自然なことかもしれないですけど、今期はまったく冴えないので。タイミングとしては意外なところでしょうね(笑)。」

―― 指宿市の第5局のあとの共同記者会見で、「今期はこれが最後のチャンスかもしれないと思って臨んだ」とおっしゃっていましたが。

羽生「私も19歳で初めて竜王を取りましたが、竜王戦ってだいたい二十代の若い人が挑戦者になることが多いイメージがあります。あと、1組にいると挑戦者決定トーナメントを2回やるような感じなんですよ。初戦からすごい実力者と当たりますし、決勝トーナメントに入れば入ったで若手の強い人が出てくる。その中で勝ち上がっていかなければならない厳しさは結構感じていました。」

―― さすがに挑戦までいくのは大変だろうなと思って見ていたんですけど。

羽生「こっそりと、藤井さん(聡太五段)の活躍の陰に隠れていましたから(笑)。皆さんそれどころじゃなかったんじゃないでしょうか。」

 

―― 昨年の藤井フィーバーは、どういう気持ちで見ていましたか。

羽生「あれこそたぶん、今まで経験した中でいちばんすごいフィーバーだったような感じがします。本当の意味での将棋ブーム。全然将棋を知らない人に対してアピールしたのは功績です。私もいろいろな場所にいくたびに、将棋を知らない人たちがみんな藤井さんのことを知っていて、浸透度のすごさを感じました。」

―― 私が将棋世界編集部にいた頃に見た羽生七冠フィーバーもすごかったですけどね。

羽生「でも、今回のほうが全然すごいと思いますよ。だってあんなに特別対局室に100 人とか報道陣が入ったら危険ですよ。そんなに広い場所じゃないんだから(笑)。」

―― 各局のワイドショーが連日のように大きく取り上げましたね。連勝が途絶えるまで続きました。たしかにあんなことはさすがになかったです。

羽生「見ている全国のお母さんたちが、うちの子どもも彼みたいにしたいと思ってくださったというところもあったでしょう。藤井さんは対局結果だけじゃなくて、報道陣の受け答えも非常にきちんとしていて、そういうところも好意的にとらえてくれたんじゃないかと思います。」

―― 「僥倖」「望外」。コメントにそつがないですよね。

羽生「あの語彙力は尋常じゃないですよね。中学生とは思えない(笑)。」

―― 中学では習わない言葉だと思います。「僥倖」は木村義雄十四世名人のセリフが有名ですね。必勝の将棋をポカで負けたときに対戦相手に向かって「君は僥倖を頼んで指したんだな」って怒ったという。将棋の本で覚えたんでしょうか。

羽生「たしかに古めかしい表現というか死語に近い。漢字検定ぐらいでしか見ないですよね(笑)。ただ、教育関係の方に伺った話では、国立系の学校とかだと、結構そういう言葉も教えるところもあるようですよ。」

―― 羽生さんも小学生時代は、布団をかぶって将棋の本を熱心に読みふけっていたそうじゃないですか。将棋で覚えた漢字も相当あるのではないですか。

羽生「観戦記とか。あと『名人戦全集』が奨励会の頃に破格の価格で売り出された時があって、それは買いました。全12巻もあるので全部は読めなかったですけど、子どもながらに面白く読んだ記憶があります。」

 

次回(2/27公開予定)へ続く

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将棋世界編集部(著者)