2018.02.23
プロ棋界 スピード昇段記録保持者は誰だ!?
藤井聡太六段によるスピード昇段は棋界全体に衝撃を与えました。でも実は、これって新記録ではないようなのです。ではその記録を持っているのは果たして誰なの? というお話です。
皆様こんにちは。将棋情報局です。
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藤井聡太六段が佐藤天彦名人、羽生善治竜王、広瀬章人八段を連破して優勝した朝日杯オープン戦の興奮が未だ消えぬ今日このごろ。五段昇段後わずか16日で六段昇段という快挙も大きな話題となりました。
七段昇段はいつ? という話は、果たして気が早いのかどうなのか・・・
見ているこちらの感覚が狂うほどのスピード昇段! 藤井六段の快進撃、そして藤井フィーバーはまだまだ終りが見えません。
さて、今回はその「スピード昇段」についてのお話です。
藤井六段が作った「中学生六段」の記録は史上初のものです。
では棋界の「スピード昇段」記録はどなたがお持ちか、ご存じでしょうか。
江戸時代などは分かりませんが、近代においてはこのお方。
どうぞ。
将棋世界2015年5月号(提供:日本将棋連盟)より
「小太刀の名手」とうたわれた歩使いの達人。タイトル挑戦4回、棋戦優勝10回、A級通算24期の実績を持ち、戦術面では「ひねり飛車」に「丸田流」(図)と言われる新手法を編み出したことで有名な昭和の大棋士・丸田祐三九段でございます。
※8八の角を▲9七角とするのが丸田流。△8九飛成には▲8八角と飛車を閉じ込めることができる。以下は機を見て▲8六飛とし、自分だけ2歩を手持ちにしてのひねり飛車を狙う。
では、さっそくプロフィールを見てゆきましょう。以下、将棋年鑑のプロフィールを抜粋したものです。
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九段 丸田祐三(まるた・ゆうぞう)
大正8年3月30日、長野県長野市の生まれ。
昭和11年 6級で故平野信助七段門
昭和13年 初段
昭和15年 三段当時から約6年の軍隊生活
昭和21年 復員後四段で順位戦に参加
昭和22年 三段跳びで七段に特進
昭和23年 八段(四段から2年で八段というスピード昇段記録)
昭和48年11月 九段
平成8年3月 引退
平成27年2月17日 死去。享年95歳
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当時と現在ではまるで制度が違うため、藤井六段を含む現在の棋士と、記録の優劣を比べることはもちろんできません。
そのことを考えずにプロフィールを見てください。確かにデビュー後1年で七段特進、そして2年で八段に昇段なさっています。
資料によれば、丸田四段は昭和21年度の第1期順位戦に参加(※現在第76期)。第1期はA、B、Cの3階級で行われ、C級でトップの成績を取ってB級へ昇級、それにより三段跳びで七段昇段を果たした・・・ということのようです。
そして翌年の第2期、B級に参加した丸田七段はまたも第2位の好成績!A級昇級を決めて八段に昇段した・・・ということのようです。
断言ではないことをお許し下さい。現在と制度が違いすぎて・・・。
現行のルールでは順位戦昇級は最高一段階しか昇段しませんし、順位戦のクラス編成も違うため、くどいようですが現在とは比べようもありません。
ただ、6年に及ぶ軍隊生活を経験したのち四段になり(つまり、その間は将棋のお勉強などあまりできなかったでしょう!)、2期連続で順位戦昇級を果たしたということは、クラス内での地力は断然上位であり、八段にふさわしいものだったことがうかがい知れます。
現行のルールでこの記録を破るには、竜王戦に関する規定をクリアするのが最短かと思われます。
竜王戦挑戦権獲得で七段、竜王位獲得で八段に昇段できます。
そんな棋士が、いつかは現れるのでしょうか??? 連盟会長、理事を永く務められ、面倒見が良かったと評判の丸田九段。そのことも楽しみにしつつ、天国から現役棋士たちの活躍を眺められていらっしゃるかも知れません。
将棋世界2015年5月号(提供:日本将棋連盟)より
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