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「ペテン師」の真骨頂!8割が誤答した詰将棋

先日発売開始となりました詰将棋書籍「からくり箱」に掲載の100番の中から、第17番をご紹介します。
解き手を幻惑する移動合の妙技。「週刊将棋」2013年6月12日号「新詰将棋探検隊」第5回からの抜粋記事です。

隊長  今回は玉方の受けの妙技、移動合を紹介します。突然飛び出す玉方の移動合は、解く者の度肝を抜くことがあります。

隊員B 確かに単なる中合よりびっくりする場合がありますね。

隊員C 実に面白い。

隊長  ?

隊員A C君は今「ガリレオ」にハマっているんです。発言に特に意味はありません(笑)。

隊員C さっぱりわからない。

※編集部注・掲載当時、テレビドラマ・ガリレオ(season2)が流行っていました。

■誤解者8割!

隊長  本図は記録的な誤解者を出したという作品。

隊員A 昔は今と比較にならないくらい、解答者の数が多かったと聞いていますが。

隊長  昭和末期まではインターネットもないし、将棋ソフトを含めアプリもありません。雑誌がいろいろな情報源であり、娯楽でもあった時代です。熱心な将棋ファン、詰将棋ファンも専門誌に集っていたのでしょう。

酒井克彦作 「近代将棋」64年9月  

酒井克彦作
▲3八銀△1八玉▲1九金△同 玉
▲2八歩△3九銀成(途中図)

 

隊員B 5手目▲2八歩の開き王手まではこう進むところですね。

隊長  6手目△3九銀成が、当時解答者の8割が間違えたという問題の手。

隊員C 8割? 6手目△5九銀成と飛車を取って▲2九金までとか?

隊長  そんなヤツはおらんじゃろ(笑)。

隊員B 6手目△2八玉なら、▲2九飛△3八玉▲2八金まで。まずこの変化を確認しますね。

隊員A それで次に6手目△3九金合として、以下▲2九金△同金▲同飛△1八玉▲1九飛△同玉▲2九金まで。駒も余らずきれいに詰みますから、大半の方はこれが作意だと勘違いしたのでしょうね。

隊長  △3九銀成は「大駒は近づけて受けよ」と同時に、4八の退路も開ける絶妙の受けなんです。

【途中図は6手目△3九銀成まで】  

(途中図以下の手順)
▲3九同飛△2八玉▲2九銀打△1九玉
▲1八銀△同 玉▲1九飛△同 玉
▲2九金まで15手詰

 

隊員B 最後は6手目金合をした変化と同じフィニッシュですね。

隊長  金合だと2手早く詰むわけですが、狙ったのではなく偶然そうなったものでしょう。本作者の作品はいつも誤解者が多かったものですから、尊敬の念を込めて「ペテン師」と呼ばれていました。作家にとって誇りある称号ですね。

隊員A 何げないところから移動合が飛び出すのがいいですね。

【詰め上がり図は▲2九金まで】  

(「週刊将棋」2013年6月12日号 「新詰将棋探検隊」第5回受けの秘術・移動合<前編>より抜粋)


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著者

角建逸(著者)