第3回:中国現地プロモーション事例集|Tech Book Zone Manatee

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いま押さえておきたい 中国ネットマーケティング最前線

第3回:中国現地プロモーション事例集

年々拡大を見せる中国のインターネット人口。その巨大な市場に対してどのようなマーケティングを行っていくのか。『いま押さえておきたい 中国ネットマーケティング最前線 ~WeChat(微信)を活用した最新プロモーション事例』(田中千晶・山本達郎著)は、中国のWebやSNS事情やWebにおけるプロモーション戦略から、中国で定番となっているメッセンジャーアプリ「WeChat」(微信)の機能の紹介や活用例まで、詳細に解説しています。 この連載では同書の中からいくつかのトピックをピックアップして、4回にわたって掲載していきます。

第3回目は、具体的な中国現地でのプロモーション事例を御紹介します。

h3>爆買いの見通し

円安などを背景にしたインバウンド(特に中国人観光客)の増加に伴い、訪日中国人の日本での「爆買い」消費行動が連日話題となっています。

今後の見通しとして、2016年も引き続き2月(春節)、5月(労働節)、10月(国慶節)などのタイミングで、訪日する中国人観光客数は増加していくと予想されています。対照的に家電や化粧品など特定の人気商品に対する「爆買い」は徐々に下火になりつつあるとも見られています。

もっとも、「爆買い」の波が落ち着きつつあるものの、インバウンドの一人当たり消費額が減るとは決まったわけではありません。シンガポールのストレイツ・タイムズ紙は「中国経済は以前のようには急成長していないが、中国人の平均購買力は今でも増進中だ」と綴っています。(出典:https://zuuonline.com/archives/94763http://newsphere.jp/world-report/20160215-1/

 

中国でのSNS活用の必要性

2015年7~9月の訪日外国人消費動向調査で、訪日外国人全体の旅行消費額は前年比82%増と7期連続で過去最高値を更新し、1四半期で1兆円を初めて超えたと観光庁が発表しました。多くの日系企業がこの莫大なインバウンド消費の取り込みを試みていますが、前にも書きましたが、中国は諸外国と異なる、独自のインターネット文化が存在するため、日本でのWebプロモーションと全く同じやり方をしては効果があがりません。

成功のためには、中国版Twitterとも言われる、約6億のユーザーを持つミニブログ「ウェイボー(Weibo・微博)を筆頭とした中国独自のSNSを活用する必要があります(http://weibo-japan.blog.jp/archives/1023978558.html)。

それは、中国では商品を購入する際の判断材料として、口コミ情報を重要視する傾向があることが大きな理由です。多くの中国の人は微博などのSNSやウェブで商品について情報収集を行い、人気商品を気に入るかどうか確認した後に購入します。

ここでは、この「ウェイボー」による口コミを利用したプロモーション事例をいくつか紹介します。

 

微博(ウェイボー)を活用した中国市場ブランディング─日本下着メーカーの例

中国市場での知名度アップを目的として、ウェイボーを活用したプロモーションキャンペーンを実施しました。内容としては、

 

 1. キャンペーン用ランディングページを作成
 2. 「FindJapan公式微博」からの情報配信⇒①へ誘導
 3. 「日淘聯盟公式微博」からの情報配信 ⇒①へ誘導
 4. 微博Feed広告による②、③配信情報の大規模配信

 

成果として、キャンペーンに8,854人参加し、キャンペーン前に914件だった商品名の投稿数が、キャンペーン実施後8,272件(約9倍)まで拡大しました。

ユーザー数が莫大なウェイボーを通したキャンペーンを行うことで、知名度やブランド力も高まり、ユーザーからの評価が高いという情報が潜在顧客へと拡散されました。さらに、ウェイボー上で人気が上がったことで、ソーシャルバイヤーが商品の取り扱いを開始し始め、更なる情報の拡散とともに中国でも商品が容易に買える環境が整っていきました。

 

微博(ウェイボー)でKOLを活用したブランディング─ふきとり化粧水と酵素のダイエット食品の例

中国市場においての知名度アップを目的として、KOLを利用したプロモーションを実施しました。KOLとは、「Key Opinion Leader」の略称で、ウェイボー上で影響力の高いアカウントを指します。KOLに対してサンプル商品を配布し、プレゼントキャンぺーンを実施してもらうことで口コミ情報数の増加を図りました。

 

 1. KOLによるプレゼントキャンぺーンを実施
 2. 「FindJapan公式微博」からの情報配信
 3. 「日淘聯盟公式微博」からの情報配信
 4. 特設ページを設置し、情報の露出を促進

 

このように、Web上の広告配信だけに頼らずにKOLを利用すると、ウェイボーユーザーにとってより信憑性の高いクチコミ情報を配信することができます。

人気の高いKOLの影響力は高く、爆発的に商品情報がウェイボー内で拡散し、潜在顧客へと響いた結果として購買につながります。

この購買はECサイトを通じ国内で行われる場合もあれば、訪日時の買い物リストに追加され日本で買われることや、越境EC・ソーシャルバイヤーを通じて購入されていく場合もあります。

旅行計画中のユーザー層へ商品情報を届ける場合には、ウェイボーでのプロモーションを実施するタイミングが成功の鍵を握ります。年間でのプロモーションスケジュールを計画し、ユーザー層に情報を届けていくことで、訪日の際に彼らが商品を購入したり、訪問先に選ぶ確率も高まります。

 (出典:http://weibo-japan.blog.jp/archives/1023978558.html)

 

微博(ウェイボー)を利用した在日中国人向け販促プロモーション─航空会社の例

こちらの航空会社は在日中国人にリーチする手段がなく、商品のブランディングができていないという課題がありました。そこでウェイボーを利用し、GWに中国へと帰省する在日中国人向けを対象とした航空券の販売キャンペーンを実施しました。

内容としては、

 

 1. FindJapan微博公式アカウントに掲載
 2. 微博イベントツールでキャンペーン実施
 3. 「微博Adネットワーク」にて情報配信

 

実施の結果、キャンペーン情報シェア数29,867人、ブランドの百度検索エンジン表示上位1位表示という結果にはなりましたが、目標の販売数には到達しませんでした。しかし、このキャンペーンの問題点を把握し改善を行うことで、年末年始・春節に向けたキャンペーンは目標売上数を達成しました。ウェイボーマーケティングにおいてもPDCAサイクルを回すことが重要だとわかります。

(出典:http://weibo-japan.blog.jp/archives/1007392093.html)

次回(最終回)では中国におけるO2O活用事例をご紹介します。

著者プロフィール

山本 達郎(著者)

株式会社クロスシー執行役員。

1980年東京生まれ、慶大卒。在学中に学習塾を立ち上げ、3年間経営の後に売却。中国・アメリカでの留学を経て、06年に北京龍楽広告有限公司(ログラス)を設立、11年にアエラの「中国に勝った日本人100人」に選ばれる。15年に同社買収に伴いクロスシー執行役員に就任。著書に『中国巨大ECサイト タオバオの正体』『中国版ツイッター ウェイボーを攻略せよ!』(ワニブックスPLUS新書)がある。