第2回:中国のSNSはWeiboとWeChat|Tech Book Zone Manatee

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いま押さえておきたい 中国ネットマーケティング最前線

第2回:中国のSNSはWeiboとWeChat

年々拡大を見せる中国のインターネット人口。その巨大な市場に対してどのようなマーケティングを行っていくのか。『いま押さえておきたい 中国ネットマーケティング最前線 ~WeChat(微信)を活用した最新プロモーション事例』(田中千晶・山本達郎著)は、中国のWebやSNS事情やWebにおけるプロモーション戦略から、中国で定番となっているメッセンジャーアプリ「WeChat」(微信)の機能の紹介や活用例まで、詳細に解説しています。 この連載では同書の中からいくつかのトピックをピックアップして、4回にわたって掲載していきます。

第2回目は、中国の定番SNSツールであるWebboとWeChatを取り上げます。

前述しましたが、中国では、グレートファイヤーウォールと呼ばれる規制のため、Facebook、Twitter、LINEが使えません。その代わりに、それぞれの中国語版とも呼ばれるツールが発展してきました。ここでは、中国版Twitterとも呼ばれるWeibo(微博)と、中国版LINEとも呼ばれるWeChat(微信)を紹介します。

 

Weibo(微博)とは

Weibo(微博)は、Twitterと同じように140文字でつぶやくという形でスタート。当初は、4大Weiboというものが台頭し、新浪Weibo・Tencent Weibo・捜狐Weibo・網易Weiboが人気を集めました。4つ合わせたユーザー数の合計は13億アカウントを越えたとされています。

その後、Weibo同士の競争も激しくなり、またWeChatを始めとする新しいツールの台頭もあり、実質的に新浪Weiboが勝ち残る状態となり、現在も6億以上のアカウントを保有しています。2009年にスタートしたこの新浪Weiboは、2013年にはアリババからの投資も受け、その1年後にはアメリカのナスダックにて上場も果たしています。

 

Weibo(微博)のユーザー数

ユーザー数の規模感を比較してみましょう。

日本のTwitterにおいて最もフォロワー数が多いユーザーというと、数年前まではソフトバンクの孫正義氏で、Twitterで社員や関係者とやり取りをしたり、指示を出したりする様がTwitter経営とも呼ばれていました。2016年5月現在のフォロワー数は256万人となっています。そして、現在の上位はというと、お笑い芸人の有吉氏が約560万人、きゃりーぱみゅぱみゅさんが約420万人、松本人志氏が約360万人等となっています。

新浪Weiboの日本人アカウントで1位は蒼井そら氏で、約1,600万人。有吉氏のTwitterフォロワー数の約3倍です。また稲盛和夫氏も1,200万人と大きなフォロワー数を抱え、経営の格言をつぶやく等していて、JAL再上場の際にも大きくフォロワーが増加しました。

世界で見てみると、世界No.1はカナダの歌手ケイティ―・ペリー氏で8,700万人、続いてジャスティン・ビーバー氏の8,000万人、テイラー・スウィフト氏の7600万人、そして、オバマ大統領も7,400万人となっています。一方新浪Weiboで、Weibo女王と呼ばれる女優のヤオチェンも約7900万人。こうして見てみると、「中国版」とは言え、規模や拡散力はかなりのものであることが分かります。

もちろん企業もこれらを活用。芸能人アカウントに比べればフォロワー数は下がりますが、ユニクロが470万人、ソニーXperiaが450万人とフォロワーの数を伸ばしています。外資系企業はもちろん、中国系企業もそれ以上に力を入れており、例えば、小米の企業アカウントはフォロワー数が約1400万人にも上ります。

 

WeChat(微信・ウェイシン)とは

WeChatは、LINEと同じように、個人や少人数のグループでチャットをする機能がメインです。スタンプを送ったり、ゲームが出来たりと、よく似ていると言われますが、実はスタートした時期はLINEよりも5か月前の2011年1月のことです。そして、今では中国の一級都市でのスマホ浸透率は93%とされ、アカウント数は約11億にまで達しています。

LINEとの主な使われ方の違いとしては、ボイスチャットがメインという点です。トランシーバーのように、携帯に向かって話しかけたり、耳に当ててメッセージを聞いたりという光景がよく見られます。実はLINEにもこの機能はついていますが、日本人は自分の声を聞くのが恥ずかしいという感情があるのか、あまり使われていないようです。

Look Aroundという機能では、自分から何mのところに、どんなユーザーがいるかが分かり、連絡を取り合うことができます。その他、タクシーを呼ぶ機能や、銀行カードを登録して交通費、電気代、携帯電話代の支払う機能も付いています。映画のチケットも購入可能で、現在いる場所の近くの映画館をお薦めしてくれたり、座席指定まで行ったりすることも可能です(詳細は3章で説明)。

WeChatの利用者

芸能人アカウントも数多く開設されています。ビビアン・スーやリン・チーリン、ワン・リーホン等といった日本でもファンを抱える芸能人アカウントも多くのフォロワーを集めています。Weiboではテキストや画像でのコミュニケーションが主流でしたが、ここではボイスメッセージが使えるということで、芸能人の生声メッセージや動画が届くということで、ファンもこぞってフォローすることになりました。

そして、Weiboと同じく企業による活用も広がっています。ケンタッキーでは位置情報を利用し、店舗の近くでユーザーがLook Around機能を使うと近くの店からクーポンが送られてくるというキャンペーンを実施。スターバックスでは、来店して、QRコードからアカウントをフォローし、自分の感情を絵文字にして送ると、それに合わせた音楽が送られてくるというキャンペーンを行った他、「スタバ目覚まし時計」の企画として、WeChatで目覚まし時計をセットし、それから1時間以内に店舗に来たら、朝食が50%になるというものも実施していました。また、中国南方航空という航空会社では、WeChatで全てのことが完結できるようにと、航空券の予約・購入はもちろん、オンラインチェックインや座席指定までを可能にしたところ、WeChatからの航空券の売上が1日100万元(=1800万円)以上ともなりました。

 

日本のSNSは、以前はmixiが流行り、その後Twitter、Facebook、そしてLINEと流行し、今は後者の3つが共存していますが、中国ではWeibo(微博)とWeChat(微信)が共存していると言えます。

次回は具体的な中国現地でのプロモーション事例を御紹介します。

著者プロフィール

山本 達郎(著者)

株式会社クロスシー執行役員。

1980年東京生まれ、慶大卒。在学中に学習塾を立ち上げ、3年間経営の後に売却。中国・アメリカでの留学を経て、06年に北京龍楽広告有限公司(ログラス)を設立、11年にアエラの「中国に勝った日本人100人」に選ばれる。15年に同社買収に伴いクロスシー執行役員に就任。著書に『中国巨大ECサイト タオバオの正体』『中国版ツイッター ウェイボーを攻略せよ!』(ワニブックスPLUS新書)がある。