2018.10.06
Mac Fan独自の視点で、アップル周辺の最新ニュースや話題に切り込む!
昨年から約1万2000人のApple社員の新しい職場となった「Apple Park」。その広大な敷地に築かれた丘の上にある施設が「Steve Jobs Theater」だ。普段は一般人や社員すらも入れない“神殿”は、一体どんな場所なのだろうか。イベントに合わせて変化する驚きの仕掛けとともに解説する。
“宇宙船”の全貌
現地時間9月12日に開催されたアップルのスペシャルイベント「ギャザー・ラウンド(Gather round.)」のオープニングは、映画「ミッション・インポッシブル」のテーマとともに、女性社員がティム・クックCEOにジュラルミンケースの忘れ物を届けるという構成だった。
手に汗握るこの映像では、宇宙船のような本社「アップルパーク」の端から端までを駆け抜け、イベント会場である「スティーブ・ジョブズ・シアター(以下、シアター)」のバックステージまで、完成したキャンパスを紹介している。この映像をじっくり見直せば、アップルパークがどんな場所なのかを理解することができるだろう。
筆者はアップルパークの研究開発棟と駐車場以外のほとんどすべての場所を訪れる機会に恵まれたが、やはりもっとも特徴的な施設だったのがシアターである。
千人が快適に過ごす空間
アップルパーク内のキャンパス内に入り、二股に分かれた道を右に曲がるとメインビル、左にある丘を上がるとシアターへとつながる。
シアターまでの道のりで気づいたことは、植物が根付いてきたのか、より自然な風景が広がっていたことだ。1年前にここを通ったときはまだ草を植えたばかりで、苗の状態に近かった。今年はその茂った草にスピーカを仕込み、レセプションからシアターまでの間を巨大な音場空間に変化させていた点も印象的だった。
シアターは正円形で、ガラスの壁面の上に屋根が載せられている構造だ。配線などは巧妙に隠されており、壁はなくとも天井にはライトやスピーカなどがきちんと埋め込まれている。それ以外は、白い石の床が目の前一面に広がるばかりだ。
イベント当日、シアターに到達したプレスは、1時間ほどの時間をシアターロビーや、その周りに用意された軽食やコーヒー、アップルのオフィスではおなじみの健康的なジュースやお茶とともに過ごす。
改めて考えてみると、1000人の収容人数が快適に待機できる室内・屋外の空間を自然に用意することは、そう簡単なことではない。印象的な建造物、巨大なメインビルを見下ろす景色、そしてカリフォルニアのカラリと晴れた朝の秋空の気持ちよさ。自然をも味方につけて朝のひとときを演出している。
カラクリ満載のシアター
イベント開始の30分前が近づくと、シアターロビーの左右に位置する弧を描いた階段から、地下階に招き入れられる。4フロア分ぐらいある一続きの階段を下りきると、背後は巨大な弧を描いた壁、正面には大きく間口を開けたシアターエントランスが現れる。シアター内に入ると、1000人収容という数字を知りながら、コンパクトな印象を受ける。筆者は2年連続で最後列中央の同じ席に着いたが、135ミリ程度のズームレンズでも十分にクローズアップでき、快適な環境で撮影可能だった。
イベント開始1分前になると背後に壁が現れ、広かった間口は閉ざされる。これ以降の出入りは、左右のドアを利用することになる。音もなくいつの間にか壁が現れるため、最後列でなければ気づくこともないだろう。この壁はイベント終了後、再びせり上がる。しかし、その先に見える景色は以前とまったく異なる。
シアターへは、ロビーの円周に沿って作られた階段を降りてきたが、その内側には円形の巨大な壁があった。しかしこの壁は、音もなく収納されており、イベント後には円形のタッチアンドトライ会場が現れる仕掛けになっていたのだ。
2時間ほどの発表会を終えると、その後1時間半ほど、プレスは発表されたばかりの新製品に実際に触れて確かめることができる。シアターでの発表会、その背後の空間でのタッチアンドトライと、イベントの形式に合わせて会場が作られていることがわかる。しかも開閉式の壁を用意し、限られたスペースの中で、事前に準備を進めておくことができるようにしている。シアターのからくりは、アップルのプレスイベントのプログラムに合わせて設計されていることがよくわかるだろう。