アラカルト ビジョナリストのスイッチ

創造者たちの革新の流儀④「インサイトテック・伊藤友博」

文●山田井ユウキ

創造者たちの革新の流儀

【PROFILE】

「キッチンマットがすぐ汚れるのに洗いにくい」「とてもおいしいのに女性にはボリュームが多すぎる」ー人々の「不満」を買い取るサービスとして知られる「不満買取センター」。登録会員から投稿される「不満」はAIにより内容を解析、企業や自治体に届けられ、商品・サービス開発、改善活動などに役立てられる。これだけ聞くとよくあるリサーチ会社のアンケート調査やコールセンター業務に近い印象を受けるが、実際には大きく異なっている。

不満買取センターでは登録ユーザが自由記述式で不満を投稿する。アンケート調査にありがちな選択形式ではないため、その行動はかなり能動的といえる。また、コールセンターにかけるほどではないちょっとした不満を拾い上げることができるのも特徴だ。企業にとってはまさに喉から手が出るほど欲しいデータなのである。

このユニークなサービスを開発・運営するのが株式会社インサイトテック。代表を務めるのは伊藤友博氏だ。実は伊藤氏、同社の創業メンバーというわけではなく、約1年半前に代表として招聘された人物である。それまでは総合シンクタンク・三菱総合研究所で交通需要予測プロジェクトやデータを活用したマーケティングに取り組んでいた。

不満買取センターにジョインした伊藤氏に課せられたミッションは、サービスを軌道に乗せ、今後のビジョンを示し、会社を引っ張っていくこと。数々の企業を支援してきた伊藤氏にとっても、それは大きな挑戦だった。

果たしてーインサイトテックは急成長を遂げた。唯一無二のサービスである不満買取センターはもちろん、そこで培ったAIの技術力を活かして新たなビジネスを模索する段階に入っている。見事に期待に応えてみせた伊藤氏の経営手腕とリーダーシップに、今ビジネス業界から熱い視線が注がれている。

 

INTERVIEWER

Appleユーザの中には、未来を形づくるすごい人がいる。本連載は、人脈作りのプロ・徳本昌大氏と日比谷尚武氏が今会いたいビジョナリストへアプローチ、彼らを突き動かす原動力と仕事の流儀について探り出すものである。

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徳本昌大

ビジネスプロデューサー/ビズライト・テクノロジー取締役

 

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日比谷尚武

コネクタ/Eightエバンジェリスト/at Will Work理事/ロックバー経営者

 

 

総合シンクタンクから「データで勝負する」ベンチャーの社長に

徳元●不満買取センターは、とてもユニークなサービスですよね。開始当初、これはすごいぞと思いました。たしか2012年頃でしょうか。実は若い頃に似たサービスを考えたことがあったのですが、ついに出てきたなと。

伊藤●ありがとうございます!

日比谷●消費者の声を集めて商品開発に活かすという発想そのものは、いつかどこかがやるだろうと思っていました。だけど、本当に声が集まるのかとか、将来的に言語解析をどうするのかとかを考えると難しいのではないかと当時は思っていました。

徳元●だから驚かされたんですよ。

日比谷●Sansanでも言語解析はやっています。それによって営業マンのスペックを数値化できないか…とか。でも、それをサービスとして成り立つレベルに持っていくのは大変だと感じていたので、不満買取センターはすごくキャッチーなサービスだけど、ビジネスとして成り立つのかなと見ていました。

伊藤●そうですね。アイデアを思いついても、それをビジネスにするのは難しいものです。

徳元●でも、不満買取センターは成功し、成長を遂げています。それは伊藤さんの手腕ですよね。

伊藤●そう言っていただけるとうれしいです。

日比谷●伊藤さんは最初から不満買取センターに携わっていらっしゃったわけではないんですよね?

伊藤●はい、途中から加わりました。学生時代は交通計画を専門にしており、1999年に三菱総研に入社したあとは交通需要予測のプロジェクトを担当していたんです。

徳元●交通需要予測?

伊藤●交通量や交通サービスから将来の交通システムを考えていくようなプロジェクトです。やりがいのある仕事だったのですが、プロジェクトの規模が大きいため意思決定が自分から遠いところで行われることもあり、もどかしさも感じていました。そんなとき、交通計画で培ったノウハウがマーケティングにも活きることに気づき、社内でプロジェクトチームを起ち上げたのです。

日比谷●すごい行動力ですね!

伊藤●三菱総研という名前の強みもあって、さまざまな企業とお仕事のご縁をいただけました。私もメガバンクに常駐して、データを活用した意思決定の速度アップに貢献することができ、これまでのジレンマが解消された思いでした。

徳元●データで勝負する左脳の世界に突っ込んでいかれたわけですね。

伊藤●それだけでなく、街づくりの仕事も並行して行っていました。そういう意味では、クリエイティブとロジカルの両方で仕事をしていたといえるかもしれません。

徳元●そこまでされたらもう広告代理店はいらないですね(笑)。

伊藤●さらにビッグデータ解析プロジェクトもいくつか起ち上げて、AIやデータを活用したビジネスの責任者に就きました。ちょうどAIが盛り上がってきた2014~2015年頃です。今までシンクタンクは受託ばかりでそういうことはやっていなかったんです。

日比谷●それはよく通りましたね!

伊藤●オープンイノベーションの中で、データ活用ビジネスを作れるのではないかという意識が自分の中にあったんです。たとえば人材会社さんと一緒に考えたのは、新卒のエントリーシートに書かれた日本語から会社とのマッチングを検討するというサービスです。今でいうHRテックの文脈ですね。

徳元●伊藤さんがすごいのは、大手にいながらベンチャーマインドを持っていることですよね。

日比谷●そうですね、なかなかできることではないと思います。

伊藤●社内キャリアチェンジを繰り返したことで、とにかく“自分自身が動くことで新しいものが生まれるんだ”という実感を持てたことが大きいですね。

 

動くことで新しいものが生まれる。動かないと何も始まらない。




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