アラカルト ビジョナリストのスイッチ

創造者たちの革新の流儀③「イトナブ・古山 隆幸」

文●山田井ユウキ

「目隠しダッシュする勇気」を大切にしています。怖がらないで、全力で走って、コケて怪我をしたら治療をすればいいんです。

【PROFILE】

2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻。あれから7年、石巻が今、IT人材を輩出する場所として注目を集めている。人材育成を手動しているのはイトナブ。仕掛け人は代表の古山隆幸氏だ。

石巻で生まれ育った古山氏は、工業高校を卒業後、埼玉工業大学へ進学。その後、フリーランスのWEBデザイナーを経てWEBの会社を起業した。

転機となったのは東日本大震災。地元に戻り、友人らと「ISHINOMAKI 2.0」というまちづくり団体を起ち上げ、さまざまな活動を通して石巻を盛り上げてきた。2012年には「遊ぶ×学ぶ×営む×イノベーション×IT」をコンセプトとした一般社団法人イトナブ石巻を創設し、石巻を中心に全国でプログラミング教育を行っている。

イトナブが目指すのは、震災から10年が経つ2021年までに1000人のIT技術者を石巻から輩出すること。同時に学生の受け入れも行っており、現在では海外からのインターンも多数訪れるまでになっている。2012年からは「石巻ハッカソン」も開催。毎回、150名を超える参加者を集める。

イトナブの活動はそれだけに留まらない。東京時代に培った経験を活かし、WEB制作や映像制作、デザイン、アプリ開発など多方面で事業を展開する。たとえば石巻の魅力を新しい視点で世界に発信するWEBマガジン「まきじん」は、グルメ情報や石巻で生まれた新しいプロダクト、自然の風景などのローカル情報を現地ならではの視点で紹介。石巻を訪れる際のバイブルとなっている。さらに東日本大震災の復興支援ランニングイベントを盛り上げるアプリ「Run311」の開発や、地元企業とコラボしたデジタルアート「ダンボルギーニプロジェクションマッピング」の演出など幅広い。すべての事業に共通するビジョンはただひとつ、「石巻を盛り上げる」ことである。

 

INTERVIEWER

Appleユーザの中には、未来を形づくるすごい人がいる。本連載は、人脈作りのプロ・徳本昌大氏と日比谷尚武氏が今会いたいビジョナリストへアプローチ、彼らを突き動かす原動力と仕事の流儀について探り出すものである。

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徳本昌大

ビジネスプロデューサー/ビズライト・テクノロジー取締役

 

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日比谷尚武

コネクタ/Eightエバンジェリスト/at Will Work理事/ロックバー経営者

 

 

チャレンジする大人の背中を子どもに見せたかった

徳本●古山さんとお会いするのは2回目ですね。最初にお会いしたのが某企業のパーティーで、すごく情熱的にイトナブのお話を聞かせていただいて。僕もそうなんだけど、古山さんも直感で生きている人だって感じました。それで、今回もっと深くお話を聞きたいなと。

古山●ありがとうございます!

日比谷●イトナブは石巻でIT技術者を育成することを目的とした団体なんですよね。起ち上げたきっかけは何だったのですか?

古山●僕は石巻出身で高校まで住んでいました。石巻はある意味、東日本大震災で有名になってしまった町で、僕が高校の頃は本当に普通の田舎町でした。仙台や松島はわりと知られていますが、石巻っていうと誰も知らない。そういうところで高校時代を過ごしていてモヤモヤしていたんです。

徳本●進路とか就職とか?

古山●はい。僕は工業高校だったのですが、地方では高卒就職が多くて、就職先も成績順で決まるんですよ。トップクラスなら東北電力、次が大手企業、その次が市役所といった具合です。

日比谷●道が見えているわけですね。

古山●やりたいことをやるわけでもなく、先生に言われたとおり人生が決まっていく。それが納得いかなくて東京に出ました。大学3年くらいまでフラフラしていたのですが。ある日、友人がPCを自作してくれまして、それを活用してWEBサイトを作ったりしているうちにこれを仕事にしようと考えました。ITでビジネスにチャレンジしている大人に刺激を受けて、自分で会社を起ち上げることにしたのです。

徳本●動き出すと早いですね!

古山●はい。それで東京で仕事をしていたのですが、しばらくするとなんだか違和感を感じるようにななってきて。お金を稼いで社員に給料を払い…それは素晴らしいことだけど、何のためにやっているのかなと疑問に感じ始めたのです。そして震災が起こって石巻に戻ったとき、見たこともない働き方をされている方々に出会い、刺激を受けました。

日比谷●どんな方に?

古山●たとえば当時、広告代理店のワイデンアンドケネディにいらっしゃった飯田昭雄さん。僕が石巻で活動するきっかけになった方です。飯田さんがツイッターで石巻出身のWEBデザイナーを探していることを知って、自分だ!と思って連絡したんです。飯田さんは八戸のご出身なんですが、石巻のために尽力されていて、それですごく衝撃を受けました。僕は石巻出身なのに、なぜ何もできていないのか…と。それで会社は別の人に引き継いでもらって、コネも使わず石巻でゼロから再スタートすることにしました。

日比谷●飯田さんとの出会いが、自分自身と向き合うきっかけになったわけですね。

古山●自分の人生を振り返ってみると、かつて僕が石巻でモヤモヤしていた原因がわかりました。それはチャレンジしている大人の背中が見えなかったことだったんです。もちろん、実際にはチャレンジしている大人はいますよ。だけど多くの大人はチャレンジせず「若者はすぐ東京や仙台に行きたがる、もっと地元を見るべきだ」と批判します。それは大人の偏見だと僕は思います。そう言うなら、大人がもっと若者に寄ってあげないといけない。一緒にやろうぜと大人から言える環境を作ることが大事だと思い、イトナブを起ち上げることにしたのです。

徳本●それまでの成功をゼロにして再び走り出すというのはすごいですね。古山さんが大切にされている「目隠しダッシュ」って言葉がそれなのですね。

古山●そうですね。ボクはずっと活動を続けている中で、「目隠しダッシュ」する勇気を大切にしています。目をつぶったまま無我夢中で走ることは怖いけれど、目を開けてそこに絶景が広がっていたら感動しますよね。安全な道を景色を見ながら走るのとは感動の大きさが違います。

 

 

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「震災10年後の2021年までに、石巻から1000人のIT技術者を育成する」を目標に活動するイトナブ(【URL】 http://itnav.jp)。常にワクワクすることを大切にしている。




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