アラカルト ビジョナリストのスイッチ

Here's to the crazy ones.

創造者たちの革新の流儀①「弁護士・水野祐」

Appleユーザの中には未来を形づくるすごい人がいる。人脈作りのプロ・徳本昌大氏と日比谷尚武氏が今会いたいビジョナリストの原動力と仕事の流儀を探り出す。

【PROFILE】

カルチャー、テクノロジー、スタートアップ領域で、企業やクリエイターから絶大な支持を集める弁護士の水野祐氏。2013年に「シティライツ法律事務所」を開設し、クリエイターのための無料法律相談組織「Arts and Law」、「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」などの理事も務めている。さらに慶應義塾大学SFC研究所上席所員やグッドデザイン賞審査員など、多方面で存在感を発揮している人物だ。

水野氏の強みは、カルチャー&テクノロジー方面への造詣の深さ。クリエイターを法律家の立場で支援することをミッションとし、音楽、映像、デザイン、アートといったエンターテインメント領域や人工知能、VR、3Dプリンタなど先端分野のスタートアップ領域で活躍する。法律を杓子定規に当てはめるのではなく、クリエイティブに解釈することでクリエイターや起業家が伸び伸びと活動に打ち込めるようサポートするのが水野流。

氏の活動を象徴する仕事の1つが、2011年に起きた「岡本太郎絵画付け足し事件」。岡本太郎の代表作ともいえる「明日の神話」に原発建屋を付け足したことで軽犯罪法に問われたアート集団Chim↑Pom(チンポム)の弁護を担当し、不起訴を勝ち取った。

2017年12月にはアクセンチュア出身でIT領域に強い弁護士・伊藤雅浩氏をパートナーに迎え、シティライツ法律事務所をリニューアル。高度な専門性を持つ弁護士が集まった少数精鋭のドリームチームが誕生し、業界内外から注目を集めている。2016年には人物ドキュメンタリー番組「情熱大陸」でも特集されるなど、今もっとも注目を集める法律家の1人である。著書に『法のデザイン —創造性とイノベーションは法によって加速する』(フィルムアート社)『オープンデザイン参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」』(オライリー・ジャパン、共同翻訳・執筆)などがある。

 

INTERVIEWER

Appleユーザの中には、未来を形づくるすごい人がいる。本連載は、人脈作りのプロ・徳本昌大氏と日比谷尚武氏が今会いたいビジョナリストへアプローチ、彼らを突き動かす原動力と仕事の流儀について探り出すものである。

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徳本昌大

ビジネスプロデューサー/ビズライト・テクノロジー取締役

 

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日比谷尚武

コネクタ/Eightエバンジェリスト/at Will Work理事/ロックバー経営者

 

 

法律家よりもプロデューザーや編集者に成りたかった

日比谷・現在、水野さんはクリエイターの表現活動を法律家としてサポートされていますよね。

水野・ええ。エンターテインメントやアート分野の仕事はずっとやってきています。同時に、最新のテクノロジーに関するスタートアップや大企業の仕事も多いです。

日比谷・テクノロジーはアートともつながりますよね。メディアアートなどはまさに水野さんならではの専門領域かと思います。そうした最先端の法律に関わることになった経緯についてまずは聞いてもいいですか。

水野・昔からサブカルチャーは大好きだったんですが、法律にはあまり興味はなかったんですよ。

日比谷・でも大学は法学部ですよね?

水野・一応。模試ではE判定ばかりで合格率20%未満といわれていたんですけど、未満の意味を履き違えて、これって10回受ければ2つは受かるってことなんじゃないの?って思っていました。

日比谷・(笑)。

水野・そうしたら慶應の法学部で奇跡が起きたんです。英語の試験で僕が大好きなロックバンド「R・E・M」に関する問題が出て、読まなくても答えられたんです。

徳本・お~! 持ってますね(笑)。

水野・そんな感じで、法律家になろうと思って入ったわけじゃなかったんですよ。むしろプロデューサーとか編集者とかになりたかった。クリエイターを裏方から支援したいと思っていました。

日比谷・なるほど。だけど、今は弁護士をされていますよね。どういう心境の変化が?

水野・きっかけはアメリカの法学者、ローレンス・レッシグの著書を読んだことです。山形浩生さんや柏木亮二さんが翻訳された「CODE — インターネットの合法・違法・プライバシー」に影響を受けて、インターネット時代のクリエイターを法律面から支援したいと思い始めました。もし編集者やプロデューサーになったとしても、弁護士資格を持っていたら面白いだろうなって。

日比谷・それが水野さんにとっての「スイッチ」だったんですね。

水野・日比谷さんのスイッチはどんなものだったんですか?

日比谷・僕は20代のときに経営していたベンチャーが技術中心の会社で、外の世界を見ていなくて苦労して…。辛すぎて2週間会社を無断欠勤してしまったんですよ。それでSansanではマーケティングや広報にチャレンジしてコミュニケーションの大事さに気づき、今はその延長でロビイに興味を持っています。今はそれと並行してロックバーの運営などをしながら「コネクタ」という肩書を名乗っているんです。人と人をつなげるのが楽しくなってしまって。

水野・なるほど。最近IT業界でもロビイングの大切さが叫ばれてきて、IT業界もいよいよ成熟してきたんだなと感じますね。

日比谷・司法試験はどうでしたか。

水野・大学受験でまぐれ合格しちゃったもんだから、自分が本気を出せば司法試験だって合格できると思っていたんです。それくらいのノリで始めたら、これが本当に過酷な試験で…(笑)。

徳本・よくあきらめなかったですね。

水野・相当すり減ってましたよ。自分が本気を出せばなんとかなるはずという根拠のない自信はすぐになくなっていました(笑)。

徳本・それでも突き進めたのは、その後のビジョンがあったから?

水野・きれいに言うとそうなるんでしょうね(笑)。ただ、正直に言っていつあきらめていてもおかしくなかったです。ただ、根拠のない自信を完全にへし折られたことや、自分の能力の低さを見極められたのは結果的によかったと思っています。

徳本・そのメンタルの強さは、やっぱり確固たるビジョンがあったからじゃないですか。

水野・たしかに、司法試験受験中なのに、合格したあとにやりたいアイデアのことばかり考えていましたね。

徳本・司法試験の難易度を考えたら、試験に受かって弁護士になることが目標になりそうなもんだけど。

水野・たしかにそのように見える人は少なくないです。弁護士になったあとも皆それなりの収入と忙しさを得て満足してしまう。でも自分は弁護士になる前もなった後も、やりたいことは変わっていないんです。クリエイター、というのはスタートアップの起業家も含む広い意味ですけど、そういった人たちを支援していきたい、日本にクリエイティブな環境を作っていきたいという気持ちがずっとありました。

 

 

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水野さんが法律に携わることとなったスイッチともいえるローレンス・レッシグの著書『CODE—インターネットの合法・違法・プライバシー』(翔泳社/2001年)。




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