2018.08.13
Blast from the past ── あの頃の懐かしい思い出
新規性にあふれたデザイン
先ごろ、カシオ計算機がコンパクトデジタルカメラ市場からの撤退を正式に発表した。僕自身も、現在の液晶ディスプレイ付きデジタルカメラの原型となったQV-10(1994年11月発売)をいち早く購入。わずか320×240ピクセルの解像度ではあったが、大いに使い倒しただけに、そのニュースを感慨深く読んだ。
当時、6万5000円もしたQV-10に価値を見出して即買いしたのは、同年2月に発売された世界初の一般消費者向けデジタルカメラ、QuickTake 100(749ドル)を使って、デジタル写真の可能性の大きさを実感していたからである。
現在のデジタルカメラのデザインは、銀塩フィルムの時代に逆戻りしたかのように保守的なものが主流だが、その黎明期には、どのメーカーも、デジタルならではの新しいスタイルを模索し、フォルムやレンズ部のスイングメカ、脱着機構などに工夫を凝らしたのだった。
QuickTake 100の新しさは、双眼鏡スタイルともいわれた平べったい形状とグリップ方法にあり、右手で握ると、人差し指のところにシャッターボタンが位置していた。1MBの内蔵メモリに、640x480ドットのイメージを高画質モードで8枚、通常画質モードで32枚撮ることができ、当時はこの程度の仕様でも、DTPで写真イメージが必要なときなどに重宝した。
ファインダーの対眼レンズの横に撮影枚数や電池残量確認用の小さなモノクロLCDはあったが、画像確認用のディスプレイはなく、撮影結果の確認のためには、データをMacに転送する必要があった。また、レンズカバーをスライドさせると、撮影用レンズとファインダーの対物レンズが現れるが、両者の間は数センチほどあいており、被写体が近いと視差が生じてしまう。そのため、マクロ撮影向けに視差を補正するとともに、ストロボの光を拡散して和らげる専用アダプタが同梱されていた。