2017.06.28
読書ブロガー・徳本昌大氏がオススメする今月の1冊。仕事に、人生に、本は新たな気づきを与えてくれる。
第24回 統計は“真理”にあらず。間違いだらけの数字に振り回されるな!
統計数字における大きな「誤差」
私たちは経済指標にも歴史があり、考案された理由があることや長所や短所があることを忘れがちだ。(ザカリー・カラベル)
その国の経済状況を構成する要因を数値化したものを「経済指標」といいます。GDP(国内総生産)や失業率、物価指数などがそれに当たり、国の政策決定や企業の経済活動における1つの目安になっています。こうした大変重要な数値が、いまや実際の経済を反映しないものになっている、と本書の著者ザカリー・カラベルは指摘します。
たとえば、2013年にアメリカのGDPが一夜にして4000億ドルも拡大しました。これはもちろん経済成長によるものではなく、以前から存在していた「研究開発費」が設備投資として認められたことにより、アメリカのGDPを一気に押し上げたのです。研究開発費は現在においてもっとも重要であるはずの知的財産ですが、それまでは軽視されており、「投資」とみなされていませんでした。この4000億ドルという数字は、なんと約90カ国のGDPを上回るものです。経済指標にはこれほどの「誤差」があるのです。
過去の常識で設計された経済指標を、産業構造の変化した現代に用いるのは無理があるというものです。本書はそうした観点から、GDP、失業率、インフレ率や国民総幸福量など、さまざまな経済指標の歴史を振り返りながら、指標の問題をあぶり出しています。