心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く|MacFan

アラカルト 現場を変えるMobilityのアイデア

心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く

文●福田弘徳

企業や教育機関へのアップル製品の導入をサポートする、株式会社Tooの福田弘徳氏が「モビリティ」の地平を語る。

アップルデバイスの管理ソリューションを開発するJamf(ジャムフ)社が行った2016年の調査レポートによると、世界中の企業においてアップルデバイスがかなり浸透していることがわかる。この調査レポートは世界中の50人~1万人の従業員を擁する企業で働く計300名の回答に基づいたもので、それによると91%の企業でMacが使用され、99%の企業でiPhoneやiPadが使われている。

また、対前年でMacやiOSデバイスの採用率が70%以上もアップしており、従業員が自ら利用するIT機器を選択できることが採用率の増加につながっているという。実に44%の企業がIT機器の選択肢を用意しているという結果が出ている。

さらに、IT管理者にとってモバイルデバイス導入時に課題となる配備やデバイス設定、セキュリティ、サポートの実施に関しても、アップル製品のほうが他のOSに比べて簡単であることも示されている。

こういった世界的な流れを受けて、日本企業のクライアントから私のもとにMac導入に関する相談事が増えている。この調査レポートにも掲載されているIBMのMac導入によるTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)削減の話題の影響も大きく、ウィンドウズと比較してMacを導入したほうがトータルコストが安いといった点から導入の検討を開始する企業が多い。経営層の強いイニシアチブによって開始されるのがほとんどで、企業の情報システム部門はその対応に追われているのが実情だ。既存のシステムに影響のない範囲で導入をスタートし、今までのウィンドウズと比較してMacで業務を行った場合のFit/Gapを検証、そして少しずつ範囲を広げて行くような導入の進め方が主流となっている。

しかし、私は本当にこの進め方が正しいのか疑問に思っている。本来ITというのは仕事のパフォーマンスを高めてくれるためのものであって、自社のビジネス上の課題をいかに解決し、目的を達成するかが導入の主眼であるべきだ。クラウドであろうが、モビリティであろうが、そのIT機器やサービスの選定に時間をかけ過ぎていては本末転倒である。

つまり、牛歩的にMac導入を行うことはIT導入の本質的な部分を考えれば理に叶っておらず、さっさとウィンドウズに加えてMacも選べるようにしてしまうのがベストだと思う。その結果、問題が生じるかもしれないが、その一方で使い慣れたデバイスを選択・利用できることから従業員の満足度は高まり、生産性の向上や業務効率が高まることにつながるはずだ。働き方が多様化する現在において、従業員の働き方に応じてIT機器利用のペルソナを設定することこそが、どんな企業においても早急に求められていることと言えるだろう。

また、これからのビジネスは、企業が提供する製品・サービスから、「体験」のような顧客の感情を動かすようなものが大事になってきている。言い換えれば、それは人の意識や感性のようなユーザ体験が重要になってきていることでもあり、Macを選ぶ従業員が増えていることも、そうしたビジネスの転換を受けての自然な流れと言えるかもしれない。つまり、単純にMacで仕事をしたほうが「カッコよく見える」とか、ストレスが少なく「気持ちよく仕事ができる」といった点は従業員が「体験」を重視している証拠であり、それが日常のビジネスで求められている結果であるとも言える。そうした自然な流れを企業経営者やIT管理者は無視することなく、当然のこととして大切にすべきだと思う。

IT機器を利用する一人一人の心地良さとは何か。これまであまり語られてこなかったからこそ、そうした環境構築を目指すことで、モビリティの導入はIT機器の「代替」から、業務に「変革」を起こすきっかけとなるのだ。

 

©GaudiLab

 

 

 

Hironori Fukuda

企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。【URL】www.too.com/apple