2017.04.13
ヨメと世界一周の旅を続ける映像作家・鈴木陵生氏。彼が各地で写し出す「そこにしかなかったもの」。
ルクラの町から歩き始めた僕らは、エベレストの麓にあるベースキャンプを目指し、登り続けた。標高2800メートルから5364メートルまで、往復13日間の行程だ。
僕らが歩いたのは、エベレスト街道と呼ばれるトレッキングルート。それは、クンブ地方の少数民族“シェルパ族”の村を転々と渡り歩く道でもある。道中、徳を積めるというマントラの刻まれたマニ車を回し、道を占領する荷運びのヤクと戦いながら、山の民シェルパの料理を味わう。まるで冒険のような毎日は、チベット文化に触れる旅となった。
4000メートルを越えたあたりからは木々が段々と低くなり、ゴツゴツした岩ばかりになる。ようやく5000メートルに達し、辿り着いた最後の村“ゴラクシェップ”は、数軒の宿が並ぶだけの僻地だった。そこから数時間歩いたところに、エベレストへアタックする登山隊のベースキャンプがある。高所に順応したとはいえ、ここは大げさなほどに息が切れる。最後の力を振り絞り、ゴール地点を目指す。