冬の朝のブレッド湖|MacFan

アラカルト 旅する鈴木

冬の朝のブレッド湖

文●鈴木陵生

ヨメと世界一周の旅を続ける映像作家・鈴木陵生氏。彼が各地で写し出す「そこにしかなかったもの」。

アルプス山脈の東端、ジュリア・アルプスにあるブレッド湖。中央の島には、湖に浮かぶように建てられた教会が、15世紀の昔からこの場所を眺めている。僕らはお隣の国イタリアからスロベニアの首都リュブリャナを経由し、ここまでやって来た。真冬のブレッドの街は観光客も少なく静かで、薄くもやがかった湖は、凛とした空気に包まれていた。

アルプスの氷河からできた湖は、日中は澄んできれいな緑色をしている。僕らは湖畔の遊歩道を歩き、岩山の古城を探検して、湧き水が凍った大きなつららにはしゃぎながら、ときたま響く島の教会の鐘を聴いた。すべてが美しく、まるでおとぎの世界にいるようだ。

夜明け前、僕らは再び湖へと向かった。湖を一望できそうな小さな山に登るためだ。朝日に照らされたブレッド湖は、なおのこと美しいに違いない。ヘッドライトの光を頼りに枯葉の登山道を歩く。ようやく辿り着いた山の上。暗闇に紛れて、湖と街とアルプスの山と、僕らが見たかったものすべてがそこにあった。




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