2016.12.30
IT、モバイル、デザイン、アートなど幅広くカバーするフリージャーナリスト&コンサルタントの林信行氏が物申します。
2016年には一時代を築いた偉大な人物が次々と亡くなった。英国がEUから離脱し、ドナルド・トランプ氏が大統領選を勝ち抜くという番狂わせも起きた。それまで信じてきた価値観が根本から覆り、気づいたらまったく違う世の中に放り込まれていたと感じた人も多いだろう。
2017年は否が応でも「変化の年」になりそうだ。そう考えていたとき、ふと10年前のお正月を思い出した。
2007年、Macの祭典・マックワールドエキスポへの出張準備をしながらアップル社のホームページを開くと、そこにはミステリアスなメッセージが掲載されていた。
「最初の30年はただの序章に過ぎなかった。2007年へようこそ」
背筋がゾクっとした。最初の30年というのは、アップル創業からの30年。この間、同社はアップルIIでパソコン革命の幕を開き、マッキントッシュで今日的なパソコン操作を切り開いた。出版業界にDTPという革命をもたらし、アップルの一部となるネクスト社もWorldWideWebを誕生させた。2001年にはiPodでデジタルライフスタイル革命の口火を切った。
どれも世の中の風景を一変させてしまった偉業ばかりだが、それらをひとくくりにして「序章に過ぎない」と切り捨てたのだ。
「さすがに今回は大ボラが過ぎるかな」とも思ったが、1週間後、サンフランシスコでスティーブ・ジョブズが基調講演のステージを去った頃には「あながち嘘ではないかも」と信じ始めていた。目の前ではソフトバンクの孫正義さんがジョブズが去ったあとの空のステージをいつまでも放心状態で見つめ、話しかけても返事できずにいた。
言うまでもないが、ジョブズがこのステージで発表したのは初代のiPhoneだ。