2016.07.11
今回のWWDCは、ここ近年で「もっとも開発者会議らしかった」と振り返ることができる。基調講演後に何人かの開発者に話を聞くと「非常に満足度が高かった」との感想が続いた。
最大のアップデートと銘打ったiOS 10。これまでのソフトウェアを否定しながらエンジニアリングのレベルを大きく引き上げたwatchOS 3。テレビ体験とスマートホームにこだわったアップルTV向けtvOS。iOSへの従属性の高まりに批判を集めながらも生産性向上に取り組んだmacOSシエラ。そしてスウィフトのゴールである「簡単に学べること」を体現するスイフト・プレイグラウンド。基調講演で語られた5つの軸は、今後のアップルの何を語るのか?
ビジネスの可能性
アップルのアップストアはアプリ数200万本、累計ダウンロード数1300億本、開発者に支払われた収益は500億ドルにのぼる。モバイルの世界でデバイスのシェアを圧倒しているのはアンドロイドだが、モバイルアプリの収益額はアップストアの半分程度に留まっており、開発者にとって、依然としてアップストアのほうが効率的なビジネスを展開できることを表している。
アップルも、iOS 10で「アップストアのビジネス性」を拡大する施策を採った。自社アプリのオープン化だ。開発者のアプリの機能を、メッセージや地図、Siriなどの人気のアプリから呼び出せるようにし、ユーザ体験をアプリ切り替えで分断しない仕組みを整えた。
これは暗に、広告モデルから購読モデルへと、アプリビジネスの転換を促していると見ることができる。WWDC2016に先立ち、アップストアのビジネスモデルを刷新し、購読型の課金を全開発者に開放、細かな価格設定を可能にすると同時に、1年以上の購読ユーザからの収益について、これまでの70%から85%に引き上げた。
アップストアを通じた、開発者とユーザとの長期的な関係作りは、両者をアップルのエコシステムに留まらせるには十分な動機を与えることになるだろう。