「eAT 2016」が魅せたこれからの表現とクリエイティブ|MacFan

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金沢市で繰り広げられるクリエイターの祭典に密着

「eAT 2016」が魅せたこれからの表現とクリエイティブ

文●氷川りそな

金沢市で恒例行事となっているメディアアートイベントeAT KANAZAWAが今年も開催された。毎年多様な分野のトップクリエイターたちが集まり、そしてまた新しい才能が発掘されることで定評のあるクリエイターのためのフェスティバルとなったこのイベントに、本誌は今年も密着取材した。

 

 

未来へ飛び立つ才能たち

石川県金沢市で毎年行われるメディアアートとクリエイターのための祭典「eAT KANAZAWA(イート金沢。以下eAT)」は、金沢市という「行政」が中心となって活動を続けている点で注目を集める。今回は「これからの表現 これからのクリエイティブ」をテーマに掲げ、セッションが繰り広げられた。例年2日間に分けて行われるが、初日は金沢にゆかりのある若手クリエイターたち3チームによるプレゼンテーションが行われた。

最初は伝統工芸のひとつである「陶芸」の分野にCADや3Dプリンタといった工業デザインで使われる手法を持ち込むことによって新たな造形や機能美を生み出し、新しい可能性をもたらしたことで話題のクリエイター集団「secca(雪花)」だ。彼らのメインプロダクトである食器は選別眼の厳しい日本料理業界のトップランナーにも認められ、ワールドクラスのレセプションでも採用されるなど躍進が目覚ましい。

また、フィールドワークは器以外にも楽器、アート作品、建築構造物などさまざまな分野に及ぶ。前衛的ともいえる彼らは次世代を目指すためにキーワードとして「宇宙」を選び、作品に反映させた。出来上がった作品はなんと電磁石を使った「空中に浮かぶ器」。一見冗談のようにも見えるが、お祝い事などの「特別な食事の演出として面白い」と、すでに各所から引き合いが来ている。

次に発表されたのは、「ハックフォープレイ(HackforPlay)」の寺本大輝氏。若干二十歳の若さながらこの2年間で6つ以上の受賞歴がある今注目のエンジニアだ。氏の手がける同名のサービスはRPG(ロールプレイングゲーム)のスタイルを取っているが、その中のパラメータ(設定)をすべて自分自身でハック(書き換え)ながら攻略する。「何を実現したいか」に主軸を置くこの課題の中で、子どもでも自然にプログラミングの概念を学んでいくことができるのが特徴だ。紹介された事例の数々はわずか3カ月程度の期間で小学生たちが作り上げていった作品で、その発想の柔軟さや創意工夫の逞しさ、そして完成度の高さに驚かされる。すでにあるプログラムを少しずつ置き換え、試行錯誤しながらゲームを構築する。プログラマーがよく行う「スクラッチ&ビルド」のスタイルをごく自然に実践しながら学んでいくことでプログラミングに親しみを覚え、そこから世界を広げてくれる単なる教育素材としてだけでなく、子どもたちの未来の環境も変えていくポテンシャルを持つプロジェクトだといえるだろう。

最後に登場した北川力氏(株式会社ほたる)は水に関わる研究を10年以上行い、水処理技術から上下水道整備計画まで手がける金沢出身の人物だ。現在率いているチームは「水に関する問題」を解決する。実は、水に関わるインフラのコストはそのほとんどが「菅」であるという。この部分を省略することで社会問題を改善する目的で開発されたのが、循環型浄水ユニット。排水を捨てるのではなく、クリーンなところまで濾過し再利用できれば外部からの供給に頼らなくても水を使い続けられ、「水不足」問題は大きく改善する。また、ユニット化することで、今まで人が住めなかったような砂漠や未開の地のような場所に持ち込んで生活利用ができる「ライフスタイルの自由化」といった新しい社会生活を生み出すことも可能になる壮大な試みだ。




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