フラッシュメモリ市場で品質重視を掲げ躍進する「グリーンハウス」のブランディングと高付加価値戦略|MacFan

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フラッシュメモリ市場で品質重視を掲げ躍進する「グリーンハウス」のブランディングと高付加価値戦略

文●栗原亮

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

グリーンハウス
【URL】http://www.green-house.co.jp/

 

 

2008年頃を境に価格が大幅に下がり、今では家電量販店をはじめスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも手軽に買えるようになったSDカードやUSBメモリ。これらの製品のコア部分に搭載されている半導体パーツがNAND型のフラッシュメモリである。パソコンや家電の補助的な外部記憶装置としてはもちろん、MacやiPhoneの主記憶装置にも採用されるなど競争の激しい市場だ。

だが、「この3~4年でフラッシュメモリを取り巻く市況は大きく変化しました」と語るのは、グリーンハウスで営業戦略とブランディングの指揮を執る長谷川久明さんだ。

前述のようにマーケット全体にあまねく行き渡ったフラッシュメモリの低価格化の牽引役となったのが、台湾メーカーの進出だ。だが、十数社がしのぎを削っていたのは過去の話で、現在も生き残っているのは台湾の中でも数社のトップブランドのみ。いずれも価格競争だけに与することなく品質にもこだわりを見せていたメーカーだと長谷川さんは分析する。

Mac、PCの黎明期より、SRAMやDRAMなどのパソコン向けメモリを販売してきた同社も当然ながらNANDフラッシュメモリの取り扱いが多い。国内での出荷数はこの3年で2倍に伸び、シェアも拡大し続けている。その背景にはこうしたフラッシュメモリをめぐる環境と市場ニーズの変化にいち早く対応してきたことが大きいという。

「フラッシュメモリは価格優位性だけでは戦えない時代です。顧客のニーズも多様化し、品質で選ぶ人も増えています。Macユーザにはその傾向が特に強いかもしれません。こうしたマーケットの変化に対応していかなければ、我々自身も生き残っていくことはできません。そのため、この数年は営業サイドの意識改革に努めてきました。店舗様からの要望をただ受け入れるのではなく、一緒に売り場を作っていくことが重要と考えています。むろん国内製品としてはリーズナブルな価格帯を維持しますが、ブランドの認知に恥じない品質の製品を提供していくのが我々の役目です」(長谷川さん)

さらに、フラッシュメモリのテクノロジー自体もこの数年で長足の進歩を遂げていると小山徹郎さんは語る。

「たとえば、5年前のUSBメモリやSDカードと現在のものでは容量はもちろん、読み書きの速度やデータの信頼性などに大きな変化があります」

その大きな違いをもたらした要因の1つが、情報を蓄積する回路である「セル」の構造変化だ。1つのセルに1ビット(0と1)の情報を蓄積できるSLC(Single-Level Cell)は、複数のビットを蓄積できるMLC(Multi-Level Cell)へと進化し、さらに現在では3ビットの情報を扱えるTLC(Three-Level Cell)が普及している。だが、セルあたりの情報量が増えると、速度は低下して読み出し時のエラー訂正の手順も複雑になる。最新のセルを取り扱うには高効率なコントローラが必要だ。

「このコントローラも台湾メーカーが主流で、現在は3社程度に絞られましたが我々も世界トップレベルのシェアを持つメーカーとパートナーシップを結んでいます。コントローラの品質が悪いと、データが飛んで消失してしまったり読み出しエラーが発生します」(小山さん)

また、回路の微細化プロセスが進むと容量は増える半面、信頼性が低くなる傾向があるという。つまり、皮肉なことに最新のTLCのほうが従来の方式より書き込みの耐性が低く、メモリ自体の寿命は短くなるというのだ。

「一般的な用途であればTLCでもほぼ問題ありませんが、たとえばドライブレコーダなど過酷な状況でも録画し続けなければならないといった用途では、信頼性や耐久性が高いMLCのチップを採用します。お使いの用途に合わせて最適な製品を選んでいただきたいですね」(小山さん)

さらに同社ではモジュール単位で高品質なパーツを選ぶだけでなく、社内技術部門での入念な動作チェック体制も備えている。

「普及価格帯のものもそれなりのボリュームで売れますが、今はクオリティの時代です。長谷川の進めているブランディング方針や高付加価値製品が市場で受け入れられているのがその証拠ではないかと思います。アップルユーザがよいものを求めてMacやiPhoneを買うように、大事なデータを記録するフラッシュメモリも安心できる品質のものをお選びいただきたいですね」とマーケティング担当の奥寺貴哉さんは語る。

 

PRODUCER PROFILE

営業本部 営業担当執行役員
長谷川久明さん

 

ストレージデバイス・液晶課 次長
小山徹郎さん

 

商品戦略本部 マーケティング担当執行役員
奥寺貴哉さん

 

 

 

「フラッシュメモリ」のコダワリ

内部パーツ

グリーンハウスが販売するNANDフラッシュメモリ製品のモジュールを製造しているのは世界でナンバーワンシェアを誇る台湾メーカー。微細化と多値化が進んでセルの信頼性が下がる中、「性能の鍵を握るのはコントローラICの品質」と小山さんは語る。

 

性能試験

製品はあらゆる環境下で徹底的なクオリティチェックをグリーンハウス社内で実施する。もちろんMacでも同様だ。同社では品質マネジメントシステムの「ISO9001」のほか、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO27001」と環境マネジメントシステムの「ISO14001」もトリプル認証を果たしている。

 

デザイン

高品質はスペックの表示だけでは伝わらない。パッケージはシルバーの紙に白のインクを乗せるなど5色の特殊な印刷方法を採用。「何万個も製造するのでコストはかかってしまうのですが、プレミアム感を出すのに必要と考えました」と奥寺さん。

 

 

PRODUCT FOCUS

USB Type-Cにもいち早く対応

12インチMacBookのUSB Type-Cにも対応するUSBメモリ。通常のType-Aとのデュアル対応となっている。先進的なイメージを伝えるためにパッケージに幾何学的なフォントを採用、Macユーザ好みのモノトーンデザインとなっているのも見逃せない。

 

ドラレコ対応の高耐久性メディア

ドライブレコーダやカーナビなど自動車での利用に最適化されたSDHC/マイクロSDHCカードもラインアップされている。動作温度は真夏の車内でも問題なく動作するよう85度に対応、事故時などに突然電源が落ちてもデータを保護する機能など用途に最適化されている。

 

防水ケースなどiOSアクセサリも充実

お風呂でiPhoneやiPadが使える防水ケース(JIS保護等級IPX6/IPX8)や、iPhoneの「自撮り」用レンズシリーズ(広角・魚眼・マクロ)、ライトニング搭載のシガーソケット充電アダプタやAC充電器などiOSアクセサリのラインアップも豊富に揃っている。

 

【デザイン】
グリーンハウスでは、パッケージデザインも社内で行っている。普及価格帯の製品では環境負荷の低い封筒型のエコパッケージを採用したり、高付加価値製品ではメッセージ性を強調したりと製品に合わせて柔軟にデザインできるというのがその大きなメリットだ。

 

【NAND】
ドライブレコーダ・カーナビ用のメモリーカードに採用されているモジュールはMLC NANDフラッシュで、一般的なTLC NANDフラッシュと比べて約6~10倍の書き込み/消去耐性があるという。データ保護のほか、製品寿命が長くなるという大きなメリットもある。